融資・資金調達

赤字決算でも融資は受けられる?銀行が見る「赤字の中身」と、融資を受けるための準備

「今期は赤字決算になってしまった。これで融資は受けられなくなるのだろうか」。決算が近づくと、こうしたご相談が増えます。結論から言うと、赤字決算でも融資を受けられるケースはあります。銀行は「赤字かどうか」だけで判断しているわけではないからです。

ただし、何の準備もせずに赤字の決算書を持っていけば、結果は厳しくなります。この記事では、銀行が赤字の会社のどこを見ているのか、赤字でも融資を受けるために何を準備すればよいかを解説します。

この記事の結論
  • 銀行が見ているのは赤字そのものより、赤字の中身(原因・一時的か・債務超過か・返済原資はあるか)
  • 「1期だけ」「原因が明確」「純資産が残っている」「減価償却前で黒字」なら、融資の可能性は十分ある
  • 赤字の決算書は、原因と改善策を書いた説明資料とセットで、自分から早めに持っていく
  • 赤字を避けるために数字を操作するのは絶対にNG。正しく出して、説明で信頼を得る

銀行は「赤字の中身」を見ている

同じ赤字でも、銀行の評価は大きく分かれます。ポイントは次の4つです。

確認ポイント評価されやすい赤字厳しく見られる赤字
原因設備更新、一時的な特別損失、大口取引先の倒産など、理由がはっきりしている原因がわからない、売上が構造的に落ちている
期間1期だけ2期・3期と連続している
純資産赤字を出しても十分に残っている赤字で債務超過になった、またはすでに債務超過
返済原資減価償却前の利益(キャッシュフロー)はプラス減価償却前でもマイナスで、返済の原資がない

「減価償却前で黒字か」は大きな分かれ目

銀行が返済能力を見るときは、損益計算書の利益に減価償却費を足し戻して考えます。減価償却費はお金の出ていかない費用なので、帳簿上は赤字でも、実際には返済に回せるお金が生まれていることがあるからです。

たとえば、経常利益がマイナス300万円でも、減価償却費が800万円あれば、返済に回せる原資はおおむね500万円あると見ることができます(法人税等の負担がない場合)。逆に、減価償却前でもマイナスであれば、借入の返済は現預金を取り崩すか、新たな借入でまかなうしかない状態です。減価償却費と銀行の見方の関係は、減価償却費が多い会社は危ない?で詳しく解説しています。

債務超過かどうかは、さらに大きな分かれ目

純資産がマイナス、つまり債務超過になると、銀行の評価は一段と厳しくなります。資産をすべて売っても負債を返しきれない状態だからです。赤字が続いて債務超過に近づいている場合は、融資の相談と並行して、財務の立て直しを急ぐ必要があります。

社長からの借入金の扱い

中小企業では、社長個人が会社にお金を貸していることがよくあります。返済を急がない社長からの借入金は、銀行が審査のうえで実質的な自己資本に近いものとして評価することがあります。ただし扱いは金融機関や状況によって異なるため、「社長借入があるから大丈夫」と決めつけず、担当者に確認しながら説明しましょう。

赤字のパターン別|銀行の受け止め方

実際のご相談では、赤字にもいくつかの典型的なパターンがあります。自社がどれに近いかを把握すると、銀行への説明の組み立て方が見えてきます。

パターン1:一時的な損失による赤字

設備の除却損、取引先の倒産による貸倒損失、災害による損失など、特別損失が原因の赤字です。本業の利益(営業利益・経常利益)は黒字で、最終利益だけが赤字になっているなら、銀行は比較的落ち着いて受け止めます。説明の中心は「本業は稼げている」「同じ損失は来期は発生しない」の2点です。

パターン2:先行投資による赤字

新店舗の出店、新規事業の立ち上げ、人員の採用などで、費用が先に出て売上が後からついてくる赤字です。投資の中身と、いつから回収できるかを数字で示せれば、前向きな赤字として理解されることもあります。ただし、計画どおりに回収できなかったときは、次の決算で厳しく見られます。計画は控えめに立てておくのが無難です。

パターン3:本業の悪化による赤字

売上の減少や原価の上昇で、本業そのものが赤字になっているパターンです。銀行が最も警戒するのはこの赤字で、「一時的か、構造的か」を厳しく問われます。値上げ、取引条件の見直し、固定費の削減など、具体的な改善策と、その効果の数字を示すことが欠かせません。

パターン4:役員報酬などによる赤字

利益が出そうなところで役員報酬を大きく上げるなどして、結果的に赤字になっているパターンです。銀行は役員報酬を足し戻して実質の収益力を見ることもありますが、会社にお金が残らず純資産も増えないため、格付けの面では不利です。利益を会社に残す方針に切り替えることが、融資を受け続けるうえでは近道です。

パターン銀行の受け止め方説明の中心
一時的な損失比較的落ち着いて受け止める本業は黒字、来期は発生しない
先行投資計画しだいで前向きに理解される投資の中身と回収時期
本業の悪化最も警戒される構造的か一時的か、改善策と効果
役員報酬など実質の収益力は見るが、純資産が育たない利益を会社に残す方針

赤字の決算書は、こう説明する

赤字の決算書を出すときに、最も大切なのは自分から、早く、具体的に説明することです。

説明資料に入れる4つの項目

  1. 赤字の原因:何が、いくら、なぜ悪化したのか(「売上が落ちた」ではなく「主要取引先A社からの受注が年間○○万円減った」まで具体的に)
  2. 一時的か継続的か:同じ要因が来期も続くのか、今期限りなのか
  3. 改善策:すでに打った手と、これから打つ手。数字の根拠つきで
  4. 来期の見通し:月別の売上・利益の計画と、黒字に戻る時期

この4点がA4で1〜2枚にまとまっていれば、銀行の担当者はそれを稟議書の材料として使えます。逆に、決算書だけが届けば、担当者は「業績が悪化した会社」として処理するしかありません。

提出は遅らせない

赤字の決算書を出したくない気持ちから、提出を遅らせる経営者は少なくありません。しかし、提出の遅れは「何か隠しているのでは」という疑いを生み、赤字そのものより信頼を損ないます。決算書の提出前の準備については、決算書を銀行に出す前にやるべき3つのチェックも参考にしてください。

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赤字でも融資を受けるための準備

1. 資金繰り表で「いつ、いくら足りないか」を示す

赤字の会社が融資を申し込むとき、銀行が最も気にするのは「このお金は何に使われ、どうやって返ってくるのか」です。月別の資金繰り表をつくり、いつ、いくら資金が不足するのか、借りたお金でどう乗り切るのかを示してください。「足りなくなりそうだから、とりあえず借りたい」では、審査は通りません。

2. 経営改善の計画を数字で示す

赤字からの回復の道筋を、売上・原価・経費・利益の計画として数字で示します。コスト削減、価格の見直し、不採算部門の撤退など、具体的な施策と、それぞれが利益にどれだけ効くかを書きます。計画の書き方は融資のための事業計画書の書き方が参考になります。

3. 使える制度を把握する

民間の銀行のプロパー融資が難しくても、信用保証協会の保証付き融資や、政府系金融機関の融資が選択肢になることがあります。業況が悪化している事業者向けの制度が用意されていることもありますが、対象や要件は時期や制度で変わるため、最新の要件を取引銀行や各機関に確認してから検討してください。

4. 資金調達の前に、財務を立て直す手を打つ

赤字が続いて財務が傷んでいる場合、融資を申し込む前に、まずバランスシートを立て直す手を打つほうが近道になることがあります。

打ち手財務への効果
不要な資産・含み損のある資産の売却借入を減らし、実態のバランスシートを健全にする
経費の見直し・不採算事業の整理来期の利益を確保し、赤字の連続を止める
社長への貸付金・仮払金の解消銀行が資産から差し引く科目をなくす
増資純資産を直接厚くする

私自身も2019年に複数の銀行から融資を断られた際、毀損した物件の売却と納税、現預金の積み増しから財務を立て直しました。融資を「お願いする」前に、銀行が貸せる状態に自社を戻すという順番が大切だと実感しています。

やってはいけないこと

赤字を避けたいあまり、次のような対応をとる会社がありますが、いずれも逆効果です。

  • 売上の前倒し・費用の先送りで黒字に見せる:翌期に反動が出るうえ、粉飾と判断されれば取引そのものを失います
  • 複数の金融機関に同時に、説明なしで申し込む:信用情報や銀行間の情報から、資金繰りに窮していると受け止められます
  • 取引のない金融機関にいきなり駆け込む:赤字の決算書を初めて見る金融機関は、判断の材料が決算書しかありません。まずは、これまでの取引で会社をよく知っている既存の銀行に説明するのが順番です
  • 返済を止めてから相談する:延滞が起きてからでは、取れる選択肢が大きく減ります。苦しくなりそうな段階で、早めに相談してください

まとめ

  • 赤字決算でも、原因が明確で一時的、純資産が残り、減価償却前で黒字なら、融資の可能性は十分ある
  • 銀行が厳しく見るのは、原因不明・連続赤字・債務超過・返済原資なし
  • 赤字の決算書は、原因・改善策・来期の見通しを添えて、自分から早めに出す
  • 資金繰り表と改善計画で「何に使い、どう返すか」を示す
  • 数字の操作は絶対にしない。財務の立て直しと説明で信頼を取り戻す

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よくある質問

1期だけ赤字になりました。融資はもう受けられませんか?
1期だけの赤字で、原因がはっきりしていて、純資産が十分に残っていれば、融資を受けられる可能性は十分にあります。重要なのは、赤字の原因と来期に黒字へ戻る道筋を、決算書の提出と同時に自分から説明することです。
赤字のときは、日本政策金融公庫と銀行のどちらに相談すべきですか?
状況によります。取引のある銀行や信用金庫があれば、まずはそこに決算の内容を説明したうえで相談するのが基本です。政府系金融機関や信用保証協会の保証付き融資も選択肢になりますが、どの制度が使えるかは業況や資金使途で変わるため、制度の要件を確認しながら組み合わせを考えます。
赤字を避けるために、決算書の数字を良く見せてもいいですか?
いけません。売上の前倒しや費用の先送りなどで数字を良く見せると、翌期以降に必ずひずみが出ますし、粉飾と判断されれば取引そのものを失います。赤字は赤字として正しく出し、原因と改善策を説明するほうが、長い目で見て融資を受け続けられます。

※本記事は2026年10月17日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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