「保証協会付きで融資を受けられました!」。中小企業の経営者や、事業を始めたばかりの方からよく聞く言葉です。もちろん、資金を調達できたこと自体は素晴らしいことです。
ただし、保証協会付き融資には知っておくべき「使い方」があります。使い方を間違えると、プロパー融資への扉を、自分で閉めてしまうことになるからです。
- 保証協会付き融資は、銀行のリスクを保証協会が肩代わりする仕組み。審査が通りやすい反面、保証料がかかり、保証枠には上限がある
- 使い続けると「自力の信用」が育ちにくく、プロパー融資への移行が遅れやすい
- プロパー融資のスタートラインの目安は、銀行格付けで正常先(著書のモデルで32点以上)+純資産1億円
- 「創業期は保証付き → 利益を財務に積む → プロパーへ移行」という3フェーズで設計する
信用保証協会付き融資の仕組み
信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受ける際に、その返済を保証する公的機関です。借り手が返済できなくなった場合、保証協会が金融機関に代わりに返済(代位弁済)し、その後、保証協会が借り手に返済を求めます(求償権)。
金融機関から見れば、自らのリスクをほとんど負わずに貸せる仕組みです。だから審査が通りやすく、創業期や財務がまだ弱い段階では非常に有効な制度です。
一方、借り手は保証の対価として信用保証料を負担します。料率は会社の信用状況に応じて区分され、おおむね年0.5〜2%程度。金利に上乗せされるコストとして、地味に効いてきます。
保証付き融資を「使い続ける」ことの3つの落とし穴
落とし穴1:「自力で貸せる会社」という実績が積み上がらない
保証付き融資は、銀行が自分のリスクで貸したものではありません。銀行の担当者は口にはしませんが、内心では「この会社は保証なしで貸せるレベルか?」という目で決算書を見ています。保証付きで借り続けても、それは銀行にとって「自行のリスクで貸せた実績」にはなりにくいのです。
落とし穴2:保証枠には上限がある
保証協会の保証には1社あたりの限度額があります。
| 保証の種類 | 限度額(基本) |
|---|---|
| 普通保証 | 2億円 |
| 無担保保証 | 8,000万円 |
| 合計 | 2億8,000万円 |
※セーフティネット保証などの別枠制度があり、時期・地域・制度改正により変動します。
平時に枠を使い切ってしまうと、設備投資や急な運転資金が必要になった本当に苦しい局面で「枠がない」という事態になりかねません。有事のためにとっておくべき武器を、平時に使い切ってしまうのは危険です。
落とし穴3:プロパー融資への道が遠のく
これがいちばん大きな落とし穴です。保証付きに慣れると「こっちのほうが楽だし通るから」と使い続けてしまう。しかし、その間に「保証なしでも貸せる財務体力」をつくらなければ、いつまでたってもプロパー融資には届きません。
プロパー融資とは?受けるためのスタートライン
プロパー融資とは、保証協会の保証を付けず、金融機関が自らのリスクで行う融資です。金融機関が損失リスクを直接負うため、財務の中身を徹底的に審査します。
著書『「買い続ける」ための決算書戦略』では、銀行格付けを129点満点(安全性34点・収益性15点・成長性25点・返済能力55点)のモデルで解説しています。このモデルで、プロパー融資を検討するスタートラインとして私が提示しているのは次の2つです。
- 格付けが「正常先」であること(著書のモデルで32点以上)
- 純資産が1億円以上あること
純資産1億円は、「資産から負債を引いた本当の価値が1億円ある」という、会社の基盤を示す最初の証明になります。逆に言えば、保証付き融資で無理に借り続けて負債ばかり膨らむと、この純資産がなかなか積み上がりません。
格付けで特に配点が大きいのは返済能力です。その代表的な指標である債務償還年数の計算方法は決算書を銀行に出す前にやるべきチェックで解説しています。
成長段階別|保証付きからプロパーへ移行する3つのフェーズ
保証付き融資を「使うな」ということではありません。使う局面を正しく絞ることが大切です。
| フェーズ | 状態 | 融資の使い方 |
|---|---|---|
| フェーズ1:創業期〜基盤形成期 | 決算実績が少ない、利益が安定しない | 保証付き融資を積極活用し、売上・利益の実績をつくる |
| フェーズ2:財務強化期 | 利益が出始めた | 利益を「使う」のではなく「財務に積む」。保証枠を温存しつつ純資産を増やす |
| フェーズ3:プロパー移行期 | 正常先・純資産1億円が見えてきた | メインバンクにプロパーでの検討を依頼し、銀行との直接の信用関係を築く |
「払った税金の2倍、会社は強くなる」
フェーズ2で大事なのは、利益を過度に圧縮しないことです。税金を払いたくないあまり利益を削ると、内部留保が積み上がらず、純資産が増えません。私はこれを「払った税金の2倍、会社は強くなる」と表現しています。きちんと納税して財務を厚くすることが、結果的にプロパー融資への最短ルートになります。
まとめ
- 保証協会付き融資は「最初の武器」。ただし「いつまでも使い続ける武器」ではない
- 保証枠には上限があり、有事のために温存する発想が必要
- プロパー融資の目安は「正常先(32点以上)+純資産1億円」。これを財務の設計目標にする
- 「借りられるから借りる」から「設計して借りる」へ
自社がいまどのフェーズにいて、プロパー融資まで何が足りないのか。決算書をお持ちいただければ、具体的にお伝えできます。
