「創業するなら、返さなくていい補助金を使いたい」。起業準備中の方から、よくいただくご相談です。たしかに、創業時に使える補助金・助成金にはさまざまな種類があり、うまく使えば事業の立ち上げを後押ししてくれます。
ただし、補助金・助成金は原則として後払いで、採択されるとは限らず、受け取れば課税されるお金です。融資と同じ感覚で計画に組み込むと、資金繰りで行き詰まることがあります。この記事では、創業時に使える補助金・助成金の主な種類と、融資との違い、資金繰りで失敗しない使い方を解説します。
- 創業時に使えるのは、国の補助金(持続化補助金など)、自治体の創業助成、雇用関係の助成金、創業支援の優遇制度の4系統
- 補助金は公募・審査・採択が必要。助成金は要件を満たせば原則受給できる
- どちらも後払い。採択から入金までの支払いは、自己資金や融資で先に用意する
- 補助金は事業の「上乗せ」。資金繰りの主役は自己資金と融資に置く
補助金と助成金の違い
「補助金」と「助成金」は似た言葉ですが、性格が異なります。
| 比較項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な実施者 | 経済産業省・中小企業庁、自治体 | 厚生労働省(雇用関係)、自治体 |
| 目的 | 設備投資、販路開拓、新事業など | 雇用、人材育成、職場環境の改善など |
| 受給の可否 | 公募・審査で採択されたもののみ | 要件を満たせば原則として受給できる |
| 申請時期 | 公募期間が決まっている | 通年で受け付けるものが多い |
| 受け取る時期 | 事業実施・実績報告の後(後払い) | 取組みの実施後(後払い) |
補助金は「競争」、助成金は「要件の充足」と考えるとわかりやすいでしょう。
創業時に使える主な補助金・助成金
制度の名称や上限額、補助率は、年度や公募回ごとに変わります。ここでは2026年10月時点の主な制度の「系統」を紹介します。申請前には必ず各制度の公募要領で最新の内容を確認してください。
1. 小規模事業者持続化補助金(創業型など)
小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取組みを支援する補助金です。創業後間もない事業者を対象とした枠が設けられており、市区町村の特定創業支援等事業の支援を受けていることなどが要件になります。チラシ・ウェブサイト・店舗改装など、創業期の販路開拓に使いやすいのが特徴です。商工会・商工会議所の支援を受けながら申請します。
2. デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
業務効率化のためのソフトウェアやクラウドサービスの導入を支援する補助金です。令和7年度補正予算の事業から、「IT導入補助金」から名称が変わっています。会計・受発注・決済などのツール導入を考えている場合に検討します。
3. ものづくり補助金の流れをくむ、設備投資型の補助金
革新的な製品・サービスの開発や、新分野への進出に伴う設備投資を支援する補助金です。2026年は、従来のものづくり補助金と新事業進出補助金を一本化した補助金として公募が行われています。補助額が大きい一方、事業計画の作り込みや、賃上げなどの要件が求められます。
4. 自治体の創業助成
都道府県や市区町村が、独自に創業者向けの助成を行っている場合があります。対象経費は家賃や広告費、人件費など自治体によってさまざまで、地域で創業すること、自治体の創業支援を受けていることなどが要件になるのが一般的です。本店所在地の自治体のホームページで確認してください。
5. 雇用関係の助成金
従業員を雇う段階で検討するのが、厚生労働省の雇用関係助成金です。非正規雇用の社員を正社員にした場合のキャリアアップ助成金などがあります。雇用保険の適用事業所であること、就業規則や労働条件の整備などが前提になるため、社会保険労務士と連携して進めます。
6. 特定創業支援等事業による優遇
お金を直接もらう制度ではありませんが、創業者が必ず確認したいのが、市区町村の特定創業支援等事業です。創業セミナーなどで一定の支援を受けて証明書を取得すると、会社設立時の登録免許税が半額になるほか、信用保証協会の創業関連保証を事業開始の6か月前から利用できるなどの優遇があります。持続化補助金の創業向けの枠の要件にもなっているため、創業前に受けておく価値が高い制度です。
補助金・助成金と融資の違い
補助金・助成金と融資は、どちらも創業期の資金ですが、性格がまったく違います。
| 比較項目 | 補助金・助成金 | 融資 |
|---|---|---|
| 返済 | 不要 | 必要(利息もかかる) |
| お金が入る時期 | 事業実施後の後払い | 契約後すぐ(事業実施の前) |
| 確実性 | 補助金は採択されないことがある | 審査に通れば計画どおり入る |
| 使い道 | 対象経費に限られる | 事業計画の範囲で比較的自由 |
| 税金 | 原則として益金(課税対象) | 借入金のため課税されない |
| 決算書への影響 | 営業外収益などに計上 | 負債に計上 |
| 実績として残るもの | 採択・事業実施の実績 | 返済実績(次の融資の土台) |
いちばん大きな違いは、お金が入るタイミングです。融資は事業の前にお金が入りますが、補助金は事業が終わった後に入ります。補助金を使うには、補助対象の経費をいったん全額立て替える資金が必要です。
申請から入金までの流れ
補助金の一般的な流れは次のとおりです。お金が入るのは最後の段階だという点を確認してください。
| 段階 | 内容 | お金の動き |
|---|---|---|
| 1. 公募・申請 | 公募要領を確認し、事業計画書などを作成して申請(電子申請が中心) | なし |
| 2. 審査・採択 | 審査を経て採択・不採択が通知される | なし |
| 3. 交付決定 | 交付申請を行い、交付決定を受ける | なし |
| 4. 事業の実施 | 交付決定後に発注・契約・支払いを行う | 全額を自社で支払う |
| 5. 実績報告・検査 | 支払いの証拠書類をそろえて報告し、検査を受ける | なし |
| 6. 補助金の確定・入金 | 補助金額が確定し、入金される | ここで初めて入金 |
注意したいのは、原則として交付決定の前に発注・契約した経費は補助の対象にならないことです。「採択されそうだから先に注文しておこう」とすると、補助金が受け取れなくなることがあります。また、支払いの証拠(見積書、発注書、請求書、振込の記録など)がそろっていないと、実績報告で対象外とされることもあります。
日頃から経理を整え、証拠書類を保存しておくことは、補助金の受給だけでなく、融資の審査や税務調査への備えにもなります。
資金繰りで失敗しない補助金の使い方
立て替え資金は融資で用意する
補助金の対象となる設備や広告の費用は、まず全額を自分で支払います。補助金が入るまでの数か月〜1年近くの間、その資金を手元から出しておけるかが問題です。
金融機関によっては、補助金の採択通知をもとに、入金までのつなぎ融資に応じてくれる場合があります。採択された事業計画は、融資の審査でも計画の裏付けとして説明材料になります。補助金と融資は対立するものではなく、組み合わせて使うものです。
補助金収入は「一時的な利益」と見られる
補助金を受け取った期は、決算書の利益が増えます。ただし、金融機関は格付けの際に、補助金のような一過性の収入を本業の稼ぐ力とは分けて見ることがあります。補助金で黒字になった決算書は、本業の実力とは評価されにくいと考えてください。融資の審査で問われるのは、あくまで本業で返済できるかどうかです。
受け取った年の税金も計画に入れる
補助金は原則として課税対象です。補助金で利益が増えた年は法人税も増えるため、入金額の全部を自由に使えるわけではありません。固定資産を取得した場合には圧縮記帳で課税を繰り延べられる場合がありますが、その分、将来の減価償却費が減ります。受け取る年度の税金まで含めて資金繰りを組みましょう。
補助金の申請支援をうたう業者のなかには、高額な成功報酬を求めたり、実態と違う申請を勧めたりするケースがあります。不正受給は返還や加算金だけでなく、刑事罰の対象にもなりえます。申請内容は、必ず自社の実態にもとづいたものにしてください。
創業期の資金調達での位置づけ
補助金・助成金は、返済がいらない魅力的な資金です。ただし、創業期の資金調達の中心にはなりません。私がお勧めしている順番は、
- 自己資金を貯め、資本金として入れる
- 日本政策金融公庫や制度融資で、事業に必要な資金を確保する
- 使える補助金・助成金を上乗せし、投資の負担を軽くする
という形です。融資は返済の実績を残すことで、次の融資の土台になります。補助金だけで事業を立ち上げても、金融機関との取引実績は残りません。創業期の資金調達手段の比較は創業時の資金調達方法の比較、公庫の審査の準備は日本政策金融公庫の創業融資で詳しく解説しています。
まとめ
- 創業時に使えるのは、国の補助金、自治体の創業助成、雇用関係の助成金、特定創業支援等事業の優遇
- 補助金は公募・審査・採択が必要。助成金は要件を満たせば原則受給できる
- どちらも後払い。立て替え資金は自己資金や融資で先に用意する
- 補助金は原則として課税対象。一過性の収入として、金融機関には本業の実力とは分けて見られる
- 資金繰りの主役は自己資金と融資。補助金・助成金は上乗せとして使う
クレフティでは、創業融資の計画づくりとあわせて、使える制度の確認や資金繰りの設計をご支援しています。スタートアップ・起業支援からご相談ください。
