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地代収入・底地の税務と借地権の認定課税|個人地主と同族会社の土地貸し、相当の地代・無償返還届出と裁決事例

建物を建てるために土地を貸して受け取る地代収入は、金額が安定している反面、税務上の論点が意外に多い収入です。所得区分や消費税だけでなく、相続のときには底地(貸宅地)の評価が、そして自分の会社に土地を貸すときには借地権の認定課税が問題になります。

とくに注意が必要なのは、個人の地主が、自分や家族が株主の同族会社に土地を貸し、会社がその上に建物を建てるケースです。権利金を受け取らない、地代も低い、契約書もない。この状態を放置すると、何十年も後の相続のときに「借地権があるのか、ないのか」で争いになります。この記事では、地代収入の基本と、底地の評価、借地権の認定課税の仕組みを、公表裁決事例と決算書・銀行の見え方から整理します。

この記事の結論
  • 地代収入は、個人は不動産所得、法人は益金。土地の貸付けは消費税が原則非課税(1か月未満・駐車場など施設の貸付けは課税)
  • 権利金が土地の時価の2分の1を超えるような借地権の設定は、個人では譲渡所得として扱われる
  • 権利金を取る慣行のある地域で、権利金も相当の地代も受け取らずに建物所有目的で貸すと、借地権の認定課税の問題が生じる。回避の方法は「相当の地代」か「無償返還届出」
  • 底地の相続税評価は、通常は自用地価額-借地権価額。相当の地代や無償返還届出がある場合は自用地の80%になる
  • 公表裁決事例では、契約書や届出の有無、地代の水準、利用の実態から、借地権の有無が判断されている

地代収入の税務:個人と法人の違い

所得区分と計上時期

建物の所有を目的として土地を貸し、毎月・毎年受け取る地代は、個人なら不動産所得、法人なら益金です。個人の場合、地代の収入計上時期は原則として契約上の支払日で、家賃と同じ考え方です(家賃の計上時期は家賃収入の計上時期を参照)。

注意したいのは、借地権を設定するときに受け取る権利金などの一時金です。国税庁タックスアンサーNo.3111によると、権利金は原則として不動産所得ですが、建物や構築物の全部の所有を目的とする借地権の設定で、権利金などが土地の時価の2分の1を超える場合は、土地の一部を譲渡したのと効果が変わらないとして、分離課税の譲渡所得になります。特に有利な条件の金銭の貸付け(無利息の保証金など)を受ける場合は、その経済的利益も権利金に加えて判定します。

項目個人の地主法人の地主
毎月・毎年の地代不動産所得益金(売上高または営業外収益)
借地権設定の権利金原則不動産所得。土地の時価の2分の1超なら譲渡所得益金。土地の価額が大きく下がる場合は帳簿価額の一部を損金算入する規定あり(法人税法施行令138条)
更新料・承諾料原則不動産所得益金
消費税土地の貸付けは非課税(1か月未満・施設の貸付けは課税)同左
権利金を取らない場合個人間の使用貸借なら借地権の課税なし。法人に貸す場合は借りた法人側の受贈益が問題借地人への権利金相当額の贈与(寄附金など)として認定課税の問題

消費税:土地の貸付けは非課税

土地の貸付けは消費税が非課税です。ただし、貸付期間が1か月未満のものや、駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用されるものは、土地の貸付けから除かれ課税になります(消費税法施行令8条)。地代収入の多くは建物の敷地としての貸付けなので非課税ですが、同じ土地の一部をアスファルト舗装の駐車場として貸している場合などは、その部分は課税です。駐車場の判定は駐車場収入の課税・非課税で詳しく扱っています。

非課税売上は課税売上割合の分母に入るため、建物の賃貸と土地の賃貸をあわせて行っている課税事業者は、仕入税額控除に影響することがあります(土地を売ると課税売上割合が下がる仕組みも参照)。

借地権の認定課税とは:「相当の地代」と「無償返還届出」

借地権の設定に際して権利金を支払う取引慣行がある地域では、建物所有目的で土地を借りると、借地人は借地権という財産的価値のある権利を手に入れます。権利金を払わずにそれを手に入れれば、借地人には経済的な利益が生じた、と税務上は考えます。これが借地権の認定課税の出発点です。

認定課税を避ける方法は、国税庁の取扱いでは次の2つです(タックスアンサーNo.5730)。

方法内容主な根拠
相当の地代権利金の代わりに、土地の更地価額(自用地としての価額。過去3年間の平均額も可)に対しおおむね年6%程度の地代を受け取る法人税法施行令137条、法人税基本通達13-1-2、個別通達(平成元年3月30日直法2-2)
無償返還届出契約書で将来借地人が土地を無償で返還することを定め、「土地の無償返還に関する届出書」を借地人と連名で遅滞なく所轄税務署長に提出する法人税基本通達13-1-7

法人税基本通達13-1-2は相当の地代を「年8%程度」と書いていますが、個別通達「法人税の借地権課税における相当の地代の取扱いについて」で、当分の間「年6%」と読み替えることとされています。

地主が法人の場合の詳しい処理(権利金の認定額の計算、相当の地代の改訂方法の届出、無償返還届出を出した場合の地代差額の扱い)は、法人が土地を貸すときの権利金と借地権の認定課税で整理しています。この記事では、個人の地主が同族会社に土地を貸す場面を中心に見ていきます。

個人地主と同族会社の土地貸し

個人が自分の同族会社に土地を貸し、会社が建物を建てる場合、権利金を受け取らなければ、借りた会社側で借地権の受贈益(法人税法22条2項)が問題になります。相続税・贈与税の側では、「相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて」(昭和60年6月5日直資2-58、いわゆる相当地代通達)が、相当の地代や無償返還届出がある場合の借地権・底地の評価を定めています。

一方、個人間(親子など)で土地を無償や固定資産税程度の金額で貸す使用貸借は、借地権の課税は行われず、底地は自用地として評価されるのが原則です。相手が個人か法人かで考え方が大きく変わる点に注意が必要です。

底地(貸宅地)の相続税評価

底地の評価は、貸し方によって次のように分かれます。

貸し方底地(貸宅地)の評価借地人側の借地権の評価
通常の権利金・通常の地代で借地権を設定自用地価額 -(自用地価額 × 借地権割合)自用地価額 × 借地権割合
権利金なしで相当の地代を収受自用地価額の80%(相当地代通達6)原則零
無償返還届出あり(賃貸借)自用地価額の80%(相当地代通達8)零(相当地代通達5)
無償返還届出あり(使用貸借)自用地価額(相当地代通達8の注)零
個人間の使用貸借自用地価額評価しない

さらに、被相続人が同族関係者となっている同族会社に、相当の地代を受け取って、または無償返還届出を出して土地を貸している場合は、会社の株式の評価上、自用地価額の20%を借地権相当額として純資産価額に算入する取扱いがあります(相当地代通達6の注書・8のなお書き、昭和43年直資3-22通達)。底地の評価を80%に下げても、その分が会社の株価に乗る仕組みです。賃貸物件全体の相続税評価は賃貸物件の相続税評価、路線価の基本は相続税で不動産はいくらに評価される?もあわせてご覧ください。

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公表裁決事例:借地権はあるのか、ないのか

国税不服審判所の公表裁決事例から、地主と借地人の関係で借地権の有無や底地の評価が争われたものを紹介します。

平成22年2月15日裁決(裁決事例集No.79):相当の地代なら借地権は控除できない

事案:被相続人が所有する約2,985平方メートルの土地を、権利金の授受なしにE社へ建物所有目的で貸し、その上にショッピングセンターの立体駐車場などが建っていました。相続人は、底地を「自用地価額-借地権価額(借地権割合50%)」で評価して申告しましたが、税務署長は相当地代通達6により自用地価額の80%で評価すべきだとして更正しました。

判断:審判所は、契約当時、権利金を一時に支払う代わりに通常より高い地代を毎月支払う取決めがあったと認定しました。契約時の地代は自用地価額の3年平均に対して6.8%を下回らず、相続開始時には16.3%で、いずれも「おおむね年6%」を超えることから相当の地代に当たるとしました。借地権の設定はあっても、相当の地代を収受している以上、借地人への経済的価値の移転はないとして、80%評価を適法としています(棄却)。請求人は「無償返還届出書や相当の地代の改訂方法に関する届出書を出していないから相当地代通達は適用できない」と主張しましたが、そうした届出がなければ適用できないとする法令上の規定はない、として退けられました。

確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(平22.2.15、裁決事例集No.79)

令和元年8月19日裁決:届出のある病院敷地と、届出のない同族会社の店舗敷地

事案:被相続人らは、所有地を医療法人に賃貸し、医療法人と連名で「土地の無償返還に関する届出書」を提出していました。届出書の対象土地の一部には、家族が株式の100%を持つ同族会社の調剤薬局の建物が昭和55年から建っていましたが、薬局敷地について契約書はなく、地代も平成21年8月まで支払われていませんでした。税務署長は、全体に無償返還届出があるとして、自用地の80%で評価する更正をしました。

判断:審判所は、医療法人が借りていたのは病院敷地だけで、無償返還届出はその部分について有効だとして、病院敷地は相当地代通達(80%評価)によるとしました。一方、薬局敷地は同族会社が直接被相続人らから借りていたと認め、当事者の一方が法人である以上、取引は第三者間と同様の経済的合理性に従うべきで、将来無償で返還するという特別の事情がない限り、建物所有目的で使用を許諾したときに借地権が設定されたとみるべきだとしました。会社の貸借対照表に借地権が計上されておらず、権利金の認定課税が行われていなかったとしても結論は左右されないとして、薬局敷地は借地権を控除する通常の貸宅地評価によるとしています(一部の請求人について原処分の全部または一部を取消し)。

確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(令和元年8月19日裁決)

令和元年9月17日裁決:家族への地代が固定資産税程度なら使用貸借

事案:被相続人が所有する土地の上に、子である相続人らがそれぞれ建物を所有し、地代として金員を支払っていました。相続人らは借地権の目的となっている宅地として評価して申告しました。

判断:審判所は、地代の支払いが始まる前は使用貸借だったこと、権利金の授受がないこと、支払額が固定資産税等と同程度で、近隣の駐車場用地の賃料と比べても低いこと、親子という関係や契約の経緯などを総合して、使用貸借に基づくものと認め、借地権の目的となっている宅地には当たらないとしました(評価単位の見直しにより原処分は一部取消し)。

確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(令和元年9月17日裁決)

3つの事例から読み取れること

どの事例でも、判断の材料になったのは契約書の内容、届出の有無、地代の水準、利用の実態と経緯でした。「契約書に賃貸借と書いてあるから借地権がある」「届出書を出したから全体が80%」と形式だけで決まるわけではありません。同族会社との土地の貸し借りは、何十年も前の契約が相続時に問われることが多いため、契約時点で根拠を残しておくことが何より大切です。

会計上の扱いと決算書の表示、銀行からの見え方

地代収入の表示区分

税務上は、地代は益金(個人なら総収入金額)で、どの区分に表示しても所得は変わりません。一方、決算書で売上高に表示するか、営業外収益に表示するかは、企業会計の基準、つまり一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って判断します。法人税法22条4項も、益金・損金の計算は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従うとしています。

不動産賃貸業を本業とする会社であれば、地代は家賃と同じく本業の収入として売上高に表示するのが自然です。逆に、本業が別にあり、遊休地をたまたま貸しているだけなら営業外収益になることもあります。どの区分にできるかは取引の実態次第なので、顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

借地権を有償で取得した会社は、借地権を無形固定資産として計上します(借地権は減価償却しないのが一般的です)。権利金の認定課税を受けた場合も、受贈益の相手勘定として借地権が資産に計上されます。

銀行からの見え方

見られる点地代・底地・借地で起きること
収益の安定性地代は長期契約で変動が小さく、減価償却費もかからないため、償却前利益の安定材料になる
担保評価(地主側)底地は自由に使えないため、担保価値は更地よりかなり低く見られる
担保評価(借地人側)借地上の建物に抵当権を付ける場合、地主の承諾書を求められることが多い。同族会社が借地人なら、地主(オーナー個人)の協力が前提になる
同族間の地代地代が高すぎると会社の利益が、低すぎるとオーナー個人の所得が不自然に見える。物件全体の収支で説明できるようにする

銀行はオーナー個人と同族会社をまとめて見ることが多く、地代の水準はその「配分」の問題として見られます。相当の地代(年6%程度)は、地価の高い地域では会社にとってかなり重い負担になり、営業利益や債務償還年数を悪化させることがあります。著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で計算し、10年以内を健全の目安としています。相当の地代か無償返還届出か、どちらを選ぶかは、税務だけでなく会社の決算書への影響も含めて決める必要があります。

実務のチェックポイント

チェック項目確認する内容
契約書建物所有目的か、地代の額と改訂の定め、権利金の有無、無償返還の定め、対象土地の範囲(図面)
届出無償返還届出書(法人が関与する場合)を連名で遅滞なく提出したか。届出書の対象範囲と実際の利用範囲が一致しているか
地代の水準相当の地代(自用地価額のおおむね年6%)か、通常の地代か、固定資産税程度か。地価の変動に応じて見直しているか
消費税建物敷地の地代は非課税。駐車場など施設として貸している部分は課税に区分しているか
権利金個人で受け取る場合、土地の時価の2分の1超なら譲渡所得になるか検討したか
相続の準備底地の評価方法(借地権控除・80%・自用地)と、同族会社の株価への20%加算の影響を試算しているか
銀行対応借地上の建物を担保にする場合の地主承諾書、オーナーと会社の合算収支

個人から会社へ土地そのものを移す選択肢もあります。その場合の譲渡所得や登録免許税は個人から法人へ物件を移すときの税金で扱っています。

まとめ

  • 地代収入は、個人は不動産所得、法人は益金。土地の貸付けは原則として消費税非課税
  • 借地権設定の権利金は、個人では原則不動産所得だが、土地の時価の2分の1超なら譲渡所得
  • 権利金を取る慣行のある地域で、権利金なしに建物所有目的で貸すと、借地権の認定課税が問題になる。避ける方法は相当の地代(年6%程度)か無償返還届出
  • 底地は、通常は自用地価額から借地権を控除して評価。相当の地代・無償返還届出がある場合は自用地の80%、同族会社の株価には20%が乗る
  • 公表裁決事例では、契約書・届出・地代の水準・利用の実態から借地権の有無が判断されている。契約時に根拠を残すことが、相続時の争いを防ぐ

土地の貸し方は、一度決めると数十年続き、相続や会社の株価にまで影響します。クレフティでは、不動産投資家向けサポートの中で、同族会社との土地の貸し借りの整理や、銀行に出す決算書・物件別収支の作成までご相談をお受けしています。

よくある質問

地代収入に消費税はかかりますか?
土地の貸付けは原則として消費税が非課税です。ただし、貸付期間が1か月未満の場合や、駐車場など施設の利用に伴って土地が使われる場合は、土地の貸付けから除かれ課税になります。建物の敷地として貸している地代は、通常は非課税です。
自分の会社に土地を貸して、会社が建物を建てる場合、権利金を受け取らないと課税されますか?
借地権の設定時に権利金を支払う慣行のある地域で、権利金を受け取らず、地代も相当の地代に満たない場合は、借りた会社側で借地権の受贈益が問題になります。相当の地代を受け取るか、将来無償で土地を返す旨を契約書に定めて『土地の無償返還に関する届出書』を連名で提出すれば、権利金の認定課税は行われません。
無償返還届出を出している土地は、相続税でどう評価されますか?
賃貸借で無償返還届出書が提出されている場合、その貸宅地は自用地としての価額の80%で評価されます(相当地代通達8)。使用貸借の場合は自用地としての価額で評価されます。また、被相続人が同族関係者になっている同族会社に貸している場合は、会社の株式の評価上、自用地としての価額の20%を借地権相当額として純資産価額に算入する取扱いがあります。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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