物件の価格と融資の条件はしっかり比べるのに、買った後に届く税金を甘く見ていた――。不動産投資のご相談でよく聞く話です。不動産を買うときには不動産取得税と登録免許税、持っている間は毎年固定資産税(と都市計画税)がかかります。
どれも金額が小さくないうえ、融資の対象にならない「諸費用」として手元の現金から払うことが多い税金です。この記事では、2026年10月時点の制度にもとづいて、税率と軽減措置、資金計画と銀行評価への影響を整理します。
- 買うときは不動産取得税(都道府県)と登録免許税(国)、持っている間は毎年固定資産税・都市計画税(市町村)がかかる
- いずれも計算の基本は固定資産税評価額。売買価格ではない
- 不動産取得税は決済の数か月後に届く。決済時点で納税資金を確保しておく
- 固定資産税の精算金は取得価額に含めるのが一般的。取得税・登録免許税は経費にもできるが、初年度の決算書の見え方とあわせて判断する
不動産を買うとき・持つときにかかる税金の全体像
| 税金 | かかるタイミング | 納める先 | 課税標準 | 標準的な税率 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産取得税 | 取得したとき(1回) | 都道府県 | 固定資産税評価額 | 4%(土地・住宅は特例で3%) |
| 登録免許税 | 登記をするとき(1回) | 国 | 固定資産税評価額(抵当権は債権額) | 売買による所有権移転は2%(土地は特例で1.5%) |
| 固定資産税 | 毎年(1月1日の所有者に) | 市町村 | 固定資産税評価額(住宅用地は特例あり) | 1.4%(標準税率) |
| 都市計画税 | 毎年(市街化区域内) | 市町村 | 固定資産税評価額(住宅用地は特例あり) | 0.3%を上限に市町村が定める |
ポイントは、どの税金も売買価格ではなく固定資産税評価額をもとに計算することです。固定資産税評価額は、市町村から届く固定資産税の課税明細書や、評価証明書で確認できます。購入前に売主や仲介会社から入手して、税額を試算しておきましょう。
不動産取得税|買ってから数か月後に届く税金
税率と土地の特例
不動産取得税の標準税率は4%ですが、2027年3月31日までの取得については、土地と住宅は3%に軽減されています。店舗や事務所などの住宅以外の建物は4%です。
さらに、宅地を取得した場合は課税標準が2分の1になる特例があります(同じく2027年3月31日まで)。
新築住宅の控除と、中古住宅の控除
新築の住宅は、床面積などの要件を満たせば、建物の評価額から1戸あたり1,200万円が控除されます。アパートなどの共同住宅でも、独立した区画ごとに判定するため、要件を満たす新築アパートでは建物部分の取得税がかなり小さくなることがあります。
一方、中古住宅の控除は、個人が自分で住むために取得した場合が対象です。中古アパートを賃貸用に買う投資家は、建物部分について原則どおり課税されると考えておきましょう。
合併や相続は非課税
相続による取得や、会社の合併による取得には、不動産取得税がかかりません。法人を合併で整理する場合のメリットのひとつです(詳しくは不動産会社のホールディングス化で解説しています)。
納税通知書は決済の数か月後に届く
不動産取得税で一番の注意点はタイミングです。登記の情報をもとに都道府県が課税するため、納税通知書は決済から数か月後に届くのが一般的です。1億円規模の物件なら、取得税だけで数十万〜数百万円になることもあります。決済のときには諸費用を払い終えたつもりでいても、後から大きな請求が来る。決済時点で、この税金の分まで現預金を残しておくことが大切です。
登録免許税|登記のたびにかかる税金
物件を買うと、所有権移転の登記と、融資を受ける場合は抵当権設定の登記を行います。それぞれに登録免許税がかかります。
| 登記の種類 | 税率 |
|---|---|
| 土地の売買による所有権移転 | 2%(2029年3月31日までは特例で1.5%) |
| 建物の売買による所有権移転 | 2%(個人が自分で住む一定の住宅は軽減あり) |
| 新築建物の所有権保存 | 0.4% |
| 抵当権の設定 | 債権額の0.4% |
| 合併による所有権移転 | 0.4% |
賃貸用の物件は、自宅向けの住宅用家屋の軽減措置の対象外です。たとえば固定資産税評価額が土地5,000万円・建物3,000万円の中古アパートを買い、1億円の融資を受ける場合、登録免許税だけで土地75万円+建物60万円+抵当権40万円=175万円になります。これに司法書士の報酬が加わります。
固定資産税・都市計画税|毎年かかる保有コスト
1月1日の所有者に1年分がかかる
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者に1年分が課税されます。年の途中で売買した場合、税金そのものは1月1日の所有者(売主)に課税されるため、売買契約で日割りの精算金として買主が売主に払うのが慣行です。
住宅用地の特例
住宅が建っている土地は、固定資産税と都市計画税の課税標準が軽減されます。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(1戸あたり200㎡以下の部分) | 評価額の6分の1 | 評価額の3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額の3分の1 | 評価額の3分の2 |
アパートの場合、200㎡の判定は戸数ごとに行うため、戸数の多い物件では土地のほとんどが小規模住宅用地になります。逆に、建物を取り壊して更地にしたり、店舗だけの建物にしたりすると特例が外れ、税額が大きく上がる点に注意してください。
年間の固定資産税を試算してみる
たとえば、土地の評価額5,000万円(すべて小規模住宅用地)、建物の評価額3,000万円の賃貸アパートで、都市計画税の税率を0.3%として単純化して計算すると、次のようになります。
| 項目 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 土地の固定資産税 | 5,000万円 × 1/6 × 1.4% | 約11.7万円 |
| 土地の都市計画税 | 5,000万円 × 1/3 × 0.3% | 約5.0万円 |
| 建物の固定資産税 | 3,000万円 × 1.4% | 42.0万円 |
| 建物の都市計画税 | 3,000万円 × 0.3% | 9.0万円 |
| 合計 | 約67.7万円 |
※実際には土地の負担調整措置などにより、税額が異なる場合があります。
土地は住宅用地の特例で大きく軽減される一方、建物には特例がないため、税額の多くを建物が占めます。築浅の物件ほど建物の評価額が高く、固定資産税も重くなります。表面利回りだけで比べず、固定資産税を差し引いた後の利回りで物件を比べてください。
新築の住宅には、一定期間、建物の固定資産税を2分の1に減額する措置もあります(1戸あたり120㎡分まで。原則3年間、3階建て以上の耐火・準耐火建築物は5年間)。新築アパートの収支を試算するときは、減額が終わった後の税額で長期の収支を見ておきましょう。
税金をどう経理するか|精算金・経費化と決算書
固定資産税の精算金は「取得価額」
買主が売主に払う固定資産税の精算金は、税金そのものではなく売買代金の一部として扱われ、物件の取得価額に含めるのが一般的です。その年の租税公課として一括で経費にすることはできません。土地分と建物分に按分し、建物分は減価償却で費用になります。
不動産取得税・登録免許税は「経費」か「取得価額」か選べる
賃貸用の物件にかかる不動産取得税や登録免許税は、取得価額に含めずに、その年の経費(租税公課)にすることができます。経費にすれば、その年の税金は減ります。
ただし、取得した年の決算書を見る銀行の目線では話が変わります。物件を買った年は、仲介手数料などの取得価額に含める費用以外にも諸費用が重なり、経費にすれば利益が小さく、場合によっては赤字に見えます。翌年に次の物件の融資を申し込む予定があるなら、税金を少し減らすことより、決算書をきれいに保つことのほうが価値がある場合もあります。償却や経費の入れ方が融資に与える影響は、中古物件の減価償却と耐用年数の計算でも解説しています。
諸費用は「自己資金」から出ていく|銀行評価への影響
不動産取得税、登録免許税、仲介手数料などの諸費用は、物件価格の数%から1割近くになることもあります。そして多くの場合、融資の対象にならず、手元の現預金から払います。
銀行は、借入の量だけでなく、手元の現預金の厚みを見ています。物件を買うたびに諸費用で現預金が減り、後から不動産取得税の請求が来る。これを繰り返すと、BSの現預金が細り、格付けの安全性の評価が下がっていきます。私自身、2019年に融資が止まったときは、減価償却が速い物件が多く、貸借対照表上の資産の価格(いわゆる「簿価」)よりも負債の金額のほうが大きくなる、債務超過の状態に陥っていました。
当事務所では、購入の検討段階で次の3点をセットで試算することをおすすめしています。
- 諸費用の総額:取得税・登録免許税・仲介手数料・司法書士報酬・火災保険など
- 支払いのタイミング:決済時に払うものと、数か月後に届くもの
- 購入後のBS:現預金がいくら残り、自己資本比率がどうなるか
頭金と諸費用でどれくらい自己資金が必要かは、不動産投資の自己資金はいくら必要かも参考にしてください。
まとめ
- 買うときは不動産取得税・登録免許税、持っている間は毎年固定資産税・都市計画税がかかる
- 計算の基本は固定資産税評価額。購入前に評価額を入手して試算する
- 不動産取得税は土地・住宅3%、宅地は課税標準2分の1。納税通知は決済の数か月後
- 固定資産税の精算金は取得価額。取得税・登録免許税は経費にもできるが、初年度の決算書への影響を考える
- 諸費用は現預金から出ていく。購入後のBSまで試算してから買う
物件の取得から保有までの税金と、融資を受け続けるための決算書づくりは、不動産投資家向けのサービスでまとめてご相談いただけます。
