会社が持っている土地に、社長個人が自宅を建てる。関係会社が店舗や賃貸マンションを建てる。第三者に建物用地として貸す。法人が土地を建物所有目的で貸すと、借地人は借地権という価値のある権利を手に入れます。このとき権利金を受け取らなければ、法人税では権利金の認定課税が問題になります。
個人の地主が同族会社に土地を貸す場合の論点(底地の相続税評価、借地権の有無が争われた裁決事例)は地代収入・底地の税務と借地権の認定課税で扱いました。この記事では、地主が法人の場合に絞って、認定額の計算、相当の地代と無償返還届出の使い分け、受け取った権利金の計上時期、決算書と銀行の見え方を整理します。
- 権利金を収受する慣行のある地域で、権利金を受け取らず、地代も相当の地代(更地価額のおおむね年6%)に満たないと、権利金の認定課税が行われる(法人税基本通達13-1-3)
- 認定された金額は、借地人が役員・使用人なら給与、それ以外なら寄附金などとして扱われる
- 認定を避ける方法は、①相当の地代を受け取る(地代の改訂方法の届出もする)、②契約書で無償返還を定め「土地の無償返還に関する届出書」を連名で出す
- 無償返還届出をしても、地代が相当の地代に満たなければ差額は毎期贈与として扱われる
- 受け取った権利金は益金。名目を「敷金」としても、返還不要の権利金と認められれば権利が確定した期の収益とされた裁決がある
法人が土地を貸すときの基本:権利金・地代・借地権
建物の所有を目的とする借地権は、借地借家法で強く保護されます。いったん設定すると、地主は簡単には土地を返してもらえず、土地の価値の相当部分が借地人に移ります。そのため、借地権の設定に際しては権利金を受け取る慣行がある地域が多く、相続税の路線価にも地域ごとの借地権割合が定められています。
法人税法施行令137条は、借地権の設定等により土地を使用させた法人が、権利金を受け取らなくても相当の地代を受け取っていれば、所得の計算上、土地の使用の対価として正常な取引条件で行われたものとする、と定めています。裏を返せば、権利金も相当の地代も受け取らなければ、正常な取引ではないとして、受け取るべきだった権利金が問題になります。
| 貸し方 | 法人地主の課税関係 | 借地人側 |
|---|---|---|
| 通常の権利金を受け取る | 権利金は益金。土地の時価が2分の1以上下がる場合は帳簿価額の一部を損金算入(法人税法施行令138条1項) | 借地権を資産計上 |
| 権利金なし・相当の地代 | 認定課税なし(法人税法施行令137条) | 借地権の受贈益なし |
| 権利金なし・相当の地代未満・無償返還届出なし | 権利金の認定課税(法人税基本通達13-1-3) | 法人なら受贈益、役員なら給与所得 |
| 権利金なし・無償返還届出あり | 権利金の認定なし。ただし相当の地代との差額は毎期贈与(13-1-7) | 差額分の経済的利益 |
| 駐車場・資材置場など更地のまま、仮設建物 | 権利金の認定なし(13-1-5)。通常の地代に満たない差額は贈与 | — |
権利金の認定課税:計算と相手ごとの扱い
認定額の計算
法人税基本通達13-1-3は、相当の地代に満たない地代しか受け取っていないときは、無償返還届出をしている場合を除き、次の算式で計算した金額から実際に受け取った権利金などを差し引いた額を、借地人に贈与したものとするとしています。
算式で計算した金額が通常収受すべき権利金の額を超える場合は、通常の権利金の額にとどめるとされています。たとえば、地代をまったく受け取っていなければ、算式上は更地価額の全額ですが、通常の権利金(借地権割合に応じた金額など)が上限になります。
借地人が誰かで扱いが変わる
| 借地人 | 地主法人の側 | 借地人の側 |
|---|---|---|
| 役員・使用人 | 給与の支給(役員なら定期同額給与などに当たらず損金不算入となる可能性。源泉徴収の問題も) | 給与所得 |
| 関係会社・第三者の法人 | 寄附金(損金算入限度額を超える部分は損金不算入) | 受贈益(益金) |
| 法人による完全支配関係がある法人間 | 寄附金は全額損金不算入 | 受贈益は益金不算入 |
| 個人(役員・使用人以外) | 寄附金 | 一時所得などの問題 |
いずれの場合も、現金は動いていないのに課税だけが生じるのが認定課税の怖いところです。とくに社長個人に貸す場合は、役員給与として法人側で損金にならず、社長側では所得税がかかる、という二重の負担になりかねません。
認定を避ける2つの方法
①相当の地代を受け取る
法人税基本通達13-1-2は、相当の地代を土地の更地価額に対して「おおむね年8%程度」としていますが、個別通達「法人税の借地権課税における相当の地代の取扱いについて」(平成元年3月30日直法2-2)で、当分の間「年6%」と読み替えられています。更地価額は、通常の取引価額のほか、財産評価基本通達の例により計算した価額(路線価など)やその過去3年間の平均額によることも認められています。
相当の地代を受け取ることにしたときは、その後の地代の改訂方法を契約書で定め、借地人と連名で届け出ることとされています(法人税基本通達13-1-8、「相当の地代の改訂方法に関する届出書」)。
| 改訂方法 | 内容 | 届出がない場合 |
|---|---|---|
| (1) 地価の上昇に応じて改訂する | 土地の価額が上がれば、地代を相当の地代に順次引き上げる。おおむね3年以下ごとに見直す | — |
| (2) (1)以外の方法 | 地代を据え置くなど | 届出がなければ(2)を選択したものとされる |
(1)を選ぶと借地人に借地権の価値が生じにくく、(2)では地価上昇とともに借地人側に借地権の価値が徐々に移っていくと考えられています。将来の返還や相続のときの扱いに関わるため、どちらを選ぶかは最初に決めておく必要があります。なお、相当の地代を受け取っていた後に地代を引き下げると、相当の理由がない限り、その時点で権利金の認定が行われることがあります(13-1-4)。
②無償返還届出を出す
法人税基本通達13-1-7は、借地権の設定等に係る契約書で将来借地人が土地を無償で返還することを定め、その旨を借地人と連名の書面で遅滞なく所轄税務署長に届け出たときは、権利金の認定を行わないとしています(様式は「土地の無償返還に関する届出書」)。
ただし、無償返還届出は「地代をいくらにしてもよい」という届出ではありません。実際の地代が相当の地代に満たない場合は、その差額を借地人に毎期贈与したものとして扱われます(タックスアンサーNo.5730)。相当の地代は、この場合もおおむね3年以下ごとに見直すこととされています。使用貸借(地代なし)で無償返還届出をした場合も同様です。
| 比較 | 相当の地代 | 無償返還届出 |
|---|---|---|
| 権利金の認定 | なし | なし |
| 地代の水準 | 更地価額のおおむね年6% | 自由だが、相当の地代との差額は毎期贈与として扱われる |
| 借地人の負担 | 地代が重い(地価の高い地域ほど) | 地代は抑えられるが、差額の認定課税の問題が残る |
| 返還時 | 改訂方法により、立退料等の扱いが変わる(13-1-15) | 無償返還が前提。立退料を受け取らなくても贈与とされない(13-1-14) |
| 相続税(地主が個人の場合) | 底地は自用地の80%など | 底地は自用地の80%(賃貸借)など |
実務では、関係会社や役員との土地の貸し借りで、地代の水準を固定資産税の数倍程度に設定し、無償返還届出を出しておく例も見られます。その場合でも、差額の扱いが法人税・所得税でどうなるかを、借地人ごとに確認しておく必要があります。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る公表裁決事例
令和2年12月15日裁決:「敷金」の名目でも返還不要なら権利金、計上時期は地上権設定の時
事案:土地の造成・売買・賃貸などを行う法人が、太陽光発電設備の所有を目的として、所有地に地上権を設定する契約を結びました。当初の基本合意書では、対象地の利用権は賃借権で、受け取る金員は返還を要する「敷金」とされていましたが、その後の地上権設定契約書では、返還を要しない「権利金」に変更されていました。法人はこの金員を収益に計上せず、税務調査では「返還を要する敷金として預かったもの」「契約は通謀虚偽表示で無効」などと主張しました。
判断:審判所は、契約書の記載が返還不要の権利金に変更された経緯や、実際に金員が支払われていることから、この金員は地上権設定の対価である権利金と認め、地上権設定登記がされた日に収入すべき権利が確定したとして、その日の属する事業年度の益金に算入すべきだとしました。調査開始後に作成された合意書や、指摘後の返金は、結論を左右しないとされています。また、代表者が権利金を収益に計上すべきことを認識しながら顧問税理士に事実と異なる説明をしていたとして、この部分は重加算税の対象とされています(土地の売却収益の帰属など他の争点を含め、裁決全体では原処分の一部が取り消されています)。
確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(令和2年12月15日裁決)
この事例から読み取れるのは、名目ではなく、返還の要否と契約の実態で収益かどうかが判断されること、そして計上時期は権利が確定した時(この事例では地上権の設定登記の日)とされたことです。権利金を受け取ったら、その期の益金として正しく計上し、記録を残しておくことが基本です。
平成27年3月25日裁決:相当の地代で同族会社に貸すと、株価に20%が乗る
事案:個人が、自分が同族関係者となっている同族会社に、相当の地代を受け取って土地を貸していました(会社は借地上に共同住宅を建てて賃貸)。その個人から会社の株式の贈与を受けた子は、株式の評価上、会社の借地権を零として申告しました。
判断:審判所は、会社の地代は自用地価額の3年平均に対して年6%程度を上回り相当の地代に当たると認めたうえで、相当地代通達6の注書きによる取扱い(自用地価額の20%を借地権相当額として会社の純資産価額に算入する)は、相続だけでなく、相当程度年下の推定相続人に株式を贈与する場合にも及ぶと判断しました。ただし、会社は借地上に共同住宅を建てて賃貸しているため、純資産価額に算入する借地権は貸家建付借地権として評価すべきだとして、原処分の一部を取り消しています。
確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(平成27年3月25日裁決)
地主が法人の場合でも、借地人の会社とあわせてグループ全体で株主が同じであれば、どちらの会社に借地権の価値が帰属するかは、株価や将来の組織再編に影響します。土地の貸し借りは、法人税だけでなく、株主の相続・贈与まで見通して設計することが大切です。
会計上の扱いと決算書の表示、銀行からの見え方
決算書の表示
税務上は、権利金・地代が益金に算入されるか、認定課税で贈与(寄附金・給与)が生じるかが論点です。一方、決算書の表示は、企業会計の基準、すなわち一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って判断します。法人税法22条4項も、益金・損金は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算するとしています。
- 地代:不動産賃貸業を営む法人なら売上高に表示するのが自然。本業が別にあり遊休地を貸しているだけなら営業外収益とする考え方もある
- 権利金:継続的な営業活動の一部として受け取るなら売上高、臨時・多額で本業と関係が薄いものは特別利益とする考え方もある
- 認定課税:会計上は取引がないため仕訳をせず、法人税の申告書で加算・減算する(申告調整)のが一般的
どの区分にできるかは取引の実態次第です。顧問税理士・会計の専門家と検討してください。
銀行からの見え方
| 見られる点 | 法人が土地を貸すときに起きること |
|---|---|
| 担保価値 | 借地権を設定した土地(底地)は、担保評価が大きく下がる。既存の借入れの担保になっている土地なら、事前に銀行と協議が必要 |
| 収益力 | 相当の地代は利回りとしては安定収入。地代の水準が低いと、土地の収益力が低く見える |
| 認定課税 | 現金の入らない課税が生じると、納税資金が流出し現預金が減る |
| 関係者取引 | 役員や関係会社への低廉な貸付けは、銀行から「会社の資産が外に流れている」と見られる |
著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で計算し、10年以内を健全の目安としています。認定課税は利益を生まずに税金だけを発生させるため、債務償還年数にも現預金にもマイナスに働きます。役員や関係会社との取引は、条件と根拠を文書で残し、銀行にも説明できる状態にしておきたいところです。
実務のチェックポイント
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 使用目的 | 建物所有目的か、駐車場・資材置場など更地利用か(13-1-5) |
| 権利金の慣行 | その地域に権利金の授受の慣行があるか(路線価図の借地権割合も参考) |
| 地代の水準 | 相当の地代(更地価額のおおむね年6%)か。更地価額の算定根拠(路線価・3年平均) |
| 届出 | 相当の地代なら「相当の地代の改訂方法に関する届出書」、無償返還なら「土地の無償返還に関する届出書」を連名で遅滞なく提出したか |
| 地代差額 | 無償返還届出で地代が相当の地代未満なら、差額の贈与の扱いを借地人ごとに確認したか |
| 見直し | 相当の地代をおおむね3年以下ごとに見直しているか。地代の引下げは相当の理由があるか |
| 権利金の計上 | 受け取った権利金を、権利が確定した期の益金に計上しているか。名目と実態は一致しているか |
| 担保 | 底地になる土地に既存の担保がある場合、銀行と事前に協議したか |
物件を会社と個人の間で移す方法や、資産管理会社の活用もあわせて検討する場合は、個人から法人へ物件を移すときの税金や資産管理法人のメリット・デメリットも参考にしてください。
まとめ
- 法人が建物所有目的で土地を貸すとき、権利金も相当の地代も受け取らないと、権利金の認定課税(13-1-3)が問題になる
- 認定額は「更地価額 ×(1-実際の地代 ÷ 相当の地代)」から実際の権利金を控除した額。借地人が役員なら給与、法人なら寄附金など
- 認定を避ける方法は、相当の地代(年6%程度)と改訂方法の届出、または無償返還の定めと連名の届出。無償返還届出でも、地代が相当の地代未満なら差額は毎期贈与
- 受け取った権利金は益金。令和2年12月15日裁決では、「敷金」の名目でも返還不要の権利金と認められ、地上権設定登記の日の属する期の益金とされた
- 底地は担保価値が下がる。銀行との協議と、株主の相続・贈与まで見通した設計が必要
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