「いまの税理士に不満はあるけれど、変えるのは面倒そう」「途中で変えると、税務署や銀行に何か影響があるのでは」。税理士の変更をためらう理由として、よく聞く声です。
税理士を変更する方法は、思っているほど難しくありません。基本の流れは「新しい税理士を決める → いまの税理士に解約を伝える → 資料を引き継ぐ」の3段階です。ただし、タイミングを誤ったり、資料の引き継ぎが漏れたりすると、決算や申告に支障が出ることがあります。この記事では、変更の流れとタイミング、引き継ぐべき資料、銀行への伝え方までを順に解説します。
- 流れは「不満の整理 → 新しい税理士探し → 契約 → 解約の連絡 → 資料の引き継ぎ」。新しい税理士を決めてから解約を伝える
- タイミングは申告が終わった直後か、決算月の数か月前までが安心。決算直前は避ける
- 決算書・申告書の控え、総勘定元帳、固定資産台帳、届出書の控え、e-Taxの情報を確実に引き継ぐ
- 借入がある会社は、変更後に銀行へ一言伝えておくと関係がスムーズ
税理士を変更する前に、不満を整理する
変更を考え始めたら、まず「何に不満があるのか」を書き出してみてください。理由がはっきりしていないと、次の税理士選びでも同じ失敗を繰り返しかねません。
| よくある不満 | 次の税理士で確認したいこと |
|---|---|
| 質問への返事が遅い、連絡がつかない | 回答までの目安、担当者の体制 |
| 決算書を渡されるだけで説明がない | 決算の報告や事前の打ち合わせがあるか |
| 決算前に相談できず、納税額が直前にわかる | 決算の数か月前に着地見込みを出すか |
| 融資や銀行の話ができない | 銀行格付けや融資の支援実績 |
| 料金に見合ったサービスか疑問 | 年間総額と業務範囲の内訳 |
不満の中身によっては、いまの税理士に率直に伝えるだけで改善することもあります。それでも改善が見込めないなら、変更を前向きに検討しましょう。料金の比べ方は税理士の顧問料の相場と比べ方で解説しています。
税理士を変更する流れ【6ステップ】
ステップ1:いまの契約書で解約条件を確認する
顧問契約書に、解約の申し出期限(例:解約希望日の何か月前までに通知)や、解約時の精算方法が書かれていることがあります。先に確認しておくと、切り替えの時期を決めやすくなります。
ステップ2:新しい税理士を探し、面談する
候補を2〜3事務所に絞り、面談で話を聞きます。直近の決算書と申告書を見てもらい、どんな改善点があるかを聞くと、その税理士の実力や考え方がよくわかります。いきなり変えるのが不安なら、まずセカンドオピニオンとして相談してみるのもひとつの方法です。
ステップ3:新しい税理士と契約する
業務の範囲、料金、開始時期を決めて契約します。解約を伝えるのは、新しい税理士との契約が固まってからにしましょう。先に解約してしまうと、税理士がいない空白期間が生まれ、月次の処理や申告期限に間に合わなくなるおそれがあります。
ステップ4:いまの税理士に解約を伝える
これまでのお礼とともに、契約終了の時期を伝えます。理由を詳しく説明する義務はありませんが、関係をこじらせないよう、丁寧に伝えるのが無難です。引き継ぎの資料をお願いすることになるため、最後まで良い関係を保つことが大切です。
「これまで長くお世話になり、ありがとうございました。社内で検討した結果、〇年〇月の申告をもって顧問契約を終了させていただきたいと考えています。引き継ぎにあたり、決算書・申告書の控えや会計データなどをご用意いただけますと助かります。」
電話や面談で伝えたうえで、契約終了日や引き継ぎ資料の内容を書面やメールでも残しておくと、行き違いを防げます。
ステップ5:資料とデータを引き継ぐ
次の章で詳しく説明します。
ステップ6:新しい税理士が申告を行う
新しい税理士は、申告書の提出にあわせて、税務代理を任されていることを示す「税務代理権限証書」を提出します。税理士の変更そのものについて、会社が税務署に別途届け出る決まった手続きはありません。
引き継ぐべき資料のチェックリスト
引き継ぎで最も大切なのは、過去の経緯がわかる資料を漏れなくそろえることです。
| 資料 | なぜ必要か |
|---|---|
| 過去数期分の決算書・申告書の控え(法人税・消費税・地方税) | 繰越欠損金や前期からの数字のつながりを確認するため |
| 総勘定元帳、試算表 | 勘定科目の中身を把握するため |
| 会計ソフトのデータ | 記帳を引き継ぐため(形式や移行方法を確認) |
| 固定資産台帳 | 減価償却を継続して計算するため |
| 税務署等への届出書・申請書の控え(青色申告の承認申請書、消費税の各種届出など) | 適用を受けている制度を確認するため |
| 源泉所得税・年末調整・給与関係の資料 | 給与・源泉の処理を継続するため |
| 過去の税務調査の資料 | 指摘事項を踏まえた処理を続けるため |
| e-Taxの利用者識別番号など電子申告の情報 | 新しい税理士が電子申告を行うため |
会計ソフトが変わる場合
前の税理士と新しい税理士で使っている会計ソフトが違う場合は、データの移行方法を事前に確認します。期首の残高だけを移して新しいソフトで記帳を始める方法、過去の仕訳も含めて移す方法などがあり、期の途中で切り替えると移行の手間が増えます。会計ソフトの契約者が会社なのか事務所なのかも確認しておきましょう。会社名義で契約していれば、データはそのまま使い続けられます。
電子申告の情報
会計ソフトや電子申告の情報は、税理士事務所側で管理されていることもあります。会社の資料は会社のものです。日頃から決算書・申告書の控えや会計データを手元に保管しておくと、変更の際も慌てずに済みます。
変更に適したタイミング
| タイミング | 評価 | 理由 |
|---|---|---|
| 申告が終わった直後 | ◎ | 1期分が締まっていて、新しい期の最初から担当できる |
| 決算月の数か月前まで | ○ | 着地の見込みを立て、決算前の検討に間に合う |
| 決算月〜申告期限の間 | △ | 引き継ぎと決算作業が重なり、検討が不十分になりやすい |
最も切り替えやすいのは、申告が終わった直後です。前期の決算・申告がすべて終わり、新しい期の最初から新しい税理士が担当できるため、責任の範囲も明確です。
決算の直前に変更すると、新しい税理士が過去の経緯を把握しきれないまま決算を組むことになります。急ぐ事情がない限りは避けましょう。
期の途中で変えるときは「どこまでを誰が担当するか」を決める
対応の遅れなどで、期の途中に変更せざるを得ないこともあります。その場合は、前の税理士がどの月までの記帳を担当したのか、源泉所得税の納付や年末調整などをどちらが行うのかを、はっきり線引きしておきます。とくに源泉所得税の納付や消費税の届出のように期限が決まっている手続きは、引き継ぎの間に抜け落ちやすいため、新しい税理士と一緒に今後の期限を一覧にしておくと安心です。
借入がある会社は、銀行への伝え方も考える
融資を受けている会社にとって、税理士の変更は銀行との関係にも関わります。銀行は決算書を毎期比べて見ているため、勘定科目の使い方や表示の仕方が急に変わると、「何があったのか」と疑問を持ちます。
- 変更後、最初の決算書を出すときに「税理士を変更した」と一言伝える
- 科目の組み替えなど表示が変わった箇所は、前期と比べられるように説明する
- 変更をきっかけに、試算表を早めに出すなど報告の質を上げる
新しい税理士には、取引している金融機関、借入の一覧、過去に銀行から指摘されたことも共有しておきましょう。決算書を作る段階から銀行の見方を踏まえてもらえるため、最初の決算から説明しやすい決算書に近づけられます。前の税理士の決算で処理が整理されていなかった科目(仮払金や貸付金など)がある場合は、変更を機に整理の方針を決め、銀行にも経緯を説明できるようにしておくと安心です。
税理士の変更は、決算書と銀行への説明の質を上げる良い機会でもあります。私たちのもとにも、「融資の相談に乗ってもらえないので変えたい」というご相談が多く寄せられます。決算書を銀行の目線で見直すだけで、評価が変わることは少なくありません。融資に強い税理士の見極め方は融資に強い税理士の選び方で解説しています。
まとめ
- 不満を整理し、新しい税理士との契約が固まってから、いまの税理士に解約を伝える
- 変更のベストタイミングは申告が終わった直後。決算直前は避ける
- 決算書・申告書の控え、元帳、固定資産台帳、届出書の控え、e-Taxの情報を漏れなく引き継ぐ
- 借入がある会社は、変更後の最初の決算で銀行に一言伝える
税理士の変更は、会社の財務を見直すきっかけにもなります。変更を検討中の方は、まず直近の決算書を持ってご相談ください。
