「仲介手数料は数百万円にもなるのに、経費にならないのですか」。初めて物件を買った方から、確定申告の前によく聞かれる質問です。
答えは、原則として経費にはならず、土地と建物の取得価額に入れるです。そして、建物分は減価償却で少しずつ費用になり、土地分は売却するまで費用になりません。つまり、仲介手数料の処理は土地と建物にどう分けるかとセットで考える必要があります。この記事では、仲介手数料の税務上の扱い、按分の方法、消費税、会計上の表示、銀行からの見え方を、公表裁決とあわせて整理します。
- 購入時の仲介手数料は、法人・個人とも取得価額に算入する(購入のために要した費用)
- 土地分と建物分に按分する。売買代金の土地・建物の区分と同じ比率を使うのが基本
- 建物分は減価償却で費用になり、土地分は売却まで費用にならない
- 付随費用(支払手数料)を固定資産税評価額の割合で按分した方法を合理的とした裁決がある
- 費用にならない分、その期の営業利益は下がらない。一方で節税効果は小さい。銀行の評価には中立〜有利に働きやすい
仲介手数料は「購入のために要した費用」
法人税法施行令54条1項1号は、購入した減価償却資産の取得価額を、次の合計額としています。
- 購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他購入のために要した費用を含む)
- 事業の用に供するために直接要した費用
個人も、所得税法施行令126条1項1号で同じ定めがあります。土地のような減価償却しない資産も、法人税基本通達7-3-16の2により同じ取扱いの例によるとされています。不動産の仲介手数料は、まさに購入のために要した費用です。
| 区分 | 購入時の仲介手数料 | 費用になるタイミング |
|---|---|---|
| 法人 | 土地・建物の取得価額に算入 | 建物分は減価償却、土地分は売却時に原価として |
| 個人(不動産所得) | 土地・建物の取得価額に算入 | 建物分は減価償却、土地分は譲渡所得の取得費として |
| (参考)売却時の仲介手数料 | 譲渡費用・売却原価 | 売却した期・年 |
不動産取得税や登録免許税のように「取得価額に入れなくてもよい」という通達上の選択肢は、仲介手数料にはありません。個人と法人で扱いは同じです。
支払いの時期と計上の時期
仲介手数料は、契約時に半額、決済時に残額を払う形がよくあります。物件の引渡し前に払った分は、いったん前払金(建設中の物件なら建設仮勘定)として資産に計上し、引渡しを受けた時点で土地・建物の取得価額に振り替えます。支払った期に費用処理してしまわないよう注意してください。
土地と建物への按分方法
仲介手数料は1本で請求されるため、土地と建物に分ける必要があります。実務の基本は、売買代金を土地と建物に区分した比率で、仲介手数料も按分する方法です。
売買代金の土地・建物の区分は、次の順に確認するのが一般的です。
| 優先順位 | 方法 | 留意点 |
|---|---|---|
| 1 | 契約書に記載された土地・建物の価額 | 当事者の合意として尊重される。著しく不合理な場合は別 |
| 2 | 契約書の消費税額から建物価額を逆算 | 建物の消費税が明記されている場合の実務的な方法 |
| 3 | 固定資産税評価額の比率で按分 | 一般的に合理的とされる。改修工事などが反映されていない場合は注意 |
| 4 | 不動産鑑定評価の積算価格の比率 | 固定資産税評価額では実態を反映できない特殊事情がある場合 |
売買代金の区分そのものが争われた裁決は、土地と建物の按分方法と争いになった裁決事例で詳しく扱います。仲介手数料は、売買代金の区分と同じ比率で按分しておけば、考え方の筋が通ります。
公表裁決に見る「付随費用の按分」
平成24年7月5日裁決:付随費用も固定資産税評価額の割合で按分
信託受益権の形で土地・建物を取得した法人の事案です。主な争点は売主に支払った固定資産税等相当額の扱いでしたが、審判所は各資産の取得価額を計算し直すに当たり、契約書に建物と各償却資産の価額の区分がないことから、同一時期・同一の評価基準で評価された固定資産税評価額を用いて按分するのが合理的とし、建物の購入代価と付随費用(支払手数料)の額を、各減価償却資産の固定資産税評価額の割合で按分して取得価額を算出しました(国税不服審判所)。この事例では、原処分の一部が取り消されています。
手数料のような付随費用も、本体の代価と同じ物差しで各資産に配分するという考え方が示された事例といえます。
令和5年6月21日裁決:按分の物差しそのものが争われた例
簡易宿所として使う目的で土地建物を一括取得した法人の事案で、売買契約上、土地・建物の各売買金額と消費税額が明らかでなかったものです。この法人は物件取得の際に仲介手数料も支払っていました。審判所は、路線価で土地価額を出して残りを建物とする「差引法」は合理的と認められないとする一方、固定資産税評価額の比による按分は一般的には合理的としつつ、時価を増加させる改修工事が反映されていない一部の物件については、不動産鑑定評価の積算価格の比による按分がより合理的と判断しました(国税不服審判所)。
建物の取得価額をどう出すかは、仲介手数料の按分にも直結します。売買代金の区分に使った物差しと、手数料の按分に使う物差しを揃えることが大切です。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る消費税の扱い
仲介手数料は、仲介という役務の提供の対価なので、土地部分に対応する分も含めて課税仕入れです(土地の譲渡自体は非課税ですが、仲介サービスは課税です)。
本則課税で個別対応方式を使う場合、どの区分になるかは、その物件を何に使うかで決まります。国税庁の質疑応答事例「貸ビルを建設する土地の造成費」では、課税売上げのみを行う支店とテナント賃貸に使う新支店ビルのための土地購入あっせん手数料は、課税資産の譲渡等にのみ要するものとされ、判定は課税仕入れを行った日の状況によるとされています(消費税法基本通達11-2-20)。逆に、住宅として貸す物件であれば、通常は非課税売上げに対応する区分になります。
住宅用の建物そのものの消費税については、居住用賃貸建物の消費税で解説しています。
会計上の扱いと決算書の表示
会計上も、仲介手数料は固定資産の取得原価に含めるのが原則です。中小企業の会計に関する指針(33項)は、固定資産の取得価額を「購入代価等に、買入手数料、運送費、引取運賃、据付費、試運転費等の付随費用を加えた金額」としています。仲介手数料は「買入手数料」に当たる典型的な付随費用です。
税務と会計の考え方が一致しているため、仲介手数料を販管費に計上する余地は通常ありません。税務上の処理と会計上の表示は本来別物ですが、この費用については両方とも資産計上と考えてよいでしょう。
銀行からの見え方
仲介手数料を取得価額に入れると、その期の損益にはほとんど影響しません。
| 銀行が見る点 | 影響 |
|---|---|
| その期の営業利益・経常利益 | 建物分の減価償却費が少し増えるだけ |
| 償却前利益 | ほぼ影響なし |
| 貸借対照表 | 土地・建物の簿価が手数料の分だけ大きくなる |
| 実態評価 | 銀行は物件を担保評価や収益還元で見直すため、手数料分の簿価が評価で差し引かれることがある |
注意したいのは最後の点です。簿価には仲介手数料などの諸費用が含まれますが、銀行が物件を評価するときは、簿価ではなく担保評価額や収益価格で見直すことがあります。簿価と評価の差が大きいと、実態ベースの純資産は決算書の数字より小さく見積もられます。諸費用を含めた取得総額が物件の評価に見合っているか、購入前に確認しておきましょう。銀行が物件をどう評価するかは不動産投資の銀行格付けでも解説しています。
実務のチェックポイント
- 仲介手数料を、販管費や支払手数料で費用処理していないか
- 契約時に払った半額を、前払金として資産計上し、引渡し時に振り替えたか
- 土地・建物への按分比率は、売買代金の区分と同じ物差しか
- 建物分をさらに建物本体と附属設備に分ける場合、同じ考え方で按分したか(建物と建物附属設備の区分)
- 消費税の個別対応方式の区分を、物件の用途に応じて判定したか
- 個人の場合、土地分の手数料を売却時の取得費に含められるよう記録を残したか
まとめ
- 購入時の仲介手数料は、法人・個人とも取得価額に算入する。個人と法人で違いはない
- 土地と建物に按分し、建物分は減価償却、土地分は売却まで費用にならない
- 按分は売買代金の区分と同じ物差しで。付随費用を固定資産税評価額の割合で按分した裁決がある
- 消費税は課税仕入れ。個別対応方式の区分は物件の用途で決まる
- その期の利益には中立だが、簿価と銀行評価の差には注意
諸費用全体の扱いは物件取得時の諸費用一覧にまとめています。取得時の処理から融資を見据えた決算書づくりまで、不動産投資家向けサービスでご相談ください。
