「合同会社は銀行から融資を受けにくいと聞いた。株式会社にしておけばよかったのか」。設立費用の安さから合同会社を選んだ方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
結論から言うと、合同会社だから融資を受けにくい、ということは制度上ありません。日本政策金融公庫の創業融資も、信用保証協会付きの融資も、株式会社と同じ条件で申し込めます。ただし、合同会社に多い「特徴」が、銀行の審査で不利に働くことはあります。この記事では、その理由と対策を、20行を超える金融機関と折衝してきた税理士事務所の目線で解説します。
- 融資の可否は会社形態ではなく、事業計画と決算書の中身で決まる。合同会社でも融資は受けられる
- 「受けにくい」と言われる正体は、資本金の少なさ・情報の見えにくさ・出資者の退社リスクなど、合同会社に多い特徴
- 対策は、資本金を厚めにする、決算書と計画を自分から開示する、出資者を絞ること
- 長期的には、利益を出して純資産を積み上げることが、形態に関係なくいちばん効く
合同会社でも融資は受けられる
まず前提として、主な融資制度で会社形態による差はありません。
| 融資の種類 | 合同会社の扱い | 審査で主に見られること |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫の創業融資 | 株式会社と同じ | 自己資金、事業経験、計画の根拠、個人の信用情報 |
| 信用保証協会付きの制度融資 | 株式会社と同じ | 事業計画、自己資金、業歴、決算内容 |
| 銀行のプロパー融資 | 株式会社と同じ | 決算書にもとづく格付け、返済能力、純資産、担保 |
実際、不動産投資家の資産管理会社には合同会社が多く、金融機関も合同会社との取引には慣れています。合同会社で物件を取得し、継続して融資を受けている例は珍しくありません。
株式会社と合同会社の違い全体については、株式会社と合同会社の違いで比較しています。
「受けにくい」と言われる5つの理由
それでも「合同会社は受けにくい」という声があるのは、合同会社という形態に、次のような特徴が重なりやすいからです。
1. 資本金が少ないことが多い
合同会社は設立費用を抑えたい方が選ぶことが多く、資本金も数万円〜数十万円と少額で設立されるケースがよくあります。資本金が少ないと、創業直後の赤字ですぐに債務超過(純資産がマイナス)になります。債務超過は金融機関の格付けで大きなマイナスです。これは形態の問題ではなく、資本の厚みの問題です。
2. 外から情報が見えにくい
株式会社には決算公告の義務がありますが、合同会社にはありません。金融機関にとっては、取引のない合同会社の財務内容を外部から確認する手段が限られます。初めての相手には、どうしても慎重になります。
3. 出資者が退社すると、お金が出ていく可能性がある
合同会社の社員(出資者)は、退社するときに持分の払戻しを請求できます。複数の出資者がいる合同会社では、出資者の退社によって会社の資本が流出するリスクがあります。金融機関の審査担当者のなかには、この点を気にする人もいます。
4. 担当者が形態に慣れていない
合同会社が増えたのは比較的最近のことです。地域や業界によっては、担当者自身が合同会社の取引経験が少なく、「株式会社のほうが安心」という感覚が残っていることがあります。
5. 小規模・設立間もない会社が多い
合同会社は小規模で始める会社が多いため、「合同会社=業歴が浅く規模が小さい会社」と見られやすい面があります。これも形態ではなく、業歴と規模の問題です。
銀行が本当に見ているもの
銀行は融資先を「格付け」し、その結果で融資の可否や条件を決めています。格付けの材料は決算書です。著書のモデルでは、格付けを129点満点(安全性34点・収益性15点・成長性25点・返済能力55点)で整理しており、配点が最も大きいのは返済能力です。どの項目にも「株式会社か合同会社か」という欄はありません。
返済能力を測る代表的な指標が債務償還年数です。
一般に10年以内が健全、20年を超えると厳しいと判断されやすい水準です。つまり、合同会社であっても、利益を出し、借入に見合った返済力があれば、評価は株式会社と変わりません。
合同会社が融資で不利にならないための対策
資本金は「事業に必要な額」を入れる
設立費用を抑えたいからといって、資本金まで最小限にする必要はありません。創業融資では、自己資金の額が審査の重要な要素です。手元の自己資金を資本金として入れておけば、純資産が厚くなり、債務超過のリスクも下がります。ただし、設立時の資本金が1,000万円以上になると消費税の免税が使えなくなる点には注意してください。
決算書と事業計画を、自分から開示する
情報が見えにくいことへの不安は、こちらから開示すれば解消できます。決算書、試算表、資金繰り表、事業計画を自分から持っていき、数字の背景を説明する。これは合同会社に限らず、金融機関との信頼関係をつくる基本です。創業融資の準備については日本政策金融公庫の創業融資で詳しく解説しています。
出資者を絞り、定款で整理しておく
出資者が多い合同会社は、退社時の払戻しや意思決定の複雑さが論点になります。融資を受ける予定があるなら、出資者は必要最小限にし、退社や持分の扱いを定款で整理しておくと、説明がしやすくなります。
代表者の個人の信用も整えておく
創業期の会社は実績がないため、代表者個人の信用情報や資産背景も見られます。クレジットカードやローンの延滞がないか、個人の税金を納めているかは、会社形態に関係なく確認されます。
合同会社の決算書で、銀行から質問されやすい点
合同会社の決算書を金融機関に出すと、株式会社とは少し違う角度から質問を受けることがあります。事前に答えを用意しておくと、面談がスムーズに進みます。
| 質問されやすい点 | 金融機関が気にしていること | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 出資者(社員)の構成 | 退社時の払戻しで資金が流出しないか | 社員の一覧と出資額、退社の可能性 |
| 業務執行社員への報酬 | 報酬の水準が利益を圧迫していないか | 報酬の決め方と、会社に残す利益の考え方 |
| 代表社員との貸し借り | 会社のお金が個人に流れていないか | 役員貸付金・役員借入金の発生理由と解消の予定 |
| 利益の分配 | 利益が社外に出て純資産が積み上がらないのではないか | 当面は内部留保を優先する方針 |
| 資本金の額 | 赤字ですぐに債務超過にならないか | 増資や利益の積上げの計画 |
特に注意したいのは代表社員への貸付金です。会社のお金を代表者個人が使っている状態は、株式会社でも合同会社でも金融機関の評価を大きく下げます。合同会社は意思決定が簡単なぶん、会社と個人のお金の区別があいまいになりやすいので、創業期から口座と経費の線引きを徹底してください。
合同会社では、定款で利益の分配方法を自由に決められます。これは合同会社の長所ですが、融資を受ける段階では「利益を社外に出さず、会社に残していく」という方針を示すほうが、金融機関には安心材料になります。
それでも株式会社を検討すべきケース
融資だけを考えるなら、合同会社のままで問題ありません。ただし、次のような場合は株式会社への組織変更を検討します。
- ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受ける予定がある
- ストックオプションを使って人材を集めたい
- 将来IPOを目指す
- 大手企業との取引で、株式会社であることを求められる
組織変更には官報公告と債権者保護手続きが必要で、1〜2か月程度の期間とコストがかかります。資金調達の方針が固まった段階で、早めに判断してください。
まとめ
- 合同会社でも、公庫・保証協会付き融資・プロパー融資は株式会社と同じ条件で申し込める
- 「受けにくい」の正体は、資本金の少なさ、情報の見えにくさ、出資者の退社リスクなどの特徴
- 資本金を厚めに入れる、決算書と計画を自分から開示する、出資者を絞ることで不利は解消できる
- 銀行の格付けに会社形態の欄はない。見られるのは返済能力と純資産
- 出資・ストックオプション・IPOを目指すなら、その時点で株式会社への変更を検討
「払った税金の2倍、会社は強くなる」。利益を出して納税し、残ったお金を純資産として積み上げることが、合同会社でも株式会社でも、融資を受け続けるための土台です。保証協会付き融資からプロパー融資への道筋は保証協会付き融資とプロパー融資の違いで解説しています。合同会社の融資・資金調達のご相談は、融資・資金調達のサポートまたはスタートアップ・起業支援からどうぞ。
