減価償却・設備

建物と建物附属設備・構築物の区分|耐用年数の違い、見積書を分ける意義と裁決事例

「建築費3億円を全部『建物』で償却していたが、本当は設備を分けられたのではないか」。新築や大規模改修のあとに、こうしたご相談を受けることがあります。

建物と建物附属設備・構築物の区分は、毎年の減価償却費の大きさを左右します。区分の根拠は見積書や請負契約の内訳であり、あとから作り直すことは難しいため、発注の段階で決めておく必要があります。この記事では、耐用年数の違い、法人と個人での扱い、区分が争われた裁決事例、決算書の表示と銀行からの見え方までを整理します。

この記事の結論
  • 建物(鉄筋コンクリート造の住宅用で47年)に対し、建物附属設備は多くが15年、構築物はアスファルト舗装で10年など、耐用年数が大きく違う
  • 区分は「名目」ではなく、構造上・機能上の実態で判断される。建具・畳・ユニットバスは「建物」とされた裁決事例がある
  • 区分の根拠は見積書・請負契約の内訳。着工前に、設備ごとの金額が分かる形で出してもらう
  • 区分して償却を早めても償却前利益は変わらない。一方、経常利益と簿価は早く下がるため、銀行への説明の準備も必要

建物・建物附属設備・構築物の違いと耐用年数

減価償却資産の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(耐用年数省令)の別表第一で、種類・構造・用途ごとに定められています。賃貸不動産でよく出てくるものを抜き出すと、次のとおりです。

種類構造・用途・細目耐用年数
建物鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造/住宅用47年
建物金属造(骨格材の肉厚4mm超)/住宅用34年
建物木造/住宅用22年
建物附属設備電気設備(照明設備を含む。蓄電池電源設備を除く)15年
建物附属設備給排水・衛生設備、ガス設備15年
建物附属設備冷暖房設備(冷凍機の出力22kW以下)13年
建物附属設備昇降機設備(エレベーター)17年
建物附属設備消火・排煙・災害報知設備8年
構築物舗装路面(アスファルト敷)10年
構築物舗装路面(コンクリート敷・ブロック敷)15年

建物附属設備は、建物に付属して建物の機能を支える設備です。構築物は、会社計算規則の言葉を借りれば「土地に定着する土木設備又は工作物」で、駐車場の舗装や塀、外構などが当たります(構築物の詳細は駐車場舗装・フェンス・外構など構築物の耐用年数で解説します)。

鉄筋コンクリート造の住宅で、建築費のうち設備部分を15年で償却できれば、その部分の年間償却費は47年で償却する場合の約3倍になります。区分のしかたで、毎年の費用の大きさがこれだけ変わるということです。

税務上の扱い:法人と個人で何が違うか

区分の考え方そのもの(どれが建物で、どれが附属設備か)は法人も個人も同じです。違いが出るのは、償却費の計上のしかたです。

項目法人個人
償却方法建物は平成10年4月1日以後取得分、建物附属設備・構築物は平成28年4月1日以後取得分は定額法同左(法定の償却方法は定額法)
償却費の計上損金経理した金額のうち償却限度額までが損金(限度額以下なら任意)計算した償却費を必要経費に算入(任意に減らせない)
区分を誤った場合償却限度額の計算が誤りとなり、償却超過額は損金不算入必要経費の計算が誤りとなる
根拠法人税法31条、耐用年数省令所得税法49条、耐用年数省令

法人は、償却限度額の範囲内で償却費を計上するかどうかを選べます(いわゆる任意償却。詳しくは法人の任意償却と償却不足を銀行はどう見るか)。個人は、計算どおりの償却費を毎年必要経費に入れるのが原則です。

新築・改修では「内訳」が根拠になる

建物附属設備として区分するには、その設備にかかった金額を客観的に示す必要があります。根拠になるのは、次のような書類です。

  • 工事請負契約書と、工事項目ごとの金額が分かる見積書・内訳明細書
  • 電気・給排水・空調・昇降機など、設備工事ごとの請求書
  • 設計図書(設備の仕様や設置場所が分かるもの)

「建築工事一式」の契約書しかない場合、設備部分の金額をあとから見積もって振り分けるのは、説明が難しくなります。着工前に、設備工事を分けた内訳で見積書・契約書を作ってもらうのが確実です。

中古物件は、契約書に区分がないことが多い

中古の一棟物件では、売買契約書に土地と建物の価額しか書かれていないことがほとんどです。建物の中から附属設備を抜き出して短い耐用年数を使うには、その金額を合理的に算定した根拠が必要になります。根拠のない振り分けは否認のリスクが高いため、慎重に検討してください。中古建物の耐用年数そのものは中古建物の耐用年数(簡便法)と否認された事例で扱います。

裁決事例:建物か、附属設備・器具備品か

区分が争われた公表裁決事例を3つ紹介します。いずれも国税不服審判所の公表裁決事例要旨で確認できるものです。

建具・畳・ユニットバスは「建物」(平成2年1月30日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 平成2年1月30日裁決(裁決事例集No.39・201頁)[公表裁決事例要旨(法人税・耐用年数)]
  • 争点:建物に設置された鋼製建具、木製建具、畳敷物、ユニットバス等が、耐用年数の短い「器具及び備品」に当たるか
  • 判断:「器具及び備品」といえるには、建物と構造上独立・可分で、建物本来の効用を維持する目的以外の固有の目的で設置されたものであることが必要と解されるとしました。建具や畳は建物と独立・可分とはいえず、ユニットバスも給湯・給排水設備が施工された浴室の場所に部材を結合して一個の浴室を形成している、つまり建物の部屋の一つであるとして、いずれも「建物」に当たると判断しています。
  • 示唆:室内の造作や設備を「備品」として短く償却する処理は、構造上独立しているかどうかで判断されます。名称ではなく、取り付け方と機能を見られます。

冷蔵倉庫の保冷施設は「建物」(昭和59年6月25日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 昭和59年6月25日裁決(裁決事例集No.27・225頁)[同上]
  • 争点:冷蔵倉庫の内部に固着した保冷のための天井・周壁のウレタン吹付けや自動扉などが、機械及び装置に当たるか
  • 判断:これらは構造上、建物と一体不可分の内部造作物であり、建物の一部とみるのが相当として、冷蔵倉庫用建物の耐用年数を適用しました。
  • 示唆:建物の内部に固着して一体となった造作は、建物として扱われるのが基本です。

空調設備の耐用年数は「冷凍機の出力」で区分(平成12年9月28日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 平成12年9月28日裁決(裁決事例集No.60・387頁)[裁決全文]
  • 争点:冷凍機に直結する電動機がない空調設備は、冷暖房設備(冷凍機の出力22kW以下、13年)と、その他の冷暖房設備(15年)のどちらに当たるか
  • 判断:「冷凍機の出力」とは冷凍機に直結する電動機の出力をいうと解し、直結する電動機を有しない本件空調設備は13年の「冷暖房設備」に当たるとして、原処分庁の15年の主張を退けました。
  • 示唆:同じ附属設備の中でも、細目の当てはめで年数が変わります。耐用年数表の文言に沿って、一つずつ判定することが求められます。
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会計上の扱いと決算書での表示

ここで押さえておきたいのは、税務上の区分と決算書の表示は別物だということです。

会社計算規則74条は、有形固定資産の項目として「建物及び暖房、照明、通風等の付属設備」と「構築物」を挙げています。つまり、貸借対照表では建物と附属設備をまとめて「建物」として表示することも考えられます。一方、税務上は耐用年数が違う以上、固定資産台帳では種類・耐用年数ごとに分けて管理し、法人税申告書の減価償却の明細もそれに沿って作ります。

企業会計(一般に公正妥当と認められる会計の基準)の考え方では、減価償却は資産の使用実態に応じて、毎期規則的に行うものです。会社計算規則5条2項も、償却すべき資産について「相当の償却」を求めています。中小企業の実務では税法の耐用年数を使うことが多いものの、区分の根拠を持ったうえで台帳を整えておくことが、会計・税務の両方で前提になります。

銀行からの見え方:区分すると何が変わるか

附属設備を分けて償却を早めると、銀行が見る数字は次のように動きます。

指標区分して償却を早めた場合の影響
営業利益・経常利益償却費が増える分、取得後しばらくは下がる
償却前利益(経常利益+減価償却費)変わらない(税負担の差を除く)
債務償還年数分母が償却前利益ベースなら大きくは変わらない。ただし税額が変わる分の影響はある
簿価・純資産簿価が早く下がり、純資産の積み上がりは遅くなる

著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で見ています。この式では償却費を足し戻すため、区分のしかたで返済能力の評価が大きく崩れることはありません。

注意したいのは、経常利益そのものや純資産です。格付けでは収益性や安全性の項目も見られるため、取得直後に償却費が膨らみ、経常利益が赤字に近づくと、説明が必要になります。償却の構造と返済能力の関係は減価償却費と銀行の見方(償却前利益・債務償還年数)で詳しく解説します。

また、金融機関によっては、融資期間の上限を建物の耐用年数(または残存耐用年数)と関連づけて考えることがあります。融資期間の考え方は融資期間と耐用年数を参照してください。

実務のチェックポイント

  1. 着工前に、設備工事ごとの金額が分かる見積書・請負契約の内訳を依頼したか
  2. 電気・給排水・空調・昇降機・消防設備などを、耐用年数表の細目に沿って当てはめたか
  3. 室内の造作や設備を「器具及び備品」とする場合、建物と構造上独立しているかを確認したか
  4. 中古物件で附属設備を区分する場合、合理的な算定根拠を用意できるか
  5. 固定資産台帳を、種類・耐用年数ごとに分けて作ったか
  6. 区分によって取得直後の経常利益がどう動くかを試算し、銀行への説明を準備したか

減価償却全体の考え方は中古物件の減価償却と耐用年数もあわせてご覧ください。

まとめ

  • 建物・建物附属設備・構築物は耐用年数が大きく違い、区分のしかたで毎年の償却費が変わる
  • 区分は名目ではなく、構造上・機能上の実態で決まる。建具・畳・ユニットバスは「建物」とされた裁決がある
  • 区分の根拠は見積書・請負契約の内訳。発注の段階で設備ごとの金額を出してもらう
  • 税務上の区分と決算書の表示は別物。台帳は耐用年数ごとに分け、表示は会計方針に沿って決める
  • 償却を早めても償却前利益は変わらないが、経常利益と純資産の見え方は変わる。銀行への説明も含めて検討する

新築・改修の発注前の内訳の作り方から、決算書の見え方まで、不動産投資家向けサービスでご相談いただけます。

よくある質問

新築アパートの建築費は、建物附属設備に分けたほうがよいのですか?
電気設備や給排水・衛生設備などは、建物本体より短い耐用年数(多くは15年)が定められています。見積書や請負契約の内訳で設備部分の金額が確認できれば、その部分を建物附属設備として償却できます。ただし、内訳の根拠がない金額を任意に振り分けることはできません。区分の可否は着工前に工事会社と内訳の出し方を決めておくのが確実です。
ユニットバスやキッチンは「器具及び備品」として短く償却できますか?
国税不服審判所の平成2年1月30日裁決では、建具・畳・ユニットバス等は建物と構造上独立・可分とはいえないとして、器具及び備品ではなく「建物」に当たるとされました。建物に固定され、建物本来の効用を維持するためのものは、原則として建物(または建物附属設備)として扱うと考えてください。
税務で附属設備を分けると、決算書でも別々に表示しなければなりませんか?
会社計算規則では、有形固定資産の項目として「建物及び暖房、照明、通風等の付属設備」がまとめて示されており、貸借対照表で建物と附属設備を合わせて表示することも考えられます。一方、税務上は固定資産台帳で種類・耐用年数ごとに管理する必要があります。表示のしかたは会社の規模や会計方針によるため、顧問税理士と確認してください。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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