医療の世界では、手術などの大きな判断の前に、別の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」が定着しています。税務の世界でも同じように、税理士のセカンドオピニオンを利用する経営者が増えています。
税理士のセカンドオピニオンとは、顧問税理士を変えずに、特定のテーマについて別の税理士から意見を聞くことです。いまの税理士を疑うためのものではありません。金額の大きな判断や、専門性の高い論点について、判断の材料を増やすための仕組みです。この記事では、セカンドオピニオンを使うべき場面と、相談の進め方、注意点を解説します。
- セカンドオピニオンは、顧問税理士を変えずに別の税理士の意見を聞く方法
- 使うべきなのは、金額の大きい判断、専門性の高い論点、融資が思うように進まないときなど
- 相談前に「何を判断したいのか」と資料を整理しておくと、具体的な意見が得られる
- 意見を実際の決算・申告に反映するときは、顧問税理士と話し合う
税理士のセカンドオピニオンとは
顧問税理士は、会社の数字を日頃から見ている、いちばん身近な専門家です。ただ、税理士にも得意・不得意があります。法人の月次決算に強い税理士が、不動産の売却や相続、組織再編にも同じように詳しいとは限りません。
セカンドオピニオンは、こうした特定のテーマについて、別の視点から意見をもらうためのものです。顧問契約を結ぶわけではなく、スポットの相談として利用するのが一般的です。
| 顧問税理士 | セカンドオピニオン | |
|---|---|---|
| 関わり方 | 継続的に会社の数字を見る | 特定のテーマについてスポットで意見を出す |
| 強み | 会社の経緯や事情を深く知っている | 先入観なく、別の専門性から見られる |
| 申告書の作成 | 行う | 原則として行わない |
| 費用 | 月額顧問料など | 相談ごとのスポット料金が一般的 |
セカンドオピニオンを使うべき5つの場面
1. 金額の大きい取引や判断の前
不動産の売却、M&Aによる会社の買収や売却、法人化、組織再編、事業承継など、一度決めると後戻りできず、税額への影響も大きい判断です。進め方によって税負担や資金繰りが大きく変わることがあるため、別の税理士の視点で確認する価値があります。
たとえば不動産の売却では、売る時期、個人で売るか法人で売るか、売却代金で借入をどこまで返すかによって、税額だけでなく、売却後の決算書と銀行の評価も変わります。税金の計算だけでなく、売った後に次の融資を受けられる状態が残るかまで含めて検討できているかは、確認しておきたいポイントです。売却時の税金の基本は不動産売却の税金で解説しています。
2. 融資が思うように進まないとき
「決算は黒字なのに融資が通らない」「銀行の反応が鈍い」。こうしたときは、決算書の中身や見せ方に原因があることが少なくありません。社長への貸付金、説明のつかない勘定科目、利益を圧縮しすぎた決算など、銀行の目線で見ると評価を下げているポイントが見つかることがあります。融資を断られたときの考え方は融資を断られた理由と次の一手で解説しています。
| 銀行の目線で確認するポイント | 見つかりやすい課題 |
|---|---|
| 債務償還年数 | 利益に比べて借入が多すぎる、現預金が薄い |
| 実質の純資産 | 社長への貸付金や回収できない売掛金が残っている |
| 勘定科目の内訳 | 仮払金・雑費などに中身のわからない金額がある |
| 利益の水準 | 税額を抑えることを優先し、利益が出ていない |
| 提出のタイミング | 決算書や試算表を出すのが遅い |
いずれも税務上の誤りではないことが多いため、顧問税理士との日頃のやりとりでは話題になりにくい点です。
3. 税務調査で指摘を受け、納得できないとき
指摘の内容に納得できないまま修正に応じてよいのか、迷うことがあります。税務の取扱いとして妥当か、別の考え方はないかを確認したいときに有効です。ただし、調査の対応そのものは顧問税理士が中心になるため、相談は早めに行いましょう。
4. 顧問税理士の説明に納得しきれないとき
説明を受けても腑に落ちない、提案された対策が本当に自社に合うのかわからない。こうしたときに別の意見を聞くことで、顧問税理士の説明が正しかったと確認できることも多くあります。それも、セカンドオピニオンの立派な成果です。
5. 税理士の変更を考えているとき
いきなり変えるのは不安でも、セカンドオピニオンとして相談すれば、候補の税理士の考え方や実力を確かめられます。変更の手順は税理士を変更する方法と流れで解説しています。
セカンドオピニオンの進め方
ステップ1:判断したいことを一文にする
「来年、この物件を売るべきか、持ち続けるべきか」「この決算書で、追加融資を受けられる見込みはあるか」のように、何を判断したいのかを一文で書き出します。テーマがぼやけたままだと、一般論しか返ってきません。
ステップ2:資料をそろえる
| テーマ | 用意したい資料 |
|---|---|
| 共通 | 直近2〜3期分の決算書・申告書の控え |
| 融資 | 借入の一覧(金融機関、残高、金利、返済期間)、銀行から言われたこと |
| 不動産の売却・購入 | 売買契約書、物件の収支、借入の明細 |
| 税務調査 | 指摘された内容、やりとりの記録 |
| 事業承継・相続 | 株主構成、主な資産の一覧 |
ステップ3:意見を聞き、顧問税理士と話し合う
セカンドオピニオンで出た意見を、実際の決算や申告に反映するのは顧問税理士です。「別の税理士にこういう見方もあると言われたが、どう考えるか」と、判断材料のひとつとして共有すると、建設的な話し合いになりやすくなります。
セカンドオピニオンで得られること・得られないこと
期待とのずれを防ぐために、セカンドオピニオンでできることとできないことを整理しておきます。
| 得られること | 得られないこと |
|---|---|
| 特定のテーマについての別の見方、選択肢 | 申告書の作成や税務署への提出 |
| 顧問税理士の説明が妥当かどうかの確認 | 日々の記帳や月次の数字の管理 |
| 銀行や専門分野の目線からの改善点 | 前提となる事実を知らないままの確実な結論 |
| 税理士を変えるかどうかの判断材料 | 顧問税理士の判断を覆す強制力 |
セカンドオピニオンは「答え」をもらう場というより、判断の精度を上げるための材料を集める場です。結論を出すのは経営者自身であり、それを実行するのは顧問税理士です。この役割分担を意識しておくと、相談の成果を最大限に生かせます。
相談するときの注意点
- 相談先の専門分野を確認する:融資なら融資、不動産なら不動産、相続なら相続に強い税理士に相談する
- 一方の意見だけを正解と決めつけない:税務の判断には幅があるものも多く、前提となる事実によって結論が変わる
- 費用と範囲を事前に確認する:何回の面談で、どこまで意見を出してもらえるのか、書面での回答が必要かを確認する
- 前提を正確に伝える:都合の悪い事実を伏せると、意見の精度が下がる
- 期限を意識する:申告期限や売買の契約日が迫ってからでは、意見を聞いても反映する時間がない
とくに最後の点は重要です。決算の着地が見えてから、あるいは不動産の売買契約を結んだ後に相談しても、選べる手はほとんど残っていません。大きな判断ほど、決める数か月前に相談することで、セカンドオピニオンの価値は大きくなります。顧問税理士にとっても、早い段階で論点を共有してもらえるほうが、検討の時間を確保できます。
融資の目線で決算書を見るセカンドオピニオン
クレフティでも、顧問税理士はそのままに、決算書や財務の状況を融資の観点から見るセカンドオピニオンのご相談をお受けしています。20行を超える金融機関との折衝や、累計120億円超の融資承認の支援を通じて、銀行が決算書のどこを見て、何を懸念するのかを数多く見てきました。
私自身、2019年に複数の銀行から融資を止められた経験があります。当時の決算書は、税務上は間違っていなくても、銀行から見ると「次も貸せる」とは言い切れない内容でした。税務として正しいことと、銀行から評価されることは、必ずしも同じではありません。その差を埋める視点を持つ専門家の意見は、融資を受け続けたい会社にとって大きな判断材料になります。
銀行の審査の考え方は銀行融資の審査で見られるポイントもあわせてご覧ください。
まとめ
- 税理士のセカンドオピニオンは、顧問税理士を変えずに、特定のテーマについて別の意見を聞く方法
- 大きな取引の前、融資が進まないとき、税務調査の指摘に迷うとき、説明に納得できないときに有効
- 判断したいことを一文にし、決算書などの資料をそろえて相談する
- 得た意見は、顧問税理士と共有して実際の判断に生かす
決算書を融資の目線で見てほしい、いまの方針で良いのか確認したいという方は、初回30分の無料相談をご利用ください。融資・資金調達のご相談から受け付けています。
