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不動産取得税・登録免許税は経費か取得価額か|法人の選択と個人の扱い、計上時期と銀行の見え方

不動産を買うと、決済のときに登録免許税を払い、数か月後に都道府県から不動産取得税の納税通知書が届きます。どちらもまとまった金額になるため、「全額その期の経費にしてよいのか」「取得価額に入れるべきなのか」は、毎回のように相談を受ける論点です。

結論からいえば、法人は取得価額に入れるか損金にするかを選べ、個人の不動産所得では原則として必要経費です。ただし、法人の選択は決算書の見え方に直結し、個人には「業務の用に供される資産かどうか」という前提があります。この記事では、根拠となる通達、計上時期、会計上の表示、銀行からの見え方を順に整理します。

この記事の結論
  • 法人は、不動産取得税・登録免許税その他登記費用を取得価額に算入しないことができる(法人税基本通達7-3-3の2)
  • 個人の不動産所得では、業務用資産にかかるこれらの税は必要経費(所得税基本通達37-5)。土地・建物の登録免許税は取得価額に入れない(同49-3)
  • 不動産取得税は賦課課税なので、納税通知を受けた期の損金が原則。決算期をまたぎやすい
  • 法人で費用にすると、その期の営業利益・経常利益が下がる。取得価額に入れると、その期の納税額が増える
  • 「税金だから経費」とは限らない。固定資産税の精算金は租税公課ではなく取得価額とされた判決がある

不動産取得税と登録免許税の基本

まず、2つの税の性格を確認しておきます。

項目登録免許税不動産取得税
課税する者国都道府県
かかる場面所有権移転・保存、抵当権設定などの登記土地・家屋の取得(売買・新築など)
課税標準原則として固定資産課税台帳の価格(抵当権設定は債権金額)原則として固定資産課税台帳の価格
払う時期登記の申請時(決済日に司法書士経由で払うことが多い)取得後、納税通知書が届いてから

税率の一例として、国税庁のタックスアンサー(No.7191)では、売買による土地の所有権移転登記は1,000分の20、令和11年3月31日までに登記を受ける場合は1,000分の15の軽減税率、売買による建物の所有権移転登記は1,000分の20とされています。不動産取得税は、たとえば千葉県の案内では、令和9年3月31日までの取得について土地・住宅は3%、住宅以外の家屋は4%、宅地評価土地は課税標準が2分の1とされています。軽減の要件や期限は改正されることが多いため、取得のつど国税庁や都道府県の最新情報を確認してください。

税務上の扱い:法人は「選べる」、個人は「原則必要経費」

法人:取得価額に算入しないことができる

法人税基本通達7-3-3の2は、次のような費用は、固定資産の取得に関連して支出するものであっても、取得価額に算入しないことができるとしています。

  • 不動産取得税
  • 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
  • 新増設に係る事業所税
  • 登録免許税その他登記または登録のために要する費用

「算入しないことができる」なので、取得価額に算入しても、損金にしてもよいということです。損金にすれば、その期の所得が減ります。取得価額に入れれば、建物部分は減価償却を通じて耐用年数にわたり損金になり、土地部分は売却するまで損金になりません。

個人:業務用資産なら必要経費

個人の場合、所得税基本通達37-5で、業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く)、不動産取得税などは、その業務に係る所得の必要経費に算入するとされています。さらに同49-3では、土地・建物のような資産に係る登録免許税は取得価額に算入しないとされています。国税庁のタックスアンサー(No.2215)でも、土地・建物等の登録免許税と不動産取得税は「必要経費に算入」と整理されています。

一方、自宅など業務の用に供されない資産に係る登録免許税や不動産取得税は、その資産の取得費に算入します(所基通38-9)。

区分不動産取得税登録免許税(所有権移転)根拠
法人損金か取得価額かを選択損金か取得価額かを選択法基通7-3-3の2
個人・業務用資産必要経費必要経費(取得価額に入れない)所基通37-5、49-3
個人・非業務用資産取得費に算入取得費に算入所基通38-9

なお、相続で取得した賃貸物件の登記費用について、平成17年分より前は必要経費にできないとされた裁決があります(平成18年6月8日裁決、裁決事例集No.71・178頁、国税不服審判所)。現在の通達37-5の注1では、業務の用に供される資産には相続・遺贈・贈与で取得した資産を含むとされています。取扱いの変遷があった分野なので、古い解説をそのまま当てはめないよう注意してください。

計上する時期:納税通知書が決算期をまたぐ

不動産取得税は、申告ではなく都道府県が税額を決めて通知する賦課課税方式の税です。

法人の場合、賦課課税方式の租税は、賦課決定のあった日の属する事業年度の損金とし、納期の開始の日の属する事業年度や実際に納付した日の属する事業年度に損金経理した場合はその事業年度とされています(法人税基本通達9-5-1)。個人の場合も、その年12月31日までに納付すべきことが具体的に確定したものが必要経費になり、納期が分割されているものは各納期の開始日や実際の納付日の年分にできます(所基通37-6)。

実務では、決算月の直前に物件を買うと、不動産取得税の通知は翌期に届くことがよくあります。取得した期の決算書には登録免許税だけが載り、翌期に不動産取得税がまとめて載る、という形です。翌期の利益計画には、この金額をあらかじめ見込んでおく必要があります。

会計上の扱いと決算書の表示

会計の原則では、固定資産の取得原価は購入代価に付随費用を加えた金額です。中小企業の会計に関する指針(33項)も、取得価額は購入代価等に付随費用を加えた金額とし、付随費用が少額の場合は取得価額に算入しないことができるとしています。不動産取得税や登録免許税も、取得のための付随費用として取得原価に含めるのが会計の基本的な考え方で、税務の通達は「入れなくてもよい」という幅を認めている、という関係です。

費用処理する場合、一般には「租税公課」として販売費及び一般管理費に計上します。

「特別損失にできるか」は実態次第

税務上は損金算入が認められるかが論点になります。一方、決算書の表示区分(販管費か特別損失か、資産計上か費用処理か)は、企業会計の基準(GAAP:一般に公正妥当と認められる会計基準)に沿って判断する必要があり、どの区分にできるかは取引の実態次第です。たとえば、物件の取得を事業として毎期のように行っている会社の不動産取得税は、通常は臨時的な費用とはいいにくいでしょう。顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

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銀行からの見え方:その期の利益と、その期の納税

法人が取得関連の税金をどう処理するかで、銀行が見る数字は次のように変わります。

銀行が見る指標損金(販管費)にした場合取得価額に入れた場合
営業利益・経常利益その期に全額下がる建物分の減価償却費だけ下がる
ICR(営業利益÷支払利息など)その期は悪化影響は小さい
償却前利益その期に全額下がる減価償却費は足し戻されるため影響は小さい
純資産税引後の分だけ減る減らない
その期の現預金納税が減る分だけ多く残る納税が増える分だけ少なくなる

著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算します。取得価額に入れた建物分は、減価償却費として分母に戻ってきます。一方、その期に販管費で落とした税金は、経常利益を直接押し下げます。

規模を拡大している途中の会社が、物件を取得するたびに数百万円単位の租税公課を計上すると、「買うほど営業利益が赤字に見える」状態になりかねません。逆に、取得価額に入れると、その期の法人税等は増えます。著書では、取得時の費用が不必要に費用化されて営業利益を圧迫していないかを、定期的に点検することをすすめています。どちらを選ぶにしても、取得の前に決算書の着地を試算することが大切です。銀行が営業利益をどう見るかは不動産投資の銀行格付けでも解説しています。

関連する判決:「税金の名目」でも取得価額になるもの

「税金に関するお金だから租税公課」と考えるのは危険です。固定資産税の精算金をめぐる裁判例を紹介します。

福岡高裁平成28年3月25日判決(長崎地裁平成27年10月5日判決の控訴審)では、土地建物を購入した法人が、売主に支払った固定資産税等の日割精算金を租税公課として損金に算入したことが争われました。裁判所は、固定資産税の納税義務者は賦課期日の所有者であり、買主は納税義務を負わないこと、精算金は当事者の合意に基づいて支払われ、契約の要素となっていることなどから、精算金は不動産の取得価額に算入すべきと判断し、納税者の控訴を棄却しました(税務訴訟資料266号順号12833、国税庁ウェブサイト掲載の判決文)。

この判決は、法人税基本通達7-3-3の2の「租税公課等」と、売買の対価の一部である精算金を区別しています。不動産取得税・登録免許税は自分が納税義務者として払う税金、精算金は売主に払う売買代金の一部です。詳しくは固定資産税の精算金は取得価額をご覧ください。

実務のチェックポイント

  1. 登録免許税は、所有権移転分と抵当権設定分を分けて把握したか(抵当権設定分は借入れの費用。銀行に払う費用の処理)
  2. 法人の場合、不動産取得税・登録免許税を取得価額に入れるか損金にするか、会社の方針を決めて継続しているか
  3. 取得価額に入れる場合、土地分と建物分に分けたか(土地分は償却されない)
  4. 不動産取得税の納税通知がどの期に届くかを見込み、翌期の利益計画に入れたか
  5. 個人の場合、その物件は業務の用に供される資産か(自宅部分などは取得費)
  6. 軽減税率・軽減措置の要件と期限を、取得時点の国税庁・都道府県の情報で確認したか

まとめ

  • 不動産取得税・登録免許税は、法人なら取得価額に入れるか損金にするかを選べる(法基通7-3-3の2)
  • 個人の不動産所得では、業務用資産にかかるものは原則として必要経費(所基通37-5・49-3)
  • 不動産取得税は賦課課税。納税通知を受けた期の損金が原則で、決算期をまたぎやすい
  • 決算書の表示区分は、税務とは別に会計基準と実態で判断する
  • 費用にすると利益が下がり、資産にすると納税が増える。融資の予定も含めて取得前に試算を

取得のたびに決算書の見え方を試算し、処理方針を一緒に決めていくのがクレフティの進め方です。不動産投資家向けサービスからご相談ください。諸費用全体の一覧は物件取得時の諸費用一覧にまとめています。

よくある質問

法人が払った不動産取得税は、必ず経費にしなければいけませんか?
必ずではありません。法人税基本通達7-3-3の2により、不動産取得税や登録免許税その他登記のための費用は、固定資産の取得に関連して支出するものでも取得価額に算入しないことができるとされています。つまり、損金にすることも、取得価額に含めて減価償却などで回収することもできます。会社として方針を決め、継続して処理するのが基本です。
個人の不動産所得では、不動産取得税と登録免許税はどう扱いますか?
業務の用に供される資産にかかる不動産取得税や登録免許税(登記に要する費用を含む)は、原則として不動産所得の必要経費になります(所得税基本通達37-5)。土地・建物に係る登録免許税は取得価額に算入しないこととされています(同49-3)。ただし、業務の用に供さない資産に係るものは取得費に算入します。
不動産取得税は、物件を買った年と納税通知が届いた年のどちらの経費ですか?
不動産取得税は賦課課税方式の税金なので、法人では原則として賦課決定のあった日(納税通知を受けた日)の属する事業年度の損金になり、納期の開始日や実際に納付した日の属する事業年度に損金経理することも認められています。個人も、賦課決定を受けた年分が原則で、分割納付の場合は各納期の開始日や納付日の年分にできます。決算期をまたぐことがあるので注意してください。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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