「10年近く使っていなかったゴルフ会員権を売ろうと思うが、税金はかかるのか」。最近、こうしたご相談が増えています。ゴルフ会員権を売ったときの税金は、個人の場合、総合課税の譲渡所得として給与などと合算して計算します。利益が出れば課税され、損が出ても他の所得とは相殺できません。
背景には相場の上昇があります。日本経済新聞(2026年10月18日)によると、コロナ禍後のゴルフ人気の復活で会員権の価格はおよそ17年ぶりの水準まで上がり、関東の主要150コースの平均は300万円台と、2019年末より約8割高くなっています。都心に近いコースに人気が集中する一方、閉鎖するゴルフ場もあり、地域差は広がっているとのことです。
つまり、2019年ごろに買った会員権には売却益が出ている方が多く、反対にバブル期に高値で買った会員権はいまも含み損のままということがよくあります。さらに、閉鎖で預託金が返ってこないケースもあります。この3つは、税金の扱いがそれぞれ違います。
- 個人がゴルフ会員権を売った利益は総合課税の譲渡所得。預託金型でも株主会員制でも同じ
- 譲渡益から特別控除50万円を引き、所有期間が5年を超えていれば2分の1だけが課税対象になる
- 取得費には購入価額・名義書換料・業者手数料などが入る。年会費は入らない
- 売却損は給与所得や不動産所得と損益通算できない(平成26年4月1日以後の譲渡から)
- 退会して預託金が一部しか返らない場合、その不足額は所得税の計算上考慮されない
ゴルフ会員権の売却益は「総合課税の譲渡所得」
ゴルフ会員権には、大きく分けて次の2つの形があります。
- 預託金型:入会時に預託金をゴルフ場経営会社に預け、一定の据置期間が過ぎれば退会時に返還を請求できる形
- 株主会員制:ゴルフ場経営会社の株主にならなければ会員になれない形
株主会員制の会員権は株式の形をとっていますが、国税庁のタックスアンサー(No.3158 ゴルフ会員権の譲渡による所得)では、どちらの形でも、売った所得は譲渡所得として他の所得と合わせて総合課税の対象になるとされています。上場株式のような申告分離課税(約20%の定率)ではない点に注意が必要です。給与や不動産所得が多い方ほど、高い税率がかかります。
なお、会員権を営利目的で継続的に売買している場合は、譲渡所得ではなく、実態に応じて事業所得または雑所得になります。
譲渡所得の計算:取得費・特別控除50万円・2分の1課税
計算の流れ
譲渡益は「譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。ここから特別控除50万円を差し引き、所有期間が5年を超える長期譲渡なら、さらに2分の1にした金額が課税の対象になります。
特別控除50万円は、その年のゴルフ会員権以外の総合課税の譲渡益(たとえば骨とう品や機械など)と合わせて50万円までです。短期と長期の両方の譲渡益がある年は、短期の譲渡益から先に控除します。
取得費・譲渡費用に入るもの、入らないもの
国税庁の質疑応答事例(ゴルフ会員権を譲渡した場合の取得費及び譲渡費用)をもとに整理すると、次のとおりです。
| 支出 | 扱い |
|---|---|
| 入会金・預託金・株式払込金(新規入会の場合) | 取得費 |
| 第三者から買ったときの購入価額 | 取得費 |
| 購入時の名義書換料 | 取得費 |
| 購入時に会員権業者へ払った手数料 | 取得費 |
| 会員権を買うための借入金の利子(使用開始の日までの期間分) | 取得費 |
| 売却時に会員権業者へ払った手数料 | 譲渡費用 |
| 年会費 | どちらにも入らない(維持管理費用) |
名義書換料は数十万円以上になることもあり、取得費に入れ忘れると税金を払いすぎます。購入時の売買契約書、名義書換料や手数料の領収書は、売るときまで保管しておいてください。
計算例(2019年に買った会員権を2026年に売る)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 450万円 |
| 取得費(購入価額230万円+名義書換料55万円+業者手数料5万円) | 290万円 |
| 譲渡費用(売却時の業者手数料) | 5万円 |
| 譲渡益 | 155万円 |
| 特別控除 | 50万円 |
| 長期なので2分の1 | 52.5万円が総所得に加わる |
数字は説明用の例です。2019年12月に買い、2026年10月に売れば所有期間は5年を超えるので長期になります。ゴルフ会員権のような総合課税の譲渡所得では、土地建物のように「譲渡した年の1月1日」で判定するのではなく、取得の日から譲渡の日までの期間で5年を判定します。
なお、無記名の会員権を記名式の正会員権に切り替えた場合、切替え時に払った金額は取得費に加わりますが、取得の日は当初の取得日のままとされています(国税庁 質疑応答事例)。
売却損は他の所得と相殺できない
平成26年4月1日以後の譲渡から通算できなくなった
バブル期に数千万円で買った会員権が、いま数百万円でしか売れない。こうしたケースでは大きな売却損が出ます。かつては、この損を給与所得などと損益通算して税金を減らすことができました。
しかし、平成26年度の税制改正で、損益通算できない「生活に通常必要でない資産」の範囲に「主として趣味、娯楽、保養又は鑑賞の目的で所有する不動産以外の資産(ゴルフ会員権等)」が加えられ(所得税法施行令178条1項2号)、平成26年4月1日以後の譲渡で生じた損失から、他の所得と損益通算できなくなりました(国税庁「平成26年分 所得税の改正のあらまし」、タックスアンサーNo.2250 損益通算)。
インターネット上には、改正前の「売却損で節税できる」という古い情報もまだ残っています。いまは給与所得とも不動産所得とも相殺できません。不動産所得の赤字と給与所得の損益通算の仕組みについては、不動産投資の赤字と損益通算で解説しています。
退会・閉鎖で預託金が返らないとき
売却ではなく、退会して預託金の返還を受ける場合もあります。国税庁の質疑応答事例(預託金制ゴルフクラブを退会し預託金の償還を受けた場合)では、退会して預託金の償還を受けるのは、優先的に施設を使う権利を自ら放棄し、単に貸付金債権を回収する行為であって、会員権の譲渡ではないとされています。
| 場面 | 個人の税務上の扱い |
|---|---|
| 会員権を売って利益が出た | 総合課税の譲渡所得(50万円控除、長期は2分の1) |
| 会員権を売って損が出た | 他の所得と損益通算できない |
| 退会し、預託金の一部しか返らなかった | 償還不足額は「家事上の損失」として考慮されない |
| 預託金より安く買った会員権で、取得価額以上の預託金が返ってきた | 雑所得 |
ゴルフ場の経営会社が民事再生などで預託金を全額切り捨て、施設を優先的に使う権利だけが残った場合の取得費の計算についても、国税庁の質疑応答事例(更生手続等により優先的施設利用権のみとなったゴルフ会員権をその後譲渡した場合)があります。経営会社の再建手続を経た会員権を売るときは、取得費の計算が特殊になるので、手続の書類をそろえて税理士に確認してください。
確定申告が必要になるのはどんなとき?
利益が出たとき
ゴルフ会員権の売却益は源泉徴収されないため、課税される所得が出れば、原則として翌年3月15日までに確定申告が必要です。目安は次のとおりです。
- 譲渡益が特別控除50万円以内に収まり、ほかに総合課税の譲渡益もなければ、譲渡所得は0円になる
- 給与所得者で、給与以外の所得金額の合計が20万円を超える場合は確定申告が必要(タックスアンサーNo.1900)
- 給与所得者でない方(個人事業主、不動産所得のある方など)は、もともと確定申告をしているはずなので、その申告に含める
所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が別に必要になることがあります。判定に迷う場合は、税務署か税理士に確認してください。
損が出たとき
売却損は他の所得と通算できないので、損を申告しても税金が戻ることは通常ありません。ただし、同じ年に会員権を複数売って利益と損失がある場合などは、計算の仕方で結果が変わることがあるため、取引の明細を残しておくことをおすすめします。
融資を受けている方が気をつけたい3つの点
不動産投資や事業で銀行から融資を受けている方にとって、ゴルフ会員権の売却は「税金」だけの話ではありません。
1. 確定申告書は銀行に読まれる
個人の融資審査では、確定申告書が基本資料になります。会員権の売却益で総所得が増えても、銀行は一時的な収入として返済能力の評価から外して見るのが普通です。逆に、申告書の内訳から「趣味の資産を売った」ことは読み取れます。説明を求められたら、売却の理由と、代金を何に使ったか(借入の返済、手元資金の積み増しなど)を答えられるようにしておきましょう。
2. 銀行は資産を「いま売れる値段」で見る
融資の際に提出する個人の資産一覧で、ゴルフ会員権を購入価額のまま書いていないでしょうか。銀行は資産を時価で見直して評価します。バブル期に買った会員権は、取得額ではなく現在の相場で見られます。含み益・含み損と銀行の評価の関係は、含み益・含み損と銀行の実態BSで詳しく解説しています。
3. 売却代金は「現預金」に変わる
相場が高い今、使っていない会員権を売って現預金に替えるのは、財務の面では悪くない選択です。銀行は現預金の厚みをよく見ています。ただし、売却益が出れば税金がかかるので、納税額を差し引いた手取りで資金計画を立ててください。不動産を売ったときの税金については不動産売却の税金をご覧ください。
会員権を法人で持っている場合は、税務の考え方がまったく違います。法人のゴルフ会員権の税務もあわせてお読みください。
まとめ
- 個人がゴルフ会員権を売った利益は、預託金型・株主会員制を問わず総合課税の譲渡所得
- 特別控除50万円を引き、所有5年超なら2分の1が課税対象。名義書換料などは取得費に入れる
- 売却損は平成26年4月1日以後の譲渡から、給与所得などと損益通算できない
- 退会で預託金が一部しか返らない場合、不足額は所得税の計算上考慮されない
- 融資を受けている方は、売却益の見え方と、代金の使い道まで考えておく
相場が上がっているいまは、売るかどうかを考えるよい機会です。税金だけでなく、財務全体の中で会員権をどう位置づけるかまで整理したい方は、お気軽にご相談ください。初回のご相談は無料で、担当の営業担当者がお話を伺い、その後は担当税理士または金融機関出身のコンサルタントが対応します。
