個人と法人・損益通算

役員から会社への貸付けと利息の扱い|無利息は認められるか、最高裁判決と令和7年の裁決、利率の決め方と銀行の見え方

不動産を買うとき、頭金や諸費用を社長個人の預金から会社に入れることはよくあります。出資ではなく貸付けにすれば、会社の決算書には役員借入金として残ります。

このとき、「利息は付けるべきか」「無利息でも問題ないか」「付けるなら何%にするか」という質問をよく受けます。この記事では、社長から会社への貸付けの利息を、会社側・社長側の税務、所得税法157条が適用された最高裁判決と令和7年の公表裁決、決算書の区分と銀行の見え方の順に整理します。役員借入金が銀行の自己資本の評価でどう扱われるか、債権放棄やDESの課税については、役員借入金は融資でどう見られる?で詳しく扱っています。

この記事の結論
  • 利息を付ければ、会社は支払利息を損金に、社長は受取利息を雑所得(総合課税)にする
  • 無利息でも、会社側で利息相当額を益金にする必要は通常ない。ただし社長側で、所得税法157条により利息相当額が雑所得とされることがある
  • 最高裁平成16年7月20日判決と令和7年3月7日の公表裁決は、いずれも多額・無期限・無担保・無利息で、無利息とする合理的な理由がなかった事案
  • 利息を付けるなら、会社が銀行から同じ条件で借りるとしたらいくらかを物差しに決め、契約書を作る
  • 決算書では返済期限に応じて流動・固定を実態どおりに区分する。銀行には貸付けの趣旨と返済方針を説明できるようにする

利息を付ける・付けないで何が変わるか

項目利息を付ける(適正な利率)無利息利息が高すぎる
会社(法人税)支払利息が損金益金は通常生じない適正額を超える部分が社長への利益移転と見られるおそれ
社長(所得税)受取利息が雑所得原則課税なし。ただし157条の適用があり得る雑所得(全額)
消費税利子は非課税同左同左
銀行の見え方支払利息の分、経常利益が減る経常利益は減らない会社から社長への資金流出と見られる

会社側:無利息で借りても益金は通常生じない

法人税法22条2項は、益金の額に算入するものとして「無償による資産の譲受け」を挙げていますが、無償で役務の提供を受けたこと(無利息で借りたこと)自体は挙げていません。そのため、会社が社長から無利息で借りても、利息相当額を益金に計上する必要は通常ありません。

利息を付ける場合、会社が払う利息は支払利息として損金になります。ただし、会社の資金繰りや信用力からみて明らかに高すぎる利率は、会社から社長への利益の移転と見られるおそれがあります。

社長側:受取利息は雑所得

個人が会社に貸したお金の利息は、原則として雑所得で、ほかの所得と合算して累進税率で課税されます。銀行預金の利子のように源泉徴収だけで終わる扱いではありません。給与所得者で年末調整を受けている人は、給与以外の所得が年20万円以下なら所得税の確定申告が不要な場合がありますが、住民税の申告は別に必要です。

無利息貸付けと所得税法157条:最高裁判決と公表裁決

最高裁平成16年7月20日第三小法廷判決(平成11年(行ヒ)第169号)

事案:同族会社に当たる有限会社の代表者で、出資持分の大半を持つ社員が、会社に3,455億円を超える金銭を無利息・無期限・無担保で貸し付けました。税務署長は所得税法157条を適用し、利息相当分の雑所得があるとして所得税を増額更正しました。

判断:最高裁は、この貸付けが不合理・不自然な経済活動で、社員が経営責任を果たすために行ったとは認めがたいものとしたうえで、主に過少申告加算税の「正当な理由」について判断しました。国税局職員が編集・監修した解説書に、会社へ無利息貸付けをした代表者個人に所得税は課されない旨の記述があったものの、その記述は代表者の経営責任の観点から無利息貸付けに社会的・経済的に相当な理由があることを前提とするものであるなどとして、正当な理由があるとは認められないと判断しています。

確認先:裁判所 裁判例検索(最高裁平成16年7月20日判決)

令和7年3月7日裁決

事案:請求人は、自分の長男がすべての株式を持つ同族会社に、保有していた株式を約29億円で譲渡しました。会社は銀行からの借入れで代金を払い、その後、請求人は受け取った資金をもとに、会社の銀行借入れの返済に充てるため、約23億円を無利息・無期限・無担保で会社に貸し付けました。税務署長は157条を適用し、利息相当額を雑所得に加算しました。

判断(争点1):審判所は、株主等から同族会社への無利息貸付けが経済的合理性を欠くかどうかは、貸付けの目的、金額、期間等の融資条件、無利息とした理由等の諸事情を総合的に考慮して判断するとしました。そのうえで、融資条件が独立当事者間の取引と大きく異なること、利息を付けても会社が倒産する危険があったとはいえないことなどから、無利息としたことは経済的合理性を欠き、157条の「不当に減少させる結果となる」ものに当たると判断しました。請求人の「役員の会社への貸付けは無利息が一般的」「自己資金で行った」「会社は債務超過だった」といった主張は採用されていません。

判断(争点2):利息相当額の利率は、通常の利息付きの貸付けのうち条件が類似するものを基準とすべきとし、会社が実際に銀行と結んだ融資契約のうち、金額・期間の点で最も類似するものの利率(市場金利に一定の上乗せをする方式)に準じた利率を用いたことを合理的と認めました。定期預金の利率を使うべきだという主張は、無担保の貸付けは預金より回収不能のリスクが高いとして退けられています。

確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(令和7年3月7日裁決)

2つの事例から読み取れること

どちらも、金額が非常に大きく、無期限・無担保で、無利息とする合理的な理由が示されなかった事案です。最高裁判決が触れている解説書の記述のように、経営責任の観点から会社を支えるための無利息貸付けに相当な理由がある場面まで、一律に否定されたわけではありません。逆にいえば、「役員の貸付けは無利息が当たり前」という理由だけでは足りず、金額・期間・目的・会社の状況から、無利息とする理由を説明できるかが問われます。

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利息を付けるときの利率の決め方

物差し考え方注意点
会社の銀行借入金利会社が同じ金額・期間・担保条件で銀行から借りるとしたらいくらか令和7年の裁決でも、会社の実際の融資契約の利率が参照された
市場金利+上乗せ短期金利・長期金利の指標に、信用力に応じた上乗せ変動にするなら見直し時期を決める
社長の調達コスト社長が銀行から借りて会社に転貸するなら、その金利借入れの資金使途が銀行との約定に合っているか

どの方法でも、金銭消費貸借契約書(金額、利率、返済期限、返済方法、期限前返済)を作り、契約どおりに利息を払い、社長は確定申告で雑所得として申告します。利息を未払いのまま積み上げると、会社側では未払費用、社長側では収入すべき時期の問題が生じるので、支払いの実態も合わせておきましょう。

会計上の扱いと決算書の表示

流動か固定かは返済期限で決まる

役員借入金は、返済期限が決算日から1年以内に到来するものは流動負債(短期借入金)、それを超えるものは固定負債(長期借入金)に区分するのが基本です。この区分は、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って、契約の内容で判断します。

著書では「資産は上に、負債は下に」という言葉で、流動比率を意識したBSの整え方を説明しています。役員借入金でいえば、実際には長期で返す予定なのに契約書がなく、短期借入金として表示されているために流動比率が低く見えている、というケースがあります。この場合にすべきことは、返済期限を定めた契約書を作り、その内容に沿って区分することです。返済期限を延ばした形だけ作って実態と違う区分にする、という使い方はできません。区分の判断は顧問税理士・会計の専門家と検討してください。BSの区分全般は「資産は上に、負債は下に」とはで整理しています。

利息は営業外費用

会社が払う利息は、損益計算書では営業外費用(支払利息)に表示され、営業利益ではなく経常利益に影響します。税務上の損金算入の可否と、決算書のどの区分に表示するかは、別の問いです。

銀行からの見え方

見られる点役員借入金と利息で起きること
自己資本の評価返済予定がなく劣後的な役員借入金は、自己資本に近いものとして見てもらえることがある。確認書を求められることもある
経常利益・ICR利息を払えば支払利息が増え、経常利益が減る
債務償還年数役員借入金を借入金に含めるかどうかで年数が変わる
資金流出高い利息や頻繁な返済は、会社から社長への資金流出と見られる

著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で計算します。役員借入金を自己資本とみなしてもらえれば分子から外れ、年数は短くなります。そのためには、利息の条件や返済方針が「当面返済しない、会社を支える資金」であることと矛盾しないようにしておく必要があります。高い利息を毎月受け取っていると、銀行からは通常の負債と同じに見えます。

税務上は無利息に157条のリスクがあり、銀行の目線では利息の支払いが経常利益を減らす。この2つのバランスを、金額と期間に応じて考えることになります。

実務のチェックポイント

チェック項目確認する内容
契約書金銭消費貸借契約書があり、金額・利率・返済期限・返済方法が書かれているか
無利息の理由無利息にするなら、目的・金額・期間・会社の状況から理由を説明できるか
利率の根拠利息を付けるなら、会社の銀行借入金利など類似条件の利率と比べたか
申告社長が受取利息を雑所得として申告しているか(住民税を含む)
決算書の区分返済期限に応じて流動・固定を区分しているか
銀行への説明役員借入金の趣旨と返済方針を説明できるか。確認書の要否
相続役員借入金は社長の相続財産(貸付金債権)になる。残高の推移を把握しているか

まとめ

  • 利息を付ければ会社は損金、社長は雑所得。無利息でも会社側に益金は通常生じない
  • 無利息貸付けでも、多額・無期限・無担保で合理的な理由がないと、所得税法157条で社長の雑所得が引き直される(最高裁平成16年7月20日判決、令和7年3月7日裁決)
  • 利率は会社が銀行から同じ条件で借りる場合を物差しにし、契約書を作る
  • 決算書では返済期限に応じて流動・固定を実態どおりに区分する
  • 銀行には、役員借入金の趣旨と返済方針を、利息の条件と矛盾しない形で説明する

役員借入金は、会社を支える大切な資金である一方、税務・会計・融資のそれぞれで論点があります。クレフティでは、不動産投資家向けサポートの中で、社長と会社の資金のやりとりの整理から、決算書の区分、銀行への説明までご相談をお受けしています。

よくある質問

社長が自分の会社にお金を貸すとき、利息を付けないといけませんか?
必ず付けなければならないわけではありません。会社が無利息で借りても、会社側で利息相当額を益金にする必要は通常ありません。ただし、多額の金銭を無利息・無期限・無担保で貸し、無利息とする合理的な理由がない場合には、所得税法157条により、社長が受け取るべきだった利息相当額が雑所得とされた最高裁判決や公表裁決があります。金額・期間・目的に照らして判断する必要があります。
会社から受け取る利息は、社長の何所得になりますか?
個人が会社に貸したお金の利息は、原則として雑所得として総合課税の対象になります。銀行預金の利子のような源泉分離課税ではありません。給与所得者で年末調整を受けている人は、給与以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告が不要な場合がありますが、住民税の申告は別に必要です。
役員借入金は、決算書でどこに表示すればよいですか?
返済の期限や約定に応じて、1年以内に返済するものは流動負債、それを超えるものは固定負債に区分するのが基本です。実態は長期で返済予定もないのに短期借入金として表示していると、流動比率が低く見えます。ただし、表示区分は契約の実態で決まるものなので、返済期限を定めた契約書を作り、その内容に沿って区分してください。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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