「融資を銀行に断られた。もう終わりかもしれない」。そう感じて、しばらく何も手につかなくなる経営者の方は少なくありません。
でも、断言します。銀行に融資を断られたことは、終わりではありません。私自身、2019年に複数の銀行から「あなたには、貸せません」と言われ、融資が完全に止まりました。そこから財務を立て直し、2025年までに総投資額82億円、45プロジェクトまで積み上げることができています。
この記事では、銀行に融資を断られたときのよくある理由と、断られた翌日からやるべき「次の一手」を、私の実体験と銀行の審査の仕組みにもとづいてお話しします。
- 融資を断られたら、落ち込む前に翌日から動く。金融機関は全国に数百あり、1行に断られても道は残っている
- 断られた理由は、格付けの仕組みを知っていれば自分の決算書で採点できる。債務償還年数と純資産をまず確認する
- 金融機関ごとに重視する点は違う。信用金庫や政府系金融機関にも当たる
- 同じ銀行への再挑戦は、決算書が1期変わる約180日後が目安。その間に「現預金」「納税による純資産」「次の決算書」の3つを戦略的に変える
融資を断られる、よくある理由
まず、銀行が融資を断るときによくある理由を整理しておきます。銀行がはっきり理由を言うことは少ないのですが、背景にあるのはおおむね次のいずれかです。
| よくある理由 | 決算書・状況でのあらわれ方 |
|---|---|
| 返済能力が足りない | 債務償還年数が長い(20年超は特に厳しい) |
| 財務の基盤が弱い | 純資産が薄い、または債務超過(純資産がマイナス) |
| 業績が悪化している | 赤字、売上の大幅な減少 |
| 実態の財務が悪い | 社長への貸付金、不良在庫、回収できない売掛金 |
| 資金使途が不明確 | 何に使うのか、なぜその金額なのかが説明できない |
| 信用面の問題 | 税金・社会保険料の滞納、既存借入の延滞 |
| 銀行側の事情 | 業種や地域への融資方針、すでに貸している額の上限 |
最後の「銀行側の事情」は、あなたの会社の問題ではありません。同じ決算書でも、別の金融機関なら通ることが普通にあるのはこのためです。
一方で、それ以外の理由は、決算書や準備によって改善できるものです。銀行の審査が何を見ているのかは、銀行融資の審査で見られるポイントで詳しく解説しています。
まずは翌日から「動く」
融資を断られた方の多くは、落ち込んでしばらく何もしなくなります。これがいちばん避けてほしいことです。落ち込んでいる時間に、資金繰りの余裕はどんどん減っていきます。断られた翌日から動くのが正解です。
金融機関は、あなたが思っているよりずっと多い
「メインバンクに断られたら、もう借りるところがない」。そう思い込んでいませんか。都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合、そして日本政策金融公庫などの政府系金融機関。全部合わせると、全国の金融機関は数百にのぼります。信用金庫だけでも、全国に250あまりあります。
地図アプリで「信用金庫」と検索してみる
今日すぐにやってほしいことがあります。スマートフォンの地図アプリを開いて、会社の近くを「信用金庫」で検索してみてください。地図上に、いくつもの金融機関が表示されるはずです。「こんなところにもあったのか」という金融機関が、必ず見つかります。
電話は「事業性融資の相談がしたい」だけでいい
見つけたら、電話で相談の予約を取ります。伝えることは、「事業性融資の相談がしたいのですが」だけで十分です。担当の窓口につないでもらえれば、まずはそれで合格です。
最初から全部うまくいくとは思わないでください。断られることを前提に、打率3割でいいと考えて電話をかけましょう。10件かけて3件面談できれば、十分な成果です。
面談が決まったら、直近2〜3期分の決算書、今期の試算表、借入金の一覧表を持参しましょう。初回の面談で、断られた経緯を隠す必要はありません。むしろ「他行ではこういう理由で難しいと言われたが、こう改善している」と自分から話せる経営者は、数字に向き合っている経営者として受け止められます。
あわせて、日本政策金融公庫にも相談してみてください。創業期の会社であれば、日本政策金融公庫の創業融資も選択肢になります。
同じ銀行であれば、取引先の情報や審査の基準は行内で共有されていることが多いものです。支店を変えただけで結果が変わることは期待しにくく、何度も申し込むと、かえって印象を悪くすることもあります。当たるなら、審査の観点が異なる別の金融機関にしましょう。
「なぜ断られたか」を自分で採点する
ただし、やみくもに当たり続けると、同じ理由で断られ続けることになります。動くのと並行して、断られた理由を自分で特定することが欠かせません。
多くの方は、断られた理由を銀行に聞かないまま終わってしまいます。これはもったいない。具体的な審査内容までは教えてもらえませんが、「どの点が難しかったでしょうか」「どうなれば再検討いただけますか」と聞けば、ヒントをもらえることはあります。
格付けの仕組みで、自分の決算書を採点する
そして、もっと確実なのが、自分で採点することです。銀行は決算書を点数化して「格付け」を行います。私の著書『総額82億円 税理士投資家が明かす「買い続ける」ための決算書戦略』では、この格付けを129点満点(安全性34点・収益性15点・成長性25点・返済能力55点)のモデルで解説しており、正常先の目安を32点以上としています。
配点が最も大きいのは返済能力です。まずは次の2点を、自分の決算書で確認してください。
- 債務償還年数:借入金を、いまの稼ぎで何年かけて返せるか。20年を超えていないか
- 純資産:プラスか、マイナス(債務超過)か。前期より増えたか、減ったか
債務償還年数の計算方法は、決算書を銀行に出す前にやるべき3つのチェックで計算例つきで解説しています。電卓ひとつで、5分あれば計算できます。
金融機関ごとに、重視するポイントは違う
原因がわかったら、当たる金融機関の選び方も変わってきます。一般に、規模の大きい銀行ほど格付けの数字に厳格です。一方、地域の信用金庫などは、経営者との関係や地域での事業実態を比較的重視するケースがあります。大きな銀行に断られた案件を、信用金庫が前向きに検討してくれるということは、決して珍しくありません。
地図アプリで信用金庫を探して電話する、というのは、実は審査の仕組みから見ても理にかなった行動なのです。金融機関ごとの違いは信用金庫と地方銀行の違いでも解説しています。
「180日」で決算書を変える3つの手
断られた銀行にもう一度申し込むなら、目安は約180日、半年後です。理由は、評価を変える最も確実な方法が、決算書を1期分変えることだからです(決算期の時期によっては、試算表で改善を示すことになります)。
ただし、その180日を「ただ待つ」のか、「戦略的に動く」のかで、結果はまったく違います。やるべきことは3つです。
手1:現預金を厚くする
債務償還年数は、次の式で計算します。
分子は「借入金残高から現預金を引いた金額」です。つまり、現預金が増えれば、それだけで債務償還年数は短くなります。不要な支出を抑える、売掛金の回収を早める、使っていない資産を現金化するなど、手元の現預金を厚くすることから始めましょう。
手2:きちんと納税して、純資産を積む
税金を払うと、税引後の利益が会社に残り、純資産が増えます。私は、プロパー融資(保証協会の保証を付けない銀行独自の融資)のスタートラインの目安を純資産1億円としています。
目先の税金を減らそうと利益を削ってきた会社ほど、純資産が育っていません。逆に言えば、ここから方針を変えれば逆転できるということです。私はこれを「払った税金の2倍、会社は強くなる」と表現しています。利益を削る対策と、財務を強くする対策の違いは節税のやりすぎが融資に与える影響で解説しています。
手3:次の決算書を「戦略的に」つくる
売上を伸ばす、不採算の事業や資産を整理する、社長への貸付金を解消する。次の決算書に向けて打てる手は、意外に多くあります。
おすすめは、「次の決算書で、格付けを何点上げるか」というゲームとして考えることです。格付けのどの項目が低いのかがわかっていれば、何をすればよいかが具体的になり、動きやすくなります。
| 打ち手 | 効く指標 | 格付けの分野 |
|---|---|---|
| 現預金を厚くする | 債務償還年数 | 返済能力 |
| 納税して利益を残す | 純資産、自己資本比率 | 安全性 |
| 不採算の資産・事業を整理する | 利益、実態の純資産 | 収益性・安全性 |
| 社長への貸付金を解消する | 実態の純資産 | 安全性 |
| 売上・利益を伸ばす | 増収・増益 | 成長性・収益性 |
2019年、私が断られた後にやったこと
最後に、私自身の話をさせてください。
2014年に不動産投資を始めた私は、2019年、複数の銀行から「あなたには、貸せません」と言われ、融資がすべて止まりました。正直に言うと、最初は怖かった。また断られるのが怖くて、なかなか動けませんでした。
転機は、仲間から言われた「BSを見ろ」という一言です。そこで初めて、自分の決算書を銀行の目線で読み直しました。減価償却が速い物件が多く、貸借対照表上の資産の価格(いわゆる「簿価」)よりも負債の金額のほうが大きくなる、債務超過の状態に陥っていた。銀行から見れば、貸せないのは当然の状態でした。
そこから、毀損していた物件を売却し、きちんと納税し、現預金を厚くしました。この記事でお話しした3つの手を、そのまま実行したのです。そこから、銀行の反応は大きく変わりました。融資は再び動き出し、2025年までに総投資額82億円、45プロジェクトまで進めることができています。
断られた理由を知り、改善して、次に進む。断られた経験は、財務を見直すきっかけにもなります。
まとめ
- 銀行に融資を断られても終わりではない。翌日から動く
- 地図アプリで近くの信用金庫を探し、「事業性融資の相談がしたい」と電話する。打率3割で十分
- 断られた理由は、格付けの仕組みで自分の決算書を採点して特定する。まず債務償還年数と純資産を見る
- 同じ銀行への再挑戦は約180日後が目安。その間に「現預金」「納税による純資産」「次の決算書」を戦略的に変える
クレフティは、累計120億円超の融資承認と、20行超の金融機関との折衝の経験があります。資金調達部長は元地方銀行員で、断られた理由の分析から、次に当たる金融機関の選定、再挑戦に向けた決算書の設計までご支援します。当事務所のお客さまでも、創業2年目のトレーディングカード売買の会社が、都市銀行から3,500万円、地方銀行から2,000万円の融資を受けるなど、複数の金融機関との取引を広げた事例があります。詳しくは資金調達・融資支援のページをご覧ください。
