相続・事業承継

不動産を贈与するときの税金|贈与税・登録免許税・不動産取得税と相続時精算課税の判断

「アパートを1棟、今のうちに子どもに渡しておきたい」「自宅の持分を妻に贈与したい」。こうしたご相談は少なくありません。ところが、不動産の贈与にかかる税金は贈与税だけではありません。登録免許税と不動産取得税もかかり、相続で引き継ぐより重くなることがあります。

この記事では、不動産を贈与するときにかかる税金の全体像と、暦年贈与・相続時精算課税の選び方、ローンが残る物件や賃貸物件ならではの注意点を、融資の視点も交えて解説します。

この記事の結論
  • 不動産の贈与には贈与税・登録免許税(2%)・不動産取得税がかかる。相続なら登録免許税は0.4%、不動産取得税は非課税
  • 贈与税は相続税評価額(土地は路線価、建物は固定資産税評価額)をもとに計算する。暦年贈与は累進税率、相続時精算課税は2,500万円まで非課税
  • ローンを引き継がせる贈与は負担付贈与となり、通常の取引価額で評価される。担保物件は銀行の承諾も必要
  • 「贈与で早く渡すべき物件」と「相続まで残すべき物件」を分けて考える

不動産の贈与でかかる税金の全体像

不動産を贈与すると、受け取った人に次の税金がかかります。

税金贈与の場合相続の場合
贈与税・相続税贈与税(暦年課税または相続時精算課税)相続税
登録免許税(所有権移転登記)固定資産税評価額の2%固定資産税評価額の0.4%
不動産取得税課税(土地・住宅は3%、住宅以外の家屋は4%)非課税
印紙税(契約書)贈与契約書に原則200円なし

不動産取得税の税率の軽減(土地・住宅3%)と、宅地の課税標準を2分の1にする特例は、いずれも2027年3月31日までの取得が対象です。また、生前に贈与した土地には、相続税の小規模宅地等の特例は使えません。

手続きコストだけで見れば、相続のほうが安いことを、まず押さえておいてください。

試算:固定資産税評価額1,600万円の宅地を渡す場合

項目贈与相続
登録免許税1,600万円×2%=32万円1,600万円×0.4%=6.4万円
不動産取得税1,600万円×1/2×3%=24万円非課税
合計56万円6.4万円

(2027年3月31日までの軽減税率・課税標準の特例を前提にした概算。司法書士報酬などは別)

宅地1区画でも、贈与と相続では50万円近い差が出ます。建物も一緒に渡せば、その分の登録免許税と不動産取得税が加わります。贈与税がかからない場合でも、この差額を払ってでも今渡す理由があるかを考える必要があります。

現金で渡して買ってもらう選択肢

子が自宅を買う予定なら、不動産そのものではなく住宅取得等資金として現金を贈与する方法もあります。一定の要件を満たせば、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円まで贈与税が非課税になる特例です。ただし対象は2026年12月31日までの贈与とされています(2026年10月時点)。期限が近いため、使うなら早めに要件を確認してください。

贈与税の計算:評価額と2つの課税方式

不動産の評価額

贈与税は、相続税と同じルールで評価した金額で計算します。土地は路線価(または倍率)、建物は固定資産税評価額です。賃貸中の物件なら、貸家建付地・貸家として減額されます。評価の仕組みは相続税での不動産の評価で詳しく解説しています。

なお、2027年1月1日以後の相続・贈与からは、贈与前5年以内に対価を払って取得した貸付用不動産を通常の取引価額で評価するという通達案が、2026年9月に公表されています(2026年10月時点で意見募集の段階)。買ったばかりの賃貸物件を贈与する場合は、この動きに注意が必要です。

暦年課税の税率

暦年課税では、1年間の贈与の合計から110万円を差し引いた額に、累進税率をかけます。父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与には「特例税率」、それ以外には「一般税率」を使います。

基礎控除後の課税価格特例税率(控除額)一般税率(控除額)
200万円以下10%(−)10%(−)
200万円超〜300万円以下15%(10万円)15%(10万円)
300万円超〜400万円以下15%(10万円)20%(25万円)
400万円超〜600万円以下20%(30万円)30%(65万円)
600万円超〜1,000万円以下30%(90万円)40%(125万円)
1,000万円超〜1,500万円以下40%(190万円)45%(175万円)
1,500万円超〜3,000万円以下45%(265万円)50%(250万円)
3,000万円超〜4,500万円以下50%(415万円)55%(400万円)
4,500万円超55%(640万円)55%(400万円)

たとえば評価額2,000万円の不動産を、暦年課税で18歳以上の子に一度に贈与すると、(2,000万円−110万円)×45%−265万円=約586万円の贈与税になります。不動産のようにまとまった財産を暦年課税で一度に渡すのは、税率の面で負担が大きくなりがちです。

相続時精算課税

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与なら、相続時精算課税を選べます。年110万円の基礎控除に加えて累計2,500万円まで贈与税がかからず、超えた部分は一律20%です。同じ2,000万円の不動産なら、贈与時の贈与税は0円です。

その代わり、相続のときに贈与時の価額(基礎控除部分を除く)で相続財産に加えて精算します。つまり相続税を減らす制度ではなく、渡す時期を前倒しする制度です。不動産で相続時精算課税を使う意味があるのは、次のような場合です。

  • 値上がりが見込める物件で、将来の値上がり分を子の財産にしたい
  • 賃貸物件の家賃収入を早く子に帰属させ、親の財産が増え続けるのを止めたい
  • 相続で分け方がもめないよう、生前に帰属を確定させたい

逆に、小規模宅地等の特例が使える自宅の土地などは、相続まで残すほうが有利になることが多いでしょう。2つの制度の比較は生前贈与と相続の新ルールをご覧ください。

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状況別の注意点

夫婦間の居住用不動産:配偶者控除

婚姻期間20年以上の夫婦なら、居住用不動産(またはその取得資金)の贈与について、基礎控除とは別に最高2,000万円まで控除できます。同じ配偶者からは一生に一度で、翌年3月15日までに住み始めることや、贈与税の申告が必要です。登録免許税や不動産取得税はかかります。

ローンが残る物件:負担付贈与

借入付きの物件を「ローンごと」子に渡すと、負担付贈与になります。この場合、土地・建物は相続税評価額ではなく通常の取引価額で評価し、そこから引き継いだ債務を差し引いて贈与税を計算します。さらに、贈与した親の側には、引き継がせた債務の額で物件を売ったものとして譲渡所得の課税が生じることがあります。

そして見落とされがちなのが銀行です。担保に入っている物件の所有者を変えたり、債務者を変えたりするには、通常、金融機関の承諾が必要です。承諾なく名義を変えれば約定違反になりかねず、受け取る子の側も、借入を引き継ぐだけの返済能力を審査されます。

賃貸物件:敷金と家賃

賃貸物件を贈与すると、入居者に対する敷金の返還義務も受け取った人に移ります。敷金相当額の現金を一緒に贈与すれば、実質的に負担がない贈与として扱われるのが一般的です。家賃は贈与の日以後は受け取った人の収入になるため、確定申告も受け取った人が行います。

持分の贈与と共有

物件の一部の持分だけを贈与する方法もありますが、共有になると、売却や建替え、借換えのたびに共有者全員の同意が必要になります。共有の注意点は共有名義の不動産と税金で解説しています。

法人への贈与は別のルール

個人から法人へ不動産を贈与すると、贈与した個人には時価で売ったものとみなす譲渡所得課税、受け取った法人には受贈益への法人税がかかります。「自分の会社にタダで移せば税金はかからない」わけではありません。

贈与の前に確認したい4つのこと

  1. その物件は、相続まで残すほうが有利ではないか:小規模宅地等の特例、登録免許税・不動産取得税の差
  2. 評価額と手続きコストの試算:贈与税だけでなく、登録免許税・不動産取得税まで合計する
  3. ローンと担保の扱い:負担付贈与にならないか、金融機関の承諾が必要か
  4. 受け取る人の財務:受け取った子が今後融資を受けるとき、その物件がどう見られるか

最後の点は、不動産投資家にとって特に大切です。銀行は物件単体ではなく、持ち主のバランスシート全体を見ます。収益力の高い物件をもらえば子の財務は強くなりますが、担保評価より借入が大きい物件や、修繕が迫る物件を引き継げば、子が次の融資を受けにくくなることがあります。贈与は「税金がいくらか」だけでなく、受け取る人のBSを強くするかどうかで判断してください。

まとめ

  • 不動産の贈与には贈与税・登録免許税2%・不動産取得税がかかり、相続より手続きコストが高い
  • 暦年課税は累進税率で、まとまった不動産を一度に渡すと重くなりやすい。相続時精算課税は2,500万円まで非課税だが、相続時に精算する
  • 夫婦間の居住用不動産には最高2,000万円の配偶者控除がある
  • ローン付きの物件は負担付贈与として通常の取引価額で評価され、銀行の承諾も必要
  • 贈与する物件と残す物件を分け、受け取る人の財務まで考えて設計する

クレフティでは、贈与税と登記・不動産取得税を含めた試算から、金融機関との調整まで、不動産投資家向けのサポートの中でご相談をお受けしています。

よくある質問

不動産は贈与と相続、どちらで渡すほうが得ですか?
一概には言えません。贈与では登録免許税(固定資産税評価額の2%)と不動産取得税がかかり、相続(登録免許税0.4%、不動産取得税は非課税)より手続きコストが高くなります。小規模宅地等の特例も、相続時精算課税で贈与した土地には使えません。一方で、値上がりが見込める物件や、収益を早く子に移したい賃貸物件は、早めの贈与に意味がある場合もあります。
ローンが残っている物件を子どもに贈与できますか?
子がローンを引き継ぐ形の贈与は負担付贈与となり、土地・建物は相続税評価額ではなく通常の取引価額で評価されます。贈与する親にも、引き継がせた債務の額を売却代金とみなした譲渡所得の課税が生じることがあります。また、担保に入っている物件の所有者を変えるには、通常は金融機関の承諾が必要です。実行前に税理士と金融機関の両方に相談してください。
夫婦間で自宅を贈与すると税金はかかりませんか?
婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、居住用不動産またはその取得資金の贈与について、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できる特例があります。同じ配偶者からは一生に一度で、贈与税の申告が必要です。ただし、登録免許税や不動産取得税はかかるため、手続きコストも含めて判断します。

※本記事は2026年10月17日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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