融資・資金調達

銀行格付けを上げる方法|4つの評価分野ごとの具体策と、1年でできること・数年かけること

「銀行格付けを上げる方法を知りたい」。融資を受け続けたい経営者にとって、これほど切実なテーマはありません。格付けが上がれば、プロパー融資を受けやすくなり、金利や保証の条件もよくなります。逆に格付けが下がれば、どれだけ担当者が前向きでも、稟議は通りにくくなります。

この記事では、私の著書で解説している銀行格付けのモデルに沿って、どの分野を、どう改善すれば格付けが上がるのかを具体策で解説します。

この記事の結論
  • 著書のモデルでは、格付けは129点満点(安全性34点・収益性15点・成長性25点・返済能力55点)。正常先の目安は32点以上
  • 最も配点が大きいのは返済能力。債務償還年数を短くすることが最優先
  • 次に効くのが安全性。純資産を積み上げ、実態修正で差し引かれる科目をなくす
  • 1期で効く手(資産の整理、社長貸付の解消)と、数年かける手(利益の積み上げ)を分けて計画する

銀行格付けの仕組み:129点満点のモデル

銀行は決算書を受け取ると、財務指標を計算して会社を点数化します。点数の付け方は銀行ごとに異なり、公開もされていませんが、見ている観点は共通しています。著書のモデルでは、これを4分野・129点満点で整理しています。

分野配点何を見ているか
安全性34点自己資本比率や純資産の厚みなど、財務の安定度
収益性15点経常利益の水準など、稼ぐ力
成長性25点売上や利益の伸びなど、会社の勢い
返済能力55点債務償還年数など、借入を返す力
合計129点正常先の目安は32点以上

この表から、格付けを上げるための優先順位が見えてきます。返済能力だけで全体の4割強、安全性と合わせると7割近くになります。一方、多くの経営者が気にする「今期の利益」が直接効く収益性は15点にすぎません。

格付けの結果は、正常先・要注意先などの債務者区分につながります。区分の考え方は銀行融資の審査で見られるポイントで解説しています。

具体策1:返済能力(55点)を上げる

債務償還年数を短くする

返済能力の代表指標が債務償還年数です。

債務償還年数 =(借入金 − 現預金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)

著書のモデルでは、10年以内が健全、20年を超えると厳しい水準です。この式を見ると、改善の方向は3つしかありません。

改善の方向具体策
分子の借入金を減らす不要な資産・含み損のある資産を売却して返済する。遊休資産を処分する
分子から引く現預金を増やす利益を現預金として残す。過大な役員報酬や不要な支出を見直す
分母の返済原資を増やす本業の利益率を上げる。不採算の事業・取引から撤退する

計算例:資産の売却で何が変わるか

項目改善前不要資産を売却して返済した後
借入金3億円2億4,000万円
現預金4,000万円4,000万円
返済原資(経常利益+減価償却費−法人税等)1,300万円1,300万円
債務償還年数20.0年15.4年

利益が同じでも、使っていない資産を売って借入を減らすだけで、債務償還年数は大きく改善します(売却損益や、売却した資産から得ていた収益がない前提の単純化した例です)。私自身、融資が止まった時期に財務を立て直したときも、最初に手をつけたのは毀損した物件の売却でした。

現預金を厚くする

現預金は、債務償還年数の計算で借入金から差し引かれます。利益が出ても、そのお金が社長への貸付や不要な資産に化けてしまえば、評価は上がりません。お客さまの例では、不動産売買・賃貸業の会社で、中間申告の方法を見直して予定納税を減らし、期中の資金繰りに余裕を持たせたケースがあります。現預金を手元に残す工夫は、返済能力の評価に直結します。

具体策2:安全性(34点)を上げる

純資産を積み上げる

安全性で見られるのは、自己資本比率や純資産の厚みです。純資産を増やす方法は、基本的に「利益を出して税金を払い、残りを積み上げる」か「増資する」かです。

私は「払った税金の2倍、会社は強くなる」とお伝えしています。法人税等を払ったあとの利益は、利益剰余金として純資産に積み上がります。目先の税金を減らそうと利益を圧縮し続けた会社は、何年たっても純資産が育たず、格付けが上がりません。自己資本比率の目安は自己資本比率の目安と融資、純資産と融資の関係は純資産1億円の壁で解説しています。

実態修正で差し引かれる科目をなくす

銀行は決算書をそのまま点数化するとは限らず、実態のない資産を差し引いた「実態のバランスシート」で評価し直します。決算書上は純資産があっても、修正後は債務超過になっていることもあります。

差し引かれやすい科目対策
社長・関係会社への貸付金、仮払金返済してもらう、または役員報酬との関係を整理して解消する
回収の見込みが薄い売掛金回収を進め、回収できないものは決算で正しく処理する
売れない在庫処分し、評価を実態に合わせる
含み損のある有価証券・不動産保有目的を見直し、必要なら売却する

これらは1期で効果が出ることが多い改善策です。決算の前に、顧問税理士と一緒に勘定科目を棚卸ししてください。

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具体策3:収益性(15点)と成長性(25点)を上げる

本業の利益で稼ぐ

収益性で見られるのは、経常利益の水準などです。特別利益で一時的に利益が出ても、本業の稼ぐ力の評価にはつながりにくいと考えてください。価格の見直し、原価の管理、不採算の取引の整理など、経常的に利益が出る構造をつくることが大切です。

売上と利益を安定して伸ばす

成長性は、売上や利益の伸びを見る分野です。ここで注意したいのは、無理な売上の拡大は、売掛金や在庫を膨らませ、借入を増やし、かえって返済能力や安全性を下げることがある点です。成長性の点数だけを追うのではなく、利益とキャッシュを伴った成長を目指します。

自社の位置をつかむためのチェックリスト

格付けの点数は銀行から開示されないのが一般的ですが、決算書から次の項目を確認するだけでも、自社がどのあたりにいるかはおおよそつかめます。

チェック項目目安該当する分野
債務償還年数10年以内か(20年超は厳しい)返済能力
純資産プラスか、前期より増えているか安全性
実態修正後の純資産社長貸付・不良資産を引いてもプラスか安全性
経常利益黒字か、数期続いているか収益性
売上・経常利益の推移前期より伸びているか成長性
現預金月商の何か月分あるか、減り続けていないか返済能力・安全性

この表で「目安を満たしていない」項目が、改善の優先順位になります。特に、債務償還年数と実態修正後の純資産の2つは、格付けを大きく左右するため最初に確認してください。

数字以外の評価も見られている

格付けは決算書の定量評価が中心ですが、銀行は経営者の資質、事業の将来性、決算書の提出の早さ、説明の的確さといった定性面もあわせて評価しています。定量評価がボーダーライン上にあるとき、最後の判断を左右するのはこうした定性面です。決算書や試算表を早く出し、改善の取り組みを自分の言葉で説明できる経営者は、それだけで評価が上がります。

1期で効く手と、数年かける手

格付けを上げる取り組みは、効果が出るまでの時間で分けて計画すると進めやすくなります。

時間軸取り組み主に効く分野
決算前にできる社長貸付・仮払金の整理、不要在庫の処分、遊休資産の売却安全性・返済能力
1期で効く役員報酬や経費の見直し、現預金を残す資金繰りの工夫返済能力
数年かける利益を出して納税し純資産を積み上げる、本業の利益率の改善安全性・収益性・成長性

決算が締まってからでは、打てる手はほとんどありません。決算の3か月前には試算表で着地を見込み、何ができるかを顧問税理士と相談しておくことをおすすめします。

格付けを上げたら、銀行に伝える

格付けは銀行が決算書から計算するものですが、改善の中身を伝えることにも意味があります。「不要な資産を売却して借入を減らした」「社長への貸付金を解消した」といった取り組みを、決算書と一緒に説明すれば、担当者は前向きな稟議を書きやすくなります。

改善が数字で示せたら、それは金利や保証条件を見直してもらうよい機会でもあります。進め方は融資の金利交渉のしかたや経営者保証を外す方法で解説しています。

まとめ

  • 著書のモデルでは格付けは129点満点。配点の大きい返済能力(55点)と安全性(34点)を優先して改善する
  • 返済能力は、借入金を減らす・現預金を増やす・返済原資を増やすの3方向で債務償還年数を短くする
  • 安全性は、利益を出して納税し純資産を積み上げること、実態修正で差し引かれる科目をなくすこと
  • 決算前にできる手、1期で効く手、数年かける手を分けて計画する
  • 改善したら、決算書と一緒に銀行へ説明する

クレフティでは、決算書をもとにした格付けの試算と、改善計画づくり、銀行への説明まで、融資・資金調達のご支援として対応しています。初回30分は無料でご相談いただけます。

よくある質問

銀行格付けは、どのくらいの期間で上げられますか?
格付けは主に決算書で決まるため、改善が反映されるのは次の決算からです。社長への貸付金の解消や不要な資産の整理などは1期で効果が出ますが、純資産の積み上げや利益の安定は数年がかりになります。すぐ効く手と時間のかかる手を分けて計画するのが現実的です。
自社の格付けを銀行に教えてもらうことはできますか?
格付けの点数そのものは開示されないのが一般的です。ただし、決算書から主要な指標を計算すれば、おおよその位置は推測できます。担当者との面談で「御行から見て、当社の財務で改善すべき点はどこか」と聞くと、評価のポイントを教えてもらえることもあります。
格付けを上げるために、利益を多く見せてもいいですか?
いけません。売上の前倒しや費用の先送りで利益を良く見せても、翌期に反動が出るうえ、粉飾と判断されれば信頼を失います。銀行は実態に修正したうえで評価するため、見かけの数字を整えても格付けは上がりません。正しい決算のうえで、財務の中身を改善することが唯一の方法です。

※本記事は2026年10月17日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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