「不動産投資の確定申告、何を集めて、どの順番でやればいいのかがわからない」。物件を買って最初の2月に、多くの会社員大家さんが同じところで手が止まります。
不動産投資の確定申告のやり方は、手順にすると難しくありません。必要書類を「収入」「経費」「購入時」の3つの束に分けて集め、決算書をつくってから申告書に転記する。この順番さえ守れば迷いません。そして、ここでつくった申告書は、税務署だけでなく次の融資で銀行が読む資料にもなります。
- 会社員で給与以外の所得が20万円を超えるなら確定申告が必要。2026年分は2027年2月16日(火)〜3月15日(月)が申告期間
- 必要書類は「収入(管理会社の送金明細など)」「経費(固定資産税、返済予定表、保険など)」「購入時(売買契約書、精算書など)」の3束で集める
- 手順は「集計 → 減価償却の計算 → 青色申告決算書(または収支内訳書) → 申告書 → 提出・納付」の5つ
- 申告書は銀行が返済能力を判断する資料そのもの。数字の整合性と保管状態が、次の融資に効いてくる
不動産投資で確定申告が必要になる人と期限
会社員は「給与以外の所得が20万円超」が目安
給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員の場合、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。ここでいう所得は家賃収入そのものではなく、収入から必要経費を引いた「不動産所得」です。
20万円以下でも、次のときは申告したほうがよい、あるいは申告が必要です。
- 不動産所得が赤字で、給与と相殺(損益通算)して源泉徴収された税金の還付を受けたいとき
- 青色申告の承認を受けているとき(決算書を提出してはじめて特典が受けられる)
- 住民税は20万円の扱いがないため、所得税の申告をしない場合でも市区町村への住民税の申告が必要
赤字と損益通算の考え方は不動産投資の赤字と損益通算で詳しく解説しています。
申告期間は翌年2月16日から3月15日
2026年1月〜12月分の申告期間は、2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。納税が必要な場合も、原則として3月15日が納期限です。還付を受けるだけの申告(還付申告)は、翌年1月1日から提出できます。
期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税がかかるだけでなく、青色申告の65万円控除(現行制度)が受けられなくなる点にも注意してください。
不動産投資の確定申告の必要書類一覧
書類は「収入」「経費」「購入時」の3つの束で集めると、漏れが出にくくなります。
| 区分 | 書類 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 収入 | 管理会社の送金明細・収支報告書(12か月分) | 家賃・共益費・管理費の差引き額の集計 |
| 収入 | 賃貸借契約書、更新契約書 | 礼金・更新料・敷金の扱いの確認 |
| 収入 | 入金を確認できる通帳・明細 | 自主管理分や送金明細との照合 |
| 経費 | 固定資産税・都市計画税の納税通知書 | その年の税額の計上 |
| 経費 | 借入金の返済予定表(年間の利息がわかるもの) | 利息だけを経費にするための集計 |
| 経費 | 火災・地震保険の保険証券、領収書 | 保険料のうちその年分の計上 |
| 経費 | 修繕・清掃・広告・仲介などの請求書と領収書 | 修繕費・募集費用の計上 |
| 経費 | 管理委託契約書、税理士報酬などの請求書 | 管理料・報酬の計上 |
| 購入時 | 売買契約書、重要事項説明書 | 取得価額と土地・建物の内訳の確認 |
| 購入時 | 売買代金の精算書(固定資産税・家賃の日割り精算) | 取得価額への算入、初年度の収入計上 |
| 購入時 | 仲介手数料・登記費用・融資手数料などの領収書 | 取得価額か経費かの区分 |
| 共通 | 給与の源泉徴収票、マイナンバーがわかるもの | 申告書への転記、本人確認 |
| 共通 | 生命保険料控除やふるさと納税などの証明書 | 所得控除の適用 |
源泉徴収票は現在、申告書への添付は不要ですが、金額を転記するために必要です。
購入時の書類は「一生もの」
購入時の書類は、その年だけでなく、毎年の減価償却、売却時の取得費の計算、そして銀行への融資申込みでも繰り返し使います。紛失すると取得価額の根拠が示せず、売却時に思わぬ税負担が生じることもあります。物件ごとにフォルダを分け、スキャンしたデータも残しておきましょう。
確定申告のやり方|5つの手順
手順1:収入と経費を1年分集計する
送金明細と通帳をもとに、物件ごとの収入と経費を月別に集計します。管理会社から届く明細は「家賃から管理料を差し引いた送金額」になっていることが多いので、収入は総額、管理料は経費に分けて計上するのがポイントです。経費にできるもの・できないものは不動産所得の確定申告|経費にできるもの・できないものを参照してください。
手順2:減価償却費を計算する
建物と設備の取得価額を、耐用年数に応じて配分します。中古物件は耐用年数の計算方法が新築と異なるため、中古物件の減価償却と耐用年数で確認してください。
手順3:決算書をつくる
青色申告なら「青色申告決算書(不動産所得用)」、白色申告なら「収支内訳書(不動産所得用)」を作成します。青色申告で複式簿記の控除を受ける場合は、損益計算書に加えて貸借対照表も必要です。
手順4:確定申告書に転記する
決算書でつくった不動産所得の金額を、給与所得などと合わせて確定申告書に記入します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、決算書から申告書まで画面の案内に沿って作成し、そのままe-Taxで送信できます。
申告書の第二表には、給与以外の所得に係る住民税の徴収方法を選ぶ欄があります。会社員の方は、ここで「自分で納付」を選ぶかどうかも決めておきます(詳しくは会社員の不動産投資は会社にバレる?で解説しています)。
手順5:提出して、納付する
e-Taxで送信するか、税務署に持参・郵送して提出します。青色申告の65万円控除(現行制度)はe-Taxでの提出が要件の一つで、2027年分以後は書面で提出すると控除が大きく下がる改正も予定されています。初年度からe-Taxに慣れておくと安心です。納税がある場合は3月15日までに納付します(口座振替を利用する場合は、振替日が別に定められています)。提出後は、e-Taxの受信通知や控えを必ず保存してください。銀行に申告書を出す際、提出した事実を示す資料として求められることがあります。
初年度につまずきやすい4つのポイント
物件を買った最初の年は、2年目以降にはない論点がいくつも出てきます。
- 土地と建物の按分:減価償却できるのは建物部分だけです。売買契約書に建物価格の記載がない場合は、固定資産税評価額の比率などで合理的に按分します。按分の根拠はメモで残しておきます。
- 固定資産税の日割り精算金:購入時に売主に払った精算金は、その年の税金ではなく物件の取得価額に含めます。
- 購入時の諸費用の振り分け:仲介手数料は取得価額に入りますが、個人の場合、不動産取得税や登録免許税はその年の経費にできます。融資の事務手数料や保証料は、性質に応じて処理が分かれます。
- 土地部分の借入金利子:不動産所得が赤字になった年は、土地取得のための借入金の利子に相当する部分が損益通算できません。還付額を見込んでいる方は特に注意が必要です。
また、初年度から青色申告にしたい場合は、承認申請の期限(原則としてその年の3月15日まで。1月16日以後に貸付けを始めた場合は開始から2か月以内)があります。メリットと要件は不動産所得の青色申告のメリットで整理しています。
確定申告書は「銀行に出す成績表」でもある
個人で物件を持っている方が次の融資を申し込むと、銀行はほぼ必ず直近2〜3年分の確定申告書と決算書を求めます。担当者が見ているのは、税額よりも次のような点です。
| 銀行が見るところ | 確認していること |
|---|---|
| 不動産所得の金額と推移 | 賃貸経営が黒字で回っているか、悪化していないか |
| 減価償却費と借入金利子 | 減価償却費を足し戻したキャッシュフローで返済できるか |
| 貸借対照表の借入金残高 | 返済予定表と一致しているか(資料の信頼性) |
| 給与所得との合計 | 個人としての返済余力 |
| 提出の事実(受信通知・控え) | 申告書が実際に提出されたものか |
私自身、融資の現場で何度も感じてきたのは、数字の大きさよりも「整合性」と「説明できること」が信頼をつくるということです。借入金の残高が返済予定表と合っていない、土地と建物の按分の根拠がない。こうした小さなほころびは、担当者が稟議書を書くときの不安材料になります。
反対に、毎年同じ形式で、根拠資料と一緒に整った申告書を出せる人は、それだけで「この人の賃貸経営は管理されている」と評価されます。融資審査で見られるポイントは銀行融資の審査ポイントと債務者区分でも解説しています。
確定申告書は、1年間の賃貸経営を銀行に見せる唯一の公式な成績表です。経費を漏れなく、ただし根拠のあるものだけ計上し、きちんと納税する。この積み重ねが、2棟目・3棟目の融資につながります。
まとめ
- 会社員は給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要。2026年分の申告期間は2027年2月16日〜3月15日
- 必要書類は「収入」「経費」「購入時」の3束で集める。購入時の書類は売却時まで使う
- 手順は「集計 → 減価償却 → 決算書 → 申告書 → 提出・納付」の5つ
- 初年度は土地・建物の按分、精算金、諸費用の振り分け、土地の借入金利子に注意
- 申告書は銀行に出す成績表。整合性と提出の記録が、次の融資の土台になる
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