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司法書士報酬・登記費用の処理|所有権移転と抵当権設定で何が違うか(個人・法人、源泉徴収まで)

物件の決済日には、司法書士から「登記費用の明細」を受け取ります。そこには、所有権移転登記と抵当権設定登記の登録免許税、司法書士の報酬、登記簿謄本などの実費が並んでいます。これを「登記費用」として一括で処理していないでしょうか。

所有権移転登記の費用は「物件を取得するための費用」、抵当権設定登記の費用は「お金を借りるための費用」です。性格が違うため、税務上の扱いも、決算書のどこに載せるかも変わります。この記事では、司法書士報酬と登記費用を分けて整理し、個人と法人の違い、源泉徴収、銀行からの見え方までまとめます。

この記事の結論
  • 登記費用は、所有権移転(取得のため)と抵当権設定(借入れのため)に分けて処理する
  • 所有権移転の登録免許税・司法書士報酬は、法人は取得価額に入れるか損金かを選べる。個人の業務用資産は必要経費
  • 抵当権設定の費用は借入れの費用。ただし個人が賃貸業を始める前の分は取得価額に算入
  • 法人や給与を払っている個人が個人の司法書士に払う報酬は、源泉徴収が必要
  • 法人で費用にする場合、どの区分に表示するかで営業利益の見え方が変わる

登記費用の明細を「2つ」に分ける

決済時の登記費用明細は、おおむね次のように分けられます。

明細の項目性格分ける先
所有権移転登記の登録免許税物件取得のための税金取得関連費用
所有権移転登記の司法書士報酬物件取得のための登記費用取得関連費用
新築建物の表示登記・保存登記の費用物件取得のための登記費用取得関連費用
抵当権設定登記の登録免許税借入れのための税金借入関連費用
抵当権設定登記の司法書士報酬借入れのための登記費用借入関連費用
登記事項証明書・郵送料などの実費それぞれの登記に付随対応する登記に寄せる

明細に「所有権移転」「抵当権設定」の区分がない場合は、司法書士に依頼すれば分けてもらえます。明細の段階で分けておくことが、正しい処理の出発点です。

所有権移転登記の費用:税務上の扱い

法人

法人税基本通達7-3-3の2は、「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」を、固定資産の取得に関連して支出するものであっても取得価額に算入しないことができる費用として挙げています。司法書士報酬は、登記のために要する費用に当たります。したがって、法人は損金にするか、土地・建物の取得価額に入れるかを選べます。

取得価額に入れる場合は、土地分と建物分に分ける必要があります。土地分は減価償却されないため、売却するまで損金になりません。

個人

個人の不動産所得では、所得税基本通達37-5により、業務の用に供される資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含む)は必要経費に算入するとされ、同49-3で、土地・建物のような資産に係る登録免許税は取得価額に算入しないとされています。所有権移転登記の司法書士報酬も「登録に要する費用」として、原則としてその年の必要経費になります。

自宅など業務の用に供されない資産に係る登録免許税等は、その資産の取得費に算入します(所基通38-9)。

抵当権設定登記の費用:借入れのための費用

抵当権設定登記は、銀行からの借入れを担保するための手続です。物件を取得するために必要な登記ではないため、借入れに伴う費用として扱います。

区分抵当権設定登記の登録免許税・司法書士報酬
法人借入れのための費用として損金
個人(賃貸業をすでに営んでいる)不動産所得の必要経費
個人(賃貸業を始める前に借入れで取得)取得価額に算入(所基通38-8)
個人(自宅など業務に使わない資産)取得費に算入(所基通38-8)

1棟目を買う個人は要注意

所得税基本通達38-8は、固定資産の取得のために借り入れた資金の利子のうち使用開始の日までの期間に対応する部分を取得費・取得価額に算入するとしたうえで、公正証書作成費用、抵当権設定登記費用、借入れの担保として締結した保険契約に基づき支払う保険料その他借入れのために通常必要と認められる費用も同様とする、と定めています(業務の用に供される資産で必要経費に算入されたものを除く)。また同37-27の注は、業務を開始する前に取得した資産の利子は37-27ではなく38-8によることを明記しています。

この考え方が問題になった公表裁決があります。

平成5年10月21日裁決(裁決事例集No.46・31頁)では、勤務医が退職して診療所を開設するに当たり、開業前に借入金で土地と建物を取得し、開業前の期間の利子と、借入れに際して支払った抵当権設定登記費用等を事業所得の必要経費に算入しました。審判所は、事業開始前に生じた費用は事業所得の必要経費に算入されないとして、利子と、登記費用等のうち必要経費に計上されていた部分を必要経費不算入とし、取得価額に算入されることになるとしました(国税不服審判所)。

事業所得の事案ですが、通達は不動産所得も対象にしています。給与所得者が初めて賃貸物件を買う場合、決済時の抵当権設定費用をその年の経費にできるとは限らない点に注意してください。

司法書士報酬と源泉徴収

司法書士に報酬を払う側には、源泉徴収の問題もあります。国税庁のタックスアンサー(No.2801)によると、居住者である司法書士等(司法書士、土地家屋調査士、海事代理士)に報酬を支払うときは、所得税と復興特別所得税を源泉徴収する必要があり、税額は1回の支払金額から1万円を差し引いた残額に10.21%を掛けた金額です。登記の申請のために本来納付すべき登録免許税などに充てることが明らかな部分は、源泉徴収の対象になりません。

支払者個人の司法書士への報酬
法人源泉徴収が必要
給与等を支払っている個人(青色事業専従者給与を含む)源泉徴収が必要
給与等を支払っていない個人原則として源泉徴収義務者にならない

給与等を支払っていない個人は報酬の源泉徴収義務者にならない取扱いがあります(タックスアンサーNo.2793)。司法書士法人に支払う場合は、法人への支払いのため、この源泉徴収の対象外です。実務では、司法書士側が源泉徴収後の金額で請求書を作ってくれることが多いので、精算書の「源泉税」欄を確認し、預かった税額を翌月10日まで(納期の特例を受けている場合は半年ごと)に納付します。なお、令和9年分以後は源泉徴収する税目に防衛特別所得税が加わるとされているため、その時点の国税庁の案内を確認してください。

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会計上の扱いと決算書の表示

会計上、所有権移転登記の費用は固定資産を取得するための付随費用です。中小企業の会計に関する指針(33項)では、固定資産の取得価額は購入代価等に付随費用を加えた金額とし、付随費用が少額のときは取得価額に算入しないことができるとしています。

一方、抵当権設定登記の費用は、資金調達のための費用です。法人で費用処理する場合、勘定科目は「支払手数料」や「租税公課」が使われることが多いですが、表示する区分は会社の実態に応じて検討が必要です。

表示区分は会計基準と実態で判断する

税務上は損金算入が認められるかが論点になります。一方、決算書の表示区分(販管費か営業外費用か特別損失か、資産計上か費用処理か)は、企業会計の基準(GAAP:一般に公正妥当と認められる会計基準)に沿って判断する必要があり、どの区分にできるかは取引の実態次第です。借入れのための費用を、支払利息などの金融費用とあわせて営業外費用に表示することが考えられる場合もありますが、会社の会計方針として継続性も求められます。顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

銀行からの見え方

銀行の格付けでは、営業利益と経常利益が重視されます。ICR(営業利益÷支払利息)の分子は営業利益です。登記費用は1件あたりでは大きな金額ではありませんが、物件を毎年のように取得する会社では、積み重なると営業利益を目に見えて押し下げます。

処理その期の営業利益その期の経常利益その期の納税
所有権移転費用を取得価額に入れる影響小影響小増える
所有権移転費用を販管費で費用処理下がる下がる減る
抵当権設定費用を営業外費用で表示(実態に合う場合)影響しない下がる減る

どの処理が正解というより、同じ費用を毎期同じ考え方で処理し、銀行に説明できることが大切です。決算書の数字が期ごとにぶれると、担当者は「何が起きたのか」を確かめる必要が出てきます。物件取得のあった期は、取得関連費用の内訳と処理方針を、決算説明の資料に一行入れておくとよいでしょう。銀行への決算説明の考え方は銀行に出す前の決算書の整え方も参考にしてください。

実務のチェックポイント

  1. 司法書士の明細を、所有権移転分と抵当権設定分に分けてもらったか
  2. 法人の場合、所有権移転分を取得価額に入れるか損金にするか、方針を決めて継続しているか
  3. 取得価額に入れる場合、土地分と建物分に分けたか
  4. 個人で1棟目の場合、業務開始前の抵当権設定費用・利子を取得価額に入れたか
  5. 法人・給与支払者の個人は、個人の司法書士への報酬を源泉徴収し、期限までに納付したか
  6. 新築の場合、表示登記(土地家屋調査士)・保存登記の費用も取得関連費用として整理したか

借入れに伴う他の費用(保証料、融資手数料、印紙税)は銀行に払う費用の処理と期間按分、取得関連の税金は不動産取得税・登録免許税は経費か取得価額かで解説しています。

まとめ

  • 登記費用は、所有権移転(取得のため)と抵当権設定(借入れのため)に分けて処理する
  • 所有権移転の費用は、法人は取得価額か損金かを選べ、個人の業務用資産は必要経費
  • 抵当権設定の費用は借入れの費用。個人が賃貸業を始める前の分は取得価額に算入
  • 法人や給与を払う個人は、個人の司法書士への報酬から源泉徴収が必要
  • 表示区分は会計基準と実態で判断し、毎期同じ考え方で処理して銀行に説明できるようにする

登記費用の仕分けから、決算書の表示、銀行への説明まで、不動産投資家向けサービスで一貫してお手伝いしています。

よくある質問

所有権移転登記の司法書士報酬は、取得価額に入れるのですか?
法人の場合、登録免許税その他登記のために要する費用は取得価額に算入しないことができるとされているため(法人税基本通達7-3-3の2)、損金にするか取得価額に入れるかを選べます。個人の不動産所得では、業務用の土地・建物に係る登録免許税(登録に要する費用を含む)は必要経費とされています(所得税基本通達37-5、49-3)。
抵当権設定登記の費用は、物件の取得価額になりますか?
抵当権設定登記は借入れのための手続なので、物件そのものの取得費用ではなく、借入れに伴う費用として扱うのが基本です。法人や、すでに賃貸業を営んでいる個人は、通常その期の費用になります。ただし、個人が賃貸業を始める前に借入金で物件を取得した場合は、抵当権設定登記費用も取得価額に算入するとされている点に注意が必要です(所得税基本通達38-8)。
司法書士に報酬を払うとき、源泉徴収は必要ですか?
法人や、給与を支払っている個人が、個人の司法書士に報酬を支払う場合は源泉徴収が必要です。税額は、1回の支払金額から1万円を差し引いた残額に10.21%を掛けて計算します(国税庁タックスアンサーNo.2801、令和8年4月1日現在)。登録免許税に充てる実費部分は対象外です。給与の支払がない個人の大家さんは、原則として源泉徴収義務者になりません。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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