不動産投資の融資

不動産投資で2棟目・3棟目の融資が止まる本当の理由と、止まらないための3つの設計

「1棟目はすんなり通ったのに、2棟目で『もう少し様子を見ましょう』と言われ、そのまま半年が過ぎた」。不動産投資のご相談で、もっとも多く聞くお悩みのひとつです。

結論から言うと、これは物件や運の問題ではありません。1棟目が通った理由そのものの中に、2棟目で止まる理由が隠れています。

この記事の結論
  • 1棟目が通りやすいのは「会社員としての属性」と「まだシンプルなバランスシート」があるから
  • 2棟目以降、銀行の審査軸は「あなたの収入で返せるか」から「財務全体を見て、まだ貸せるか」へ移る
  • 止まる原因は「累積負債」「自己資金(現預金)の減少」「法人化による属性の変化」の3つ
  • 対策は、買う前にBSをシミュレーションし、買う順番・組む銀行・物件規模を設計すること

1棟目の融資が通りやすい2つの理由

理由1:会社員としての「属性」で審査される

1棟目の時点で、銀行が見ているのは主に「この人の収入から返済できるか」です。勤務先、年収、勤続年数。いわゆる個人属性による、PL(損益)・キャッシュフロー重視の審査です。安定した会社にお勤めの方ほど、この段階では有利に働きます。

理由2:バランスシートがまだきれい

もうひとつは、累積負債がほとんどないことです。たとえば1億円の物件を9,000万円の融資で買った場合、バランスシート(BS)は次のようなイメージです。

資産負債純資産
1億円9,000万円1,000万円

借入はあるものの、見た目はシンプルで健全です。「稼いでいる人の、初めての、きれいな案件」。1棟目が通りやすいのは、ある意味で当然なのです。

2棟目・3棟目で融資が止まる3つの原因

原因1:累積負債が「返せる量の上限」に近づく

2棟目以降、銀行の問いは「あなた個人の収入で返せますか?」から「あなたの財務全体を見て、追加で貸していいですか?」に変わります。審査軸がPLからBSへシフトするのです。

1棟目で9,000万円、2棟目で1億2,000万円を借りれば、負債の合計は2億1,000万円。年収がいくら高くても、銀行は「この人が返せる量の上限を超えていないか」を必ず確認します。

原因2:頭金で現預金が減り、有事のバッファが薄くなる

買い進めるたびに、頭金や諸費用で手元の現預金は減っていきます。銀行は資産に占める現預金の厚みをしっかり見ています。空室が続いたり大規模修繕が重なったりしたとき、手元資金がなければ一気に資金繰りが詰まるからです。

原因3:法人化で「個人属性」が使えなくなる

個人で買っていた方が法人を設立して買い始めると、審査の土台そのものが変わります。銀行が見るのは法人の決算書です。設立したばかりの法人には決算の実績がなく、個人の年収がいくら高くても「法人としての信用」は別物として評価されます。

「法人化した途端に借りにくくなった」という現象の正体はこれです。法人化のタイミングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

銀行がいちばん見ているのは、たった一点

「この人(この会社)に、次も貸せるか」。その判断材料である累積負債の量、現預金の厚み、法人財務の健全性は、すべてバランスシートに表れます。

融資が止まらない人がやっている3つの設計

1. 買う前に「自分のBS」をつくり、購入後をシミュレーションする

現在の資産・負債・純資産・現預金を一覧にし、次の物件を買ったあとのBSがどうなるかを計算します。借入後の純資産はいくらか、現預金はいくら残るか。これをやらずに「通ったらラッキー」で買い進めると、3棟目あたりで高い確率で止まります。

2. 取引する銀行を分散させる

同じ銀行に集中させると、その1行の判断ですべてが止まります。2棟目・3棟目からは別の金融機関(地方銀行、信用金庫など)とも取引を始め、1行のリスク許容度に縛られない状態をつくります。

3. 物件規模と自己資金のバランスを毎回計算する

フルローンに近い買い方を続けると純資産が増えません。純資産が増えなければ銀行格付けが上がらず、いずれプロパー融資(保証協会を使わない、銀行独自の判断による融資)の扉が開かなくなります。プロパー融資と保証協会付き融資の違いはこちらの記事で解説しています。

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筆者自身も「あなたには、貸せません」と言われた

偉そうに書いていますが、私自身がこの壁に正面からぶつかった当事者です。

2014年に1棟目を購入し、2018年には累計約20億円まで買い進めました。順調に見えていましたが、2019年、複数の金融機関からほぼ同時に「あなたには、貸せません」と言われました。減価償却が速い物件が多く、貸借対照表上の資産の価格(いわゆる「簿価」)よりも負債の金額のほうが大きくなる、債務超過の状態に陥っていたのです。

そこから、毀損した物件の売却、きちんとした納税、現預金の積み増しという、一見すると拡大とは逆行する手を打ち、財務を立て直しました。銀行との関係を再構築した結果、2025年までに総投資額82億円・45プロジェクトまで積み上げ直すことができました。

この経験から断言できるのは、「BSを先読みしない不動産投資は、必ずどこかで壁にぶつかる」ということです。1棟目が通った人ほど、その感覚のまま買い続けようとします。でも、2棟目・3棟目は別のゲームです。

まとめ

  • 1棟目が通るのは「属性」と「シンプルなBS」のおかげ
  • 2棟目・3棟目で止まるのは「累積負債」「現預金の減少」「法人化による属性変化」が原因
  • 対策は、買う前のBSシミュレーション、銀行の分散、自己資金とのバランス設計

財務を理解して買い進める人と、感覚で買い続ける人とでは、10年後のバランスシートがまったく違ってきます。ご自身のBSを一度プロの目で点検したい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

1棟目と同じ銀行に2棟目も相談すべきですか?
相談自体は問題ありませんが、同じ銀行に集中させると、その1行の与信枠や方針が変わった瞬間に買い進めが止まります。2棟目・3棟目からは、地銀・信用金庫など別の金融機関とも関係をつくり、取引を分散させるのが基本です。
フルローンで買い続けるのはダメなのでしょうか?
一概にダメではありませんが、フルローンに近い買い方を続けると純資産が増えず、銀行格付けが上がりません。結果として、いずれプロパー融資(保証なしの銀行独自の融資)の扉が開かなくなります。物件規模と自己資金のバランスを毎回計算することが重要です。
2棟目の融資が止まったら、まず何をすればいいですか?
まず現在の資産・負債・純資産・現預金を一覧にした「自分のバランスシート」をつくり、銀行がどこを懸念しているかを特定します。債務超過の物件や現預金の薄さが原因なら、売却や納税による財務の立て直しから着手するのが近道です。

※本記事は2026年10月16日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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