収入

家賃収入の計上時期|個人は契約上の支払日基準、法人は期間対応(発生主義)が原則、前受家賃・未収家賃の扱い

家賃収入の計上時期は、「お金が入った日」ではありません。個人の不動産所得では契約上の支払日が原則で、法人では期間の経過に応じた計上が原則です。12月に受け取った翌年1月分の家賃、決算月に入金された翌月分の家賃、滞納されている家賃、裁判で争っている増額分。いずれも、どの年・どの期の収入にするかでルールがあります。

この記事では、家賃収入の計上時期を個人と法人に分けて整理し、会計上の考え方、銀行の見方、最高裁判決と公表裁決事例を紹介します。

この記事の結論
  • 個人は、契約・慣習で定められた支払日の属する年の収入が原則(所得税基本通達36-5)。継続記帳などの要件を満たせば、貸付期間に対応する年の収入とすることもできる
  • 法人は、期間の経過に応じて益金に計上するのが原則。契約上の支払を受けるべき日で計上する方法も認められるが、前受けの家賃は除く
  • 滞納家賃も、支払日が到来すれば収入。回収不能は貸倒損失の要件で別に判断する
  • 増額賃料の係争は、増額分は裁判確定時、仮執行で受け取った金員は受領時の収入(最高裁昭和53年2月24日判決)
  • 銀行は、未収家賃の滞留と前受家賃の扱いを、レントロールと照らして見る

個人の家賃収入:契約上の支払日基準が原則

所得税基本通達36-5

所得税基本通達36-5は、不動産所得の総収入金額の収入すべき時期を次のように定めています。

  • 契約または慣習により支払日が定められているもの:その支払日
  • 支払日が定められていないもの:その支払を受けた日(請求があったときに支払うべきものは、その請求の日)
  • 賃貸借契約の存否の係争などに係る判決・和解等により受けることとなった既往の期間の賃貸料相当額:その判決・和解等のあった日

多くの賃貸借契約は「翌月分を毎月末日までに支払う」という前払の定めです。この場合、12月末日が支払日の翌年1月分の家賃は、12月の年の収入になります。入金が1月にずれ込んでも、支払日が12月なら12月の年の収入です。

貸付期間に対応して計上する方法(昭和48年の個別通達)

国税庁の個別通達「不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について」(昭和48年11月6日 直所2-78)では、不動産の貸付けを事業的規模で行っている人が次の要件をすべて満たす場合、その年中の貸付期間に対応する賃貸料をその年の収入とすることができるとしています。

  1. 帳簿書類を備えて継続的に記帳し、その記帳に基づいて不動産所得の金額を計算していること
  2. 賃貸料の収入金額の全部について、継続的に貸付期間に対応する金額を計上する方法をとり、帳簿上、前受収益・未収収益の経理を行っていること
  3. 1年を超える期間に係る賃貸料収入については、前受収益・未収収益の明細書を確定申告書に添付していること

事業的規模でない場合も、1年以内の期間に係る賃貸料について、1と2の要件を満たせば同じ扱いができます。なお、頭金・権利金・更新料・礼金などの一時金は、この取扱いの対象外です(礼金・敷金・更新料の処理を参照)。

小規模事業者の現金主義

青色申告者で、前々年分の不動産所得と事業所得の合計額(青色事業専従者給与の控除前)が300万円以下の人は、届出により、現金の受払いを基準に所得を計算する特例を選ぶこともできます。この特例を選ぶと、青色申告特別控除は10万円になります。

法人の家賃収入:期間対応が原則、前受けは除く

法人税では、収益の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算します(法人税法第22条第4項)。法人税基本通達2-1-29は、資産の賃貸借は履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに該当し、期間の経過に応じて益金に算入するとしたうえで、ただし書きで、契約または慣習により支払を受けるべき日に収益計上を行っている場合は、その日を役務の提供の日に近接する日として扱うとしています。

この「支払を受けるべき日」で計上する方法からは、前受けに係る額が除かれています。つまり、3月決算の法人が3月中に4月分の家賃を受け取った場合、その4月分は当期の益金ではなく、前受金(前受収益)として負債に計上します。

項目個人法人
原則契約上の支払日の属する年期間の経過に応じて計上
支払日基準原則そのもの認められるが、前受け分は除く
期間対応継続記帳・前受収益等の経理などの要件で選択可原則
翌期(翌年)分の前受家賃支払日基準なら当年の収入前受金(負債)。当期の益金にしない
滞納家賃支払日到来で収入期間経過で益金(未収入金)
賃貸借契約の存否の係争判決・和解等のあった日係争解決で額が確定し支払を受けるまで計上を見合わせることができる(法人税基本通達2-1-29注1)
賃料の増減額の係争供託分は支払日など契約内容や供託額を勘案して合理的に見積もる(同注2)

法人が個人から物件を引き継いだ最初の期は、個人時代の支払日基準と法人の期間対応がずれやすいところです。個人から法人へ物件を移すときの税金とあわせて、移転日の前後の家賃の帰属を整理しておきましょう。

会計上の扱い:家賃は時の経過に応じて収益にする

企業会計では、賃貸料のように一定の契約に従い継続して役務を提供する取引は、時の経過に応じて収益を計上します。企業会計原則注解(注5)の経過勘定の考え方では、まだ提供していない役務に対して受け取った対価は前受収益(負債)、すでに提供した役務でまだ支払を受けていない対価は未収収益(資産)です。

実務上、毎月の家賃が契約どおりに入金されていれば、支払日基準でも期間対応でも年間の収入はほぼ同じです。差が出るのは、次のような場面です。

  • 決算月に翌月分の家賃を受け取ったとき(前受家賃)
  • 年払い・半年払いの賃料、定期借地の一括前払地代を受け取ったとき
  • フリーレントや段階賃料の契約があるとき
  • 滞納が発生したとき(未収家賃)
税務上の計上時期と、会計上の表示は別

税務上は、その家賃がどの年・どの事業年度の収入(益金)になるかが論点です。一方、決算書の表示(売上高として計上するか、前受収益・未収収益として資産・負債に計上するか)は、企業会計の基準(GAAP:一般に公正妥当と認められる会計基準)に沿って判断する必要があり、どう処理できるかは契約の実態次第です。駐車場や付帯サービスの収入も、本業として継続的に得ているなら売上高に含めるのが実態に合うことが多い一方、本業でない収入を売上高にすることはできません。顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

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銀行からの見え方

未収家賃の滞留は「資産として見ない」

法人の決算書の未収入金(未収家賃)が大きく、しかも毎期残っている場合、銀行は回収可能性を疑います。著書でも、売掛金・未収家賃は滞留しているものを早めに回収し、見込みのないものは引当や貸倒処理をしてBSの実態を整えることを勧めています。回収の見込みがない未収家賃が残っていると、銀行は実質的な純資産からそれを差し引いて見ます。貸倒れの要件は滞納家賃と貸倒損失の要件で解説しています。

前受家賃は流動負債

法人で前受家賃を計上すると、流動負債が増え、流動比率は下がります。ただし、銀行は前受家賃の性質(翌月には収益になる)を理解しているので、金額が月額家賃程度なら問題になることはほとんどありません。年払いの前受地代のように大きな金額がある場合は、内容を説明できるようにしておきます。BS側の考え方は「資産は上に、負債は下に」:流動比率と長期借入の考え方を参照してください。

レントロールとの照合

銀行は、決算書の売上高と、物件ごとのレントロール(入居状況と賃料の一覧)を照らし合わせます。売上高が「契約賃料×入居月数」とずれている場合、その理由(フリーレント、滞納、前受、期中の売却・取得)を説明できるようにしておくと、決算書の信頼性が上がります。

判例・公表裁決事例

増額賃料の収入時期(最高裁昭和53年2月24日第二小法廷判決)

賃料増額請求が争われた場合の増額分の賃料と、仮執行宣言付判決に基づいて支払を受けた金員の収入時期が争われた事件です(昭和50年(行ツ)第123号、民集32巻1号43頁、裁判所 裁判例検索)。

最高裁は、賃料増額請求が争われた場合の増額分の賃料は、原則として、その債権の存在を認める裁判が確定した日の属する年分の収入金額に算入すべきであるとしました。一方で、増額分の支払を命じた仮執行宣言付判決に基づいて支払を受けた金員は、その受領の日の属する年分の収入金額に算入すべきであるとしています。

実務への示唆:裁判が確定していなくても、現実に金銭を受け取って自由に使える状態になれば、その時点の収入になりえます。係争中の賃料を受け取ったときは、「確定していないから収入にしない」と判断する前に、受領の性質を確認してください。

10年分の一括払いも受領年の収入(平成3年1月7日裁決)

国が個人の所有地を10年間使用するにあたり、損失補償金として10年分の地代相当額を一括で支払った事案です(裁決事例集No.41・78頁、国税不服審判所 要旨)。請求人は前受収益だとして、その年は明渡しの日以後の期間に対応する金額だけを収入にすべきと主張しましたが、審判所は、明渡しの時点で全額を請求できることとなり、実際に全額を受領していることから、全額をその年分の総収入金額に算入すべきと判断しました。

実務への示唆:個人の場合、まとめて受け取った将来分の賃料は、期間対応の取扱いの要件を満たしていない限り、受領年の収入になりやすいと考えておく必要があります。

フリーレント期間の賃料は契約で定めた額で計上(平成30年6月15日裁決)

法人が、賃料が当初6か月間減額される契約(いわゆるフリーレント・賃料減額期間付きの契約)について、契約期間の賃料総額を月数で按分して平準化した額で益金・損金を計上したところ、契約で定められた各月の賃料で計上すべきとされた事例です(国税不服審判所)。審判所は、当時の法人税基本通達2-1-29(前受けを除き、契約により支払を受けるべき日の事業年度の益金に算入する)を相当としたうえで、当期の益金は減額後の月額賃料の6か月分であると判断しました。消費税の課税標準額も同様とされています。

実務への示唆:この裁決は、平成30年の通達改正前の取扱いを前提としています。現在の法人税基本通達2-1-29は期間の経過に応じた計上を原則としているため、フリーレント契約の益金の計上方法は、契約の内容とあわせて顧問税理士と確認してください。空室対策のフリーレントの処理は空室対策の広告費・AD・フリーレントの処理で解説しています。

実務のチェックポイント

確認すること個人法人
賃貸借契約の支払日の定め(前月払か当月払か)収入年を決める基準前受けの有無を判定
年末・期末に受け取った翌月分の家賃支払日基準なら当年の収入前受金に計上
期間対応を選ぶ場合の要件継続記帳、前受収益・未収収益の経理、明細書―
滞納家賃支払日到来分を収入に計上未収入金に計上、回収可能性を確認
フリーレント・段階賃料契約上の支払日と金額契約内容に応じた計上方法を確認
係争中の賃料・供託金判決・和解等の日、受領日通達の注1・注2で判断
レントロールとの照合申告書の収入と一致するか売上高と一致するか、差異の説明

まとめ

  • 個人の家賃は、契約上の支払日の属する年の収入が原則。継続記帳などの要件を満たせば、貸付期間に対応する年の収入とすることもできる
  • 法人の家賃は期間の経過に応じて益金に計上するのが原則で、支払日基準をとる場合も前受け分は除く
  • 滞納家賃も支払日到来で収入。回収不能は貸倒損失の要件で別に判断する
  • 増額賃料は裁判確定時、仮執行で受け取った金員は受領時の収入(最高裁昭和53年2月24日判決)
  • 銀行は、未収家賃の滞留、前受家賃、レントロールとの整合性を見ている

家賃収入の計上ルールの整理から、銀行に出す決算書とレントロールの準備まで、不動産投資家向けサービスでご相談いただけます。

よくある質問

12月に受け取った翌年1月分の家賃は、どちらの年の収入ですか?
個人の場合、賃貸借契約で「翌月分を当月末までに支払う」と定められていれば、原則として支払日の属する年、つまり12月の年の収入になります。ただし、継続的な記帳をして前受収益・未収収益を経理しているなどの要件を満たせば、貸付期間に対応する年の収入とすることもできます。法人の場合は、翌期分の前受家賃は原則として当期の益金に含めません。
入居者が家賃を滞納している場合も、収入に計上しなければなりませんか?
はい。個人でも法人でも、契約上の支払日が到来した家賃は、実際に入金がなくても収入に計上するのが原則です。回収できない見込みになった場合は、貸倒損失の要件を満たすかを別に検討します。滞納分を計上しないままにすると、税務上の誤りになるだけでなく、銀行に未収家賃の実態が伝わらない決算書になります。
賃料の増額を裁判で争っている場合、増額分はいつ収入になりますか?
最高裁昭和53年2月24日判決は、賃料増額請求が争われた場合の増額分は、原則としてその債権の存在を認める裁判が確定した日の属する年分の収入とし、仮執行宣言付判決に基づいて支払を受けた金員は、受領した日の属する年分の収入としています。係争の内容や供託の有無で扱いが変わるため、個別に確認してください。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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