「法人をつくったばかりで、消費税をどう処理すればいいのかわからない」「インボイスって登録しないといけないの?」。法人設立直後のご相談で、毎年必ず出てくるテーマです。
消費税の判断は、設立前に決めておかないと後から変えられないものが多くあります。知らないまま走り出すと、税務だけでなく銀行との関係にまで影響が出ます。
- 新設法人は原則として最長2年間、消費税の免税事業者になれる。ただし資本金1,000万円以上、特定期間の売上・給与、インボイス登録で使えなくなる
- BtoB中心の事業はインボイス登録を求められやすく、「免税」と「登録」のどちらを取るかを設立前に決める
- 第1期の事業年度を短くすると免税期間を有利にできる場合があるが、売上の年換算など注意点がある
- 消費税は「預かり金」。滞納は銀行格付けを大きく下げるため、別口座で管理する
新設法人の消費税免税の仕組み
消費税は、原則として基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であれば、納める義務が免除されます(免税事業者)。
設立したばかりの法人には前々事業年度がありません。そのため、1期目と2期目は原則として免税事業者になります。売上とともに受け取った消費税を納めなくてよい期間が、最長で約2年間あるということです。
免税にならない主なケース
ただし、次の場合は設立直後から、または2期目から課税事業者になります。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 資本金1,000万円以上で設立 | 「新設法人」として、1期目・2期目とも課税事業者 |
| 特定期間の基準を超えた | 1期目の開始から6か月間(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額がいずれも1,000万円超なら、2期目は課税事業者 |
| インボイス登録をした | 登録日から課税事業者(免税期間中でも) |
| 大規模な会社の子会社など | 「特定新規設立法人」として課税事業者 |
「とりあえず資本金1,000万円で」と設立してしまうと、免税のメリットを最初から失います。資本金の額は、消費税の観点からも設立前に検討すべき項目です。
インボイス登録は「免税」とトレードオフ
2023年10月に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、取引先が仕入税額控除を受けるために、売り手が発行する適格請求書(インボイス)が必要になりました。
インボイスを発行するには「適格請求書発行事業者」の登録が必要で、登録した時点から課税事業者になります。つまり、新設法人の免税メリットとインボイス登録は、同時には取れません。
BtoB事業は登録を求められやすい
取引先が法人や事業者中心(BtoB)の場合、未登録の業者に発注すると、取引先側は仕入税額控除が受けられずコストが上がります。そのため「登録してもらえないなら発注を見直したい」と言われることがあります。
実際に私のクライアントでも、免税のままスタートした結果、主要取引先から登録を求められ、期中に課税事業者へ切り替えたケースがありました。免税のメリットを取り切れなかったわけです。
一方、取引先が一般消費者中心(BtoC)であれば、登録しなくても影響は比較的小さくなります。設立前に、自社の取引先の構成を確認してから判断することが重要です。
インボイス登録によって課税事業者になった小規模事業者向けの「2割特例」は、法人については2026年9月30日を含む課税期間までで終了しています。これから登録する場合は、原則課税か簡易課税制度(基準期間の課税売上高5,000万円以下が対象)かを比較して選ぶことになります。
不動産投資家の法人の場合
住宅の家賃は消費税が非課税です。居住用物件の賃貸が中心であれば、課税売上はもともと小さく、インボイス登録の必要性も低いことが多いでしょう。一方、事務所や店舗を事業者に貸している場合は、テナントから登録を求められることがあります。
なお、居住用賃貸建物を取得したときの消費税は、原則として仕入税額控除の対象になりません。物件取得と消費税の関係は論点が多いため、購入前にご相談ください。
第1期の事業年度を短くする設計と注意点
法人は、設立時に事業年度(決算期)を自由に決められます。この決め方によって、免税期間を有利にできる場合があります。
第1期を7か月以下にすると、2期目の特定期間判定がなくなる
前事業年度が7か月以下などの短い事業年度である場合、2期目には特定期間の判定がありません。つまり、1期目の前半6か月の売上・給与がいくら大きくても、2期目は免税を維持できることになります(資本金1,000万円未満などの条件を満たす場合)。
3期目の判定は「年換算」に注意
たとえば2026年10月に設立し、第1期を「2026年10月1日〜12月31日」の3か月とした場合、
- 第2期(2027年):前々事業年度がないため免税(特定期間の判定もなし)
- 第3期(2028年):基準期間は第1期。ただし第1期の課税売上高は12か月分に年換算して判定します
第1期の売上が300万円なら、年換算で1,200万円となり、第3期は課税事業者です。年換算後で1,000万円以下に収まり、かつ第2期の前半6か月の特定期間基準も超えなければ、第3期まで免税が続く可能性があります。
「とにかく短くすればよい」というものではなく、売上の立ち上がり方、取引先の構成、インボイス登録の要否とあわせて設計する必要があります。そして、設立後に遡って変えることはできません。
消費税は会社のお金ではない|滞納が融資に与える影響
課税事業者になった瞬間から、売上に含まれる消費税は預かり金です。110万円が入金されても、そのうち10万円は国に納めるために預かっているお金です。
ところが資金繰りが苦しくなると、この預かり分に手をつけてしまう。特に急成長中の会社ほど、仕入れや人件費が先行して資金が足りなくなり、半年後・1年後の申告時期に数百万円単位の消費税が払えなくなる、というケースを何件も見てきました。
税金の滞納は、銀行格付けを直撃する
税金の滞納は、金融機関の評価に大きく響きます。差押えが入れば金融機関はすぐに把握しますし、決算書上の未払消費税が不自然に膨らんでいれば担当者は気づきます。「税金の管理もできない会社」と見られれば、融資姿勢は一変し、正常先から格下げされるリスクもあります。延滞税も日割りで加算され、納期限から2か月を過ぎると税率が大きく上がります。
消費税用の口座を別につくる。入金があったら、見込み納税額(迷ったら税込売上の10/110相当)を別口座に移す習慣をつけるだけで、使い込みはほぼ防げます。
まとめ
- 新設法人の免税は「資本金1,000万円未満」「特定期間の基準」「インボイス未登録」が前提
- BtoBかBtoCかで、インボイス登録の判断が変わる。設立前に決める
- 第1期を短くする設計は有効な場合があるが、年換算と特定期間に注意。設立後は変更できない
- 消費税は預かり金。別口座で管理し、滞納による格付けダウンを防ぐ
法人化そのもののタイミングについては、不動産投資の法人化はいつがベストかで解説しています。設立前の段階でご相談いただければ、資本金・事業年度・インボイス登録までまとめて設計できます。
