「会社でゴルフ会員権を持っているが、決算書に載っている金額と今の相場がまったく違う」。法人のご相談で、ときどき出てくる話です。法人のゴルフ会員権の税務は、取得時は資産計上、持っている間の年会費は交際費か給与、売れば売却損益、そして相場が下がっても原則として評価損は損金にならない、という独特のルールで動いています。
相場はいま上がっています。日本経済新聞(2026年10月18日)によると、ゴルフ会員権の価格はおよそ17年ぶりの水準で、関東の主要150コースの平均は2019年末より約8割高い300万円台とのことです。2019年ごろに会社で買った会員権には売却益が出ている一方、バブル期に数千万円で買った会員権は今も帳簿価額を大きく下回っていることが多く、閉鎖して預託金が返らないゴルフ場もあります。この記事では、それぞれの場面の処理と、銀行からの見え方を整理します。
- 法人会員として入会した入会金、他人から買ったときの購入代価と名義書換料は資産計上。償却はできない
- 年会費・ロッカー料は、入会金を資産計上していれば交際費、給与とされていれば給与
- 売却損益は売った期の益金・損金。消費税は会員権の譲渡が課税売上になる
- 相場が下がっただけでは評価損は損金にならない(平成16年1月15日裁決)。預託金が金銭債権として顕在化したときに貸倒の対象になる
- 銀行は会員権を時価で見直すことがある。簿価のまま持ち続けると、実態BSで純資産が削られて見える
取得したとき:入会金も名義書換料も資産に計上する
法人がゴルフクラブに入会するときの処理は、法人税基本通達9-7-11で定められています(国税庁 法人税基本通達 第3款 会費及び入会金等の費用)。
| 入会の形 | 入会金の扱い |
|---|---|
| 法人会員として入会 | 資産に計上 |
| 記名式の法人会員だが、名義人の役員・使用人が専ら業務に関係なく使う | その役員・使用人への給与 |
| 個人会員として入会 | 原則としてその役員・使用人への給与 |
| 無記名式の法人会員制度がないため個人会員として入会し、業務上必要と認められる | 法人の資産として計上できる |
他人が持っていた会員権を買った場合は、購入代価に加えて、名義を変えるためにゴルフクラブに払う名義書換料も入会金に含めて資産計上します(同通達の注)。資産に計上した入会金は償却できません(9-7-12)。
消費税については、国税庁のタックスアンサー(No.6249 ゴルフ会員権)で、返還を要しない入会金や名義書換料は課税の対象、預託金や出資金は対価に当たらず課税の対象外、事業者が会員権業者から会員権を買う場合は課税仕入れになると整理されています。
持っている間:年会費・プレー代は交際費か給与
会員権を持っている間にかかる費用は、9-7-13で次のように扱われます。
- 年会費、年決めロッカー料など(記名者を変更するときの名義書換料を含む):入会金を資産計上している場合は交際費、入会金が給与とされている場合はその役員・使用人への給与
- プレーするときに直接かかる費用:業務の遂行上必要と認められれば交際費、そうでなければその役員・使用人への給与
取得のときの名義書換料は資産、取得後に記名者を変えるための名義書換料は交際費、と扱いが分かれる点に注意してください。
取引先との接待ゴルフであれば交際費ですが、交際費には損金算入の限度があります。中小法人の交際費の枠と飲食費の基準については、不動産賃貸業の交際費で解説しています。
一方、社長が家族や友人とのプライベートなプレーに会社の会員権を使い、その費用を会社が負担していると、役員への給与(経済的利益)として扱われる可能性があります。役員給与は損金にならない部分が出やすく、源泉所得税の問題にもなります。誰が、誰と、何のために使ったかを記録しておくことが大切です。
売ったとき:売却益は益金、売却損は損金
法人がゴルフ会員権を売れば、売却額と帳簿価額の差額が、売った期の益金(利益)または損金(損失)になります。9-7-12でも、会員としての地位を他に譲渡したことで生じた入会金に係る譲渡損失は、譲渡した期の損金に算入するとされています。
個人の場合、ゴルフ会員権の売却損は給与所得などと相殺できませんが(ゴルフ会員権を売ったときの税金(個人))、法人の場合は他の事業の利益と相殺できます。ここが法人と個人の大きな違いです。
| 場面 | 法人の処理 |
|---|---|
| 2019年ごろ取得、相場上昇で売却 | 売却益は益金。法人税の対象 |
| バブル期に取得、相場下落のまま売却 | 売却損は損金。他の利益と相殺できる |
| 会員権の譲渡(消費税) | 預託形態・株式形態とも課税売上 |
| 業者への売却手数料 | 損金(課税仕入れ) |
消費税の課税売上になる点は見落としやすいところです。課税事業者の法人では、売却額に含まれる消費税を納めることになり、課税売上割合の計算にも影響します。
相場が下がった・ゴルフ場が破綻したとき:評価損と貸倒
相場の下落だけでは評価損は損金にならない
法人税法33条1項は、資産の評価換えをして帳簿価額を減らしても、その減額分は原則として損金に算入しないと定めています。例外は、同条2項と法人税法施行令68条に定める事実(災害による著しい損傷、1年以上の遊休など)がある場合に限られます。
国税不服審判所の平成16年1月15日裁決(裁決事例集No.67・464頁、公表裁決事例)は、法人が預託金制ゴルフ会員権の評価換えで約1,256万円の評価損を損金に算入した事案です。審判所は、優先的に施設を使える間の預託金制ゴルフ会員権は、減価償却資産以外の無形固定資産に当たり、法人税法上の有価証券には当たらないとしたうえで、単なる取引価格の下落は固定資産の評価損の要件とされていないとして、損金算入を認めませんでした。会計基準に従って処理したという主張も退けられています。
預託金が「金銭債権」になったときは貸倒の対象
一方、9-7-12の注では、預託金制の会員権について、退会の届出、預託金の一部切捨て、破産手続開始の決定などの事実で預託金返還請求権の全部または一部が顕在化した場合、その部分は金銭債権として貸倒損失や貸倒引当金の対象にできるとされています。国税庁の質疑応答事例と合わせると、次のように整理できます。
| 状況 | 税務上の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 相場が下がっただけ | 評価損は損金不算入 | 法人税法33条1項、平成16年1月15日裁決 |
| 経営会社に会社更生法の申立てがあっただけ(退会していない) | 金銭債権に当たらず、個別評価の貸倒引当金は不可 | 質疑応答事例 |
| 民事再生の再生計画認可で預託金の一部が切り捨てられた | 切り捨てられた部分は、原則として貸倒損失 | 質疑応答事例 |
| 退会届を出した、破産手続開始の決定があった | 顕在化した預託金返還請求権は金銭債権として貸倒損失・貸倒引当金の対象 | 法人税基本通達9-7-12(注) |
| 脱退しても返還されない入会金 | 脱退した期の損金 | 法人税基本通達9-7-12 |
なお、民事再生で預託金の一部が切り捨てられた場合でも、会員権を預託金の額面以下で買っていたときは、貸倒損失にできる金額は帳簿価額と切捨て後の預託金の額との差額が限度とされています。中古で安く買った会員権では、切捨て額がそのまま損金になるわけではありません。
閉鎖したゴルフ場の会員権を持っている場合は、退会届の提出、経営会社の手続の状況、返還の見込みを書類で確認し、どの期に、いくら損金にできるかを税理士と検討してください。
決算書の表示と、銀行からの見え方
決算書では「投資その他の資産」、売却損益は特別損益に
ゴルフ会員権は、貸借対照表では通常「投資その他の資産」に計上されます。売却損益や貸倒損失は、本業と関係のない臨時の損益なので、損益計算書では特別利益・特別損失に表示するのが一般的です。特別損失の表示と銀行の見方については、不動産の売却損は特別損失?もあわせてご覧ください。
銀行は実態BSで時価に引き直すことがある
銀行は決算書をそのまま使うのではなく、資産を時価に引き直した実態BSで会社の純資産を見ることがあります。たとえば、バブル期に2,000万円で取得し、帳簿にそのまま2,000万円で載っている会員権の相場が100万円なら、銀行の目線では約1,900万円の純資産が実在しないことになります。
逆に、相場が上がった会員権でも、帳簿価額のまま載っている限り含み益は決算書には出ません。含み益・含み損と実態BSの関係は、含み益・含み損と銀行の実態BSで詳しく解説しています。
「使っていない会員権」は財務の重荷になりやすい
業務でほとんど使っていない会員権は、年会費という交際費を毎年生み、帳簿価額と相場のずれで実態純資産を削り、銀行からは「社長の趣味の資産」と見られがちです。相場が高い今は、売却して現預金に替えたり、含み損を売却損として確定させたりする判断を検討しやすい時期です。
著書のモデルでは、プロパー融資の目安を「正常先+純資産1億円」としています。会員権の処理ひとつで純資産1億円に届くかどうかが変わることもあります。売るか持つかの判断の考え方は、含み損のある資産は売るべきか持つべきかで解説しています。
まとめ
- 法人会員の入会金、購入代価、取得時の名義書換料は資産計上し、償却しない
- 年会費・ロッカー料は交際費か給与。プライベート利用は役員給与になるおそれがある
- 売却損益は売った期の益金・損金。法人なら売却損を他の利益と相殺できる。消費税は課税売上
- 相場の下落だけでは評価損は損金にならない。預託金が金銭債権として顕在化したときに貸倒の対象になる
- 銀行は会員権を時価で見直すことがある。使っていない会員権は、相場が高い今こそ扱いを考える
決算書のどこに、どの金額で載せ、銀行にどう説明するか。会員権のような資産の整理は、財務設計の一部です。代表の相亰と髙橋が構築した独自の財務設計の手法(クレフティメソッド)をもとに、決算書と銀行の見え方を一緒に整えます。初回のご相談は無料で、担当の営業担当者がお話を伺い、その後は担当税理士または金融機関出身のコンサルタントが対応します。
