売却・相続

固定資産の交換の特例とは|土地と土地・建物と建物の等価交換の要件(20%・1年・同一用途)、法人の圧縮記帳、消費税と裁決事例

隣地の所有者と土地の一部を交換して形を整える、底地と借地権を交換して権利関係を整理する。不動産の世界では、売買ではなく交換で資産を入れ替える場面があります。交換は、税法上は「資産を売って、その代金で別の資産を買った」のと同じ扱いが原則ですが、一定の要件を満たせば、固定資産の交換の特例により譲渡がなかったものとされます。

ただし、特例が効くのは所得税・法人税だけです。消費税、登録免許税、不動産取得税は別に考える必要があります。また、法人では会計上の処理と税務上の圧縮記帳の関係も整理しておく必要があります。この記事では、要件、法人と個人の違い、裁決事例、会計処理と銀行の見え方を解説します。

この記事の結論
  • 同じ種類の固定資産(土地と土地、建物と建物など)を交換し、要件を満たせば、譲渡がなかったものとされる(個人は所得税法58条、法人は法人税法50条の圧縮記帳)
  • 主な要件は、双方1年以上の所有、交換のために取得したものでないこと、同一用途に使うこと、時価の差が高い方の20%以内
  • 交換差金を受け取ればその分は課税。相手が棚卸資産として持っていた土地は対象外とした裁決がある
  • 消費税・登録免許税・不動産取得税は特例の対象外。建物の交換は消費税の課税売上げになりうる
  • 会計上は、同種・同一用途の交換は譲渡資産の帳簿価額を引き継ぐ考え方があり、含み益は決算書に表れにくい。銀行には時価の資料で説明する

交換の特例の要件

国税庁のタックスアンサーNo.3502「土地建物の交換をしたときの特例」は、個人の交換の特例の要件を次のように示しています。法人の場合も、法人税法50条で同様の要件が定められています。

要件内容
固定資産どうし譲渡する資産・取得する資産とも固定資産であること。不動産業者などが販売のために持つ棚卸資産は対象外
同じ種類土地と土地、建物と建物のように同じ種類であること。借地権は土地の種類、建物附属設備・構築物は建物の種類に含まれる
自分の所有期間譲渡する資産を1年以上所有していたこと
相手の所有期間取得する資産は、相手が1年以上所有していたもので、交換のために取得したものでないこと
同一用途取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使うこと
時価の差譲渡する資産と取得する資産の時価の差額が、いずれか高い方の時価の20%以内であること

用途の区分

同一用途かどうかは、次の区分で判断します(タックスアンサーNo.3502)。

  • 土地:宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場または原野、その他
  • 建物:居住用、店舗または事務所用、工場用、倉庫用、その他用

たとえば、宅地と宅地の交換は対象になりますが、宅地と田畑の交換は対象になりません。建物では、居住用の賃貸アパートどうしの交換は対象になりえますが、賃貸アパートと事務所ビルの交換は用途が違うため対象外です。

交換差金の扱い

交換する資産の時価が完全に一致することは少なく、差額は金銭(交換差金)で精算するのが通常です。交換差金を受け取った場合、特例が適用されても、交換差金の部分は譲渡所得として課税されます。また、時価の差が高い方の20%を超えると、特例そのものが使えなくなります。

法人と個人の違い

項目個人法人
根拠所得税法58条法人税法50条
効果譲渡がなかったものとみなす取得資産の帳簿価額を減額(圧縮記帳)し、その額を損金算入
取得資産の取得価額譲渡資産の取得費を引き継ぐ(交換差金などで調整)圧縮後の帳簿価額で以後の減価償却を行う
手続確定申告書に譲渡所得の内訳書を添付して申告確定決算で圧縮額を経理し、申告書に明細を記載
交換差金を受け取った場合差金に対応する部分は課税差金に対応する部分は圧縮できない

法人の場合、交換の特例は「自動的に課税されない」のではなく、確定した決算で圧縮記帳を経理することで、交換による譲渡益に見合う額を損金に算入する仕組みです。経理を忘れると特例の効果は得られません。

個人の場合、取得した資産の取得費は譲渡した資産の取得費を引き継ぐため、将来その資産を売るときには、交換前からの値上がり益もあわせて課税されます。課税の繰延べという点では、特定の事業用資産の買換え特例と同じ性格です。なお、交換による譲渡は買換え特例の対象外とされています。

特例の対象外になる税金:消費税・登録免許税・不動産取得税

交換の特例は所得税・法人税の制度です。次の税金は、特例とは関係なくかかります。

税目交換での扱い
消費税交換も資産の譲渡に当たる。課税事業者が建物を交換で手放すと、建物部分は課税売上げ。対価の額は取得した資産の時価(交換差金の授受があれば調整)で計算する。土地は非課税
登録免許税所有権移転登記に、固定資産税評価額を基準とした登録免許税がかかる
不動産取得税交換で取得した不動産にも、原則として不動産取得税がかかる
印紙税交換契約書は不動産の譲渡に関する契約書として課税文書になる

特に消費税は見落としがちです。建物どうしを交換した課税事業者は、手放した建物の時価分の課税売上げが生じます。取得した建物が居住用賃貸建物なら仕入税額控除が制限されるため、交換で消費税だけが負担になるケースもあります。建物の売却と消費税の関係は建物を売ったときの消費税、取得時の税金は不動産取得税・登録免許税は経費か取得価額かを参照してください。

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公表裁決:交換の特例が認められなかった事例

平成7年7月4日裁決(裁決事例集No.50・77頁):相手が棚卸資産として持っていた土地

  • 事案:個人が、昭和28年に取得した土地を、会社が昭和63年に取得した土地と交換し、時価の20%以内の交換差金を受け取った。請求人は特例の対象になると主張した
  • 争点:相手の会社が所有していた土地は、交換の特例の対象となる固定資産か
  • 判断:相手の会社の稟議書には商業ビルの請負工事条件付きの転売目的で取得する旨が記載され、会社の貸借対照表でも棚卸資産として計上されていた。会社の総務部長も、取得から交換まで棚卸資産であり、固定資産として利用した事実はない旨の確認書を提出していた。これらから、相手の土地は棚卸資産と認められ、特例の対象にならないとされた(国税不服審判所)

実務への示唆:特例の要件は自分の資産だけでなく、相手の資産の性格や所有期間にも及びます。不動産会社と交換する場合は、相手がその土地を固定資産として持っていたか、販売用(棚卸資産)として持っていたかを、事前に確認しておく必要があります。相手の会社の帳簿上の区分が判断材料になった点も注目されます。

昭和60年2月27日裁決(裁決事例集No.29・39頁):相手の所有期間が1年未満の借地権部分

  • 事案:交換で取得した土地には、相手が取得してから1年に満たない借地権部分が含まれていた
  • 判断:その借地権部分は特例の対象となりえず、それを交換差金とみても、その価額が譲渡した土地の価額の20%相当額を超えるとして、特例の適用を否認した原処分が相当とされた。借地権はそれ自体独立して特例の対象となる資産であり、登記されている借地権に限られるものではないとされた(国税不服審判所)

実務への示唆:一体の土地に見えても、権利ごとに所有期間を確認する必要があります。相手が交換の直前に権利の一部を取得していると、その部分が要件を満たさず、特例全体が使えなくなることがあります。

会計上の処理と決算書の表示

決算書の処理は、企業会計の基準、つまり一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って判断します。中小企業では、企業会計原則や「中小企業の会計に関する指針」「中小企業の会計に関する要領」などが中心です。

企業会計の考え方では、自己所有の固定資産と交換に同種・同一用途の固定資産を取得した場合、譲渡した資産の適正な帳簿価額を取得資産の取得原価とする考え方があります(「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」第三)。この場合、交換による売却益は計上されません。一方、異なる種類の資産との交換や、実質的に売却と再取得とみるべき取引では、時価で売却益を認識する考え方もあります。

処理の考え方決算書の見え方税務との関係
帳簿価額を引き継ぐ交換益は計上されず、取得資産は旧資産の簿価で計上法人税の圧縮記帳と結果がほぼ一致する
時価で売却益を認識し、圧縮記帳(直接減額)する特別利益(交換益)と特別損失(圧縮損)が両建てで計上される税務上の圧縮記帳の要件を満たす経理
時価で売却益を認識し、積立金方式で圧縮する交換益が利益として残り、純資産が増える申告書で圧縮積立金の額を減算

交換差金を受け取った場合は、その部分について固定資産売却益を計上するのが基本です。賃貸用の固定資産の交換による損益は、原則として特別損益に表示します。どの処理・どの表示区分を採るかは、取引の実態と会社の会計方針で判断するもので、税務上の圧縮記帳の要件を満たす経理をしているかも確認が必要です。税務上の損金算入と決算書の表示は別の問いですので、顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

銀行からの見え方

含み益は決算書に表れにくい

帳簿価額を引き継ぐ処理や直接減額方式の圧縮記帳では、交換で取得した資産は古い簿価のまま決算書に載ります。たとえば昔に安く買った土地を交換した場合、取得した土地の時価がどれだけ高くても、決算書上の土地は低い簿価のままです。

銀行は、決算書の簿価だけでなく、担保評価として時価も見ます。含み益が大きい資産は、実質的な純資産を押し上げる要素として評価されることがありますが、銀行がそれを自動的に認識してくれるわけではありません。交換で取得した資産の時価の資料(鑑定評価や査定)を用意し、実質的な財務内容を説明することが大切です。

交換の目的を説明する

交換は売買と比べて珍しい取引のため、決算書に交換差金や圧縮損が出てくると、銀行から説明を求められることがあります。土地の形を整えて建築できる面積を広げた、底地と借地権を整理して担保価値を上げた、といった交換の目的と効果を説明できれば、前向きな取引として評価されやすくなります。著書のモデルでは、債務償還年数や純資産が格付けの重要な要素ですが、交換そのものは借入金を減らす取引ではないため、評価に効くのは資産価値の向上をどう伝えるかです。

実務のチェックポイント

タイミング確認すること
交換の検討時自分と相手の資産が、ともに1年以上所有の固定資産か(相手が棚卸資産として持っていないか)
交換の検討時土地と土地・建物と建物の同種の交換か、取得後に同じ用途に使うか
交換の検討時鑑定評価などで双方の時価を確認し、差額が高い方の20%以内か
交換の検討時消費税(建物部分の課税売上げ)、登録免許税、不動産取得税の負担を試算したか
契約時交換契約書に、各資産の時価と交換差金の額を明記したか
決算・申告時(法人)確定決算で圧縮記帳を経理し、申告書に明細を記載したか
決算・申告時(個人)譲渡所得の内訳書を添付して申告し、交換差金の部分を課税対象に含めたか
銀行への説明交換の目的と、取得資産の時価の資料を用意したか

まとめ

  • 固定資産の交換の特例は、同種の固定資産を同一用途で交換する場合に、所得税・法人税の上で譲渡がなかったものとする制度。課税の繰延べであり、取得費は引き継がれる
  • 要件は、双方1年以上の所有、交換のための取得でないこと、同一用途、時価の差が高い方の20%以内。相手が棚卸資産として持っていた土地は対象外とした裁決がある
  • 消費税・登録免許税・不動産取得税は特例の対象外。建物の交換は消費税の課税売上げになりうる
  • 会計上は、同種・同一用途の交換で帳簿価額を引き継ぐ考え方がある。処理と表示区分はGAAPに沿って判断し、税務上の圧縮記帳の要件を満たす経理になっているかも確認する
  • 簿価を引き継ぐと含み益は決算書に表れにくい。銀行には時価の資料と交換の目的で説明する

交換の要件確認から、決算書の処理と銀行への説明まで、不動産投資家向けサービスでご相談いただけます。

よくある質問

隣地の所有者と土地を交換したいのですが、税金はかかりますか?
要件を満たせば、所得税(法人なら法人税)の上では交換による譲渡がなかったものとされます。主な要件は、双方とも1年以上所有していた固定資産であること、土地と土地のように同じ種類であること、交換前と同じ用途に使うこと、交換する資産の時価の差が高い方の20%以内であることです。ただし、交換差金を受け取ればその部分は課税されますし、登録免許税や不動産取得税は特例とは別にかかります。
交換の特例を使えば、消費税もかからないのですか?
かかります。交換の特例は所得税・法人税の規定であり、消費税では交換も資産の譲渡に当たります。課税事業者が建物を交換で手放した場合、建物部分は課税売上げになり、その対価の額は交換で取得した資産の時価などで計算します。土地の部分は非課税です。課税売上割合への影響も含めて、事前に確認してください。
賃貸アパートと事務所ビルを交換しても、特例は使えますか?
建物どうしの交換でも、交換直前の用途と同じ用途に使うことが要件です。国税庁のタックスアンサー(No.3502)では、建物の用途は居住用、店舗または事務所用、工場用、倉庫用、その他用に区分されています。居住用の賃貸アパートを手放して、取得した事務所ビルを事務所用に使う場合は、用途が異なるため特例の対象になりません。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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