不動産投資の融資

不動産投資の金利上昇対策|返済額・利回り・銀行評価への影響と、今やるべき5つの準備

「変動金利で借りているけれど、この先どこまで返済が増えるのか不安だ」。2026年に入ってから、不動産投資の金利上昇についてのご相談が目に見えて増えました。

日本銀行は2026年9月の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コールレート翌日物の誘導目標)を1.0%程度から1.25%程度へ引き上げました。長く続いた「ほぼゼロ金利」の前提で組んだ収支計画は、いま見直しの時期に来ています。この記事では、不動産投資の金利上昇対策を、返済額の試算と銀行の評価の両面から整理します。

この記事の結論
  • 1億円・30年・元利均等の借入なら、金利が1%上がるだけで年間の返済額はおよそ60万円増える
  • 影響は手取りのキャッシュフローだけでなく、ICR・債務償還年数を通じて銀行格付けにも及び、次の融資の条件に響く
  • アパートローンや法人の事業性融資は、住宅ローンのような返済額の激変緩和がないことが多い。まず契約内容を確認する
  • 対策は「試算」「現預金の積み増し」「固定・変動の組み合わせ」「借り換え・金利交渉」「収益力の弱い物件の整理」の5つ

金利が1%上がると、返済額はいくら増えるか

まずは数字で確認します。1億円を30年・元利均等返済で借りた場合、金利ごとの返済額は次のとおりです。

金利毎月の返済額年間の返済額1.5%との差(年間)
1.5%約34.5万円約414万円―
2.0%約37.0万円約444万円+約30万円
2.5%約39.5万円約474万円+約60万円
3.0%約42.2万円約506万円+約92万円
3.5%約44.9万円約539万円+約125万円

1%の上昇で年60万円、2%の上昇で年125万円。たとえば年間家賃800万円、運営費160万円の物件なら、返済前の手残り(NOI)は640万円です。金利1.5%なら返済後に約226万円残りますが、3.5%では約101万円まで減ります。手残りが半分以下になるわけです。

「返済額がすぐには変わらない」とは限らない

住宅ローンには、金利が上がっても5年間は返済額を変えない「5年ルール」や、見直し時の上昇を従前の125%までに抑える「125%ルール」を採用しているものがあります。しかし、アパートローンや法人向けの事業性融資では、こうした仕組みがないことが多く、金利の見直しがそのまま返済額に反映される契約も珍しくありません。

自分の借入がどちらのタイプかは、金銭消費貸借契約書を見ればわかります。基準金利が何に連動していて、いつ見直されるのか。対策はここを確認するところから始まります。

銀行は金利上昇の影響をどう見るか

金利上昇の怖さは、手取りが減ることだけではありません。決算書の数字が悪化し、銀行の評価が下がって次の融資が通りにくくなることのほうが、買い進めたい投資家にとっては深刻です。

ICR(利息の支払い余力)が下がる

ICRは「営業利益÷支払利息」で、本業の稼ぎで利息を何倍まかなえるかを示します。借入の大きい不動産賃貸業は、金利が上がるとこの数字が一気に落ちます。詳しい計算はICRの記事で解説していますが、金利が1%から3%に上がるだけで、ICRが2倍台から1倍を割り込むことも起こります。

債務償還年数が延びる

債務償還年数は「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算します。利息が増えれば経常利益が減り、分母が小さくなるので、年数は延びます。一般に10年以内が健全、20年を超えると厳しいとされる指標です。不動産賃貸業はもともと年数が長くなりやすいため、金利上昇で一段と悪化しやすい業種だと考えてください。

銀行の目線

銀行は「いまの金利で返せるか」だけでなく、「金利が上がっても返せるか」を見ています。金利を数%上乗せした返済額で収支を検証する、いわゆるストレステストを行う金融機関もあります。購入時の審査に通ったから大丈夫、とは言えません。

今やるべき5つの準備

1. 全物件の「金利+1%・+2%」試算をつくる

物件ごとに、借入残高・金利・残りの期間・家賃・運営費を一覧にし、金利が1%、2%上がった場合の年間キャッシュフローを計算します。赤字になる物件、手残りがほぼゼロになる物件が、優先して手を打つべき対象です。

2. 現預金を積み増し、「耐えられる年数」を把握する

試算で出た不足額に対して、手元の現預金で何年耐えられるかを計算します。金利上昇局面では、現預金の厚みがそのまま安全性になります。なお、繰り上げ返済で借入を減らすことも選択肢ですが、手元資金が薄くなるとかえって銀行評価を下げることがあります。判断の考え方は繰り上げ返済の記事で整理しています。

3. 固定金利と変動金利を組み合わせる

全額を固定に切り替える必要はありません。たとえば長く持つ予定の主力物件は固定、売却を視野に入れている物件は変動のまま、と借入ごとに分けると、上昇リスクと違約金リスクのバランスを取れます。固定金利は期間中の繰り上げ返済や借り換えに違約金がかかる場合があるため、出口の予定と合わせて決めます。

4. 借り換え・金利交渉を検討する

金利が上がる局面でも、決算内容が良くなっていれば、別の金融機関がより良い条件を出してくれることはあります。借り換えには事務手数料や登記費用、違約金がかかるため、総額で比較することが前提です。いまの銀行との関係を壊さずに条件を見直す方法は、借り換えの記事で解説しています。

5. 収益力の弱い物件を整理する

金利が上がると、借入の重さに対して家賃が少ない物件、つまり残債利回りの低い物件から順に苦しくなります。残債利回りが低く、今後も改善が見込めない物件は、金利がさらに上がる前に売却を検討する価値があります。

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金利上昇局面で銀行と話すときの3つのポイント

金利の見直しは、銀行から一方的に通知されるものと思われがちです。しかし、事業性の融資では、借り手の財務内容や取引状況によって適用金利が変わる余地があります。金利上昇局面だからこそ、銀行との対話の質が結果を左右します。

1. 決算書と保有物件の収支を、先に持っていく

金利の見直し時期が近づいたら、銀行から言われる前に、直近の決算書(個人なら確定申告書)と物件ごとの収支表を持って説明に行きます。「金利が上がっても返済は問題なく続けられる」という根拠を、借り手の側から示すのです。担当者は、稟議で上司を説得する材料を求めています。材料を渡してくれる借り手は、条件交渉でも有利になります。

2. 取引全体で考える

借入の金利だけを切り出して交渉するより、預金、給与振込、他の借入など、取引全体での関係を踏まえて相談したほうが、話が進みやすくなります。逆に、複数の銀行と取引していれば、条件を比較できること自体が交渉力になります。

3. 「下げてください」ではなく「どうすれば下がるか」を聞く

いきなり金利の引き下げを求めるより、「どのような財務状態になれば、より良い条件を検討してもらえるか」を聞くほうが建設的です。純資産の水準、現預金の厚み、債務償還年数など、銀行が気にしている数字がわかれば、次の決算までに何を改善すべきかが見えてきます。中小企業全般の金利上昇対策は、金利上昇と中小企業の借入の記事でも整理しています。

個人と法人で、金利上昇の影響はどう違うか

同じ金利上昇でも、個人で借りているか、法人で借りているかで、受ける影響の出方は少し異なります。

項目個人で借りている場合法人で借りている場合
利息の扱い不動産所得の必要経費(土地分の利息は、赤字のときの損益通算に制限あり)法人の損金
審査で見られる書類確定申告書と、勤務先の収入法人の決算書と、代表者個人の資産・収入
金利上昇で悪化しやすい点給与で赤字を補う状態になると、家計全体の返済余力が落ちるICR・債務償還年数が悪化し、格付けが下がる

個人の場合は、給与収入があるぶん、物件の収支が多少悪化しても返済そのものは続けられることが多いでしょう。しかし銀行から見れば、「物件の赤字を給与で埋めている状態」は、次の物件を買う余力がないというサインです。法人の場合は、決算書の数字がそのまま格付けに反映されるため、金利上昇の影響がより直接的に評価に表れます。

金利上昇局面の買い方は「財務の強さ」で決まる

金利が上がる局面でも、物件を買い続けている投資家はいます。違いは、物件選びよりも財務の強さです。

項目金利上昇で苦しくなる投資家金利上昇でも買える投資家
自己資金フルローンに近い物件価格の一定割合を入れている
現預金頭金で使い切っている返済の数年分を確保している
決算節税で利益を圧縮している利益を出して納税し、純資産を積んでいる
銀行との関係1行に集中複数行と取引し、条件を比較できる

私自身、2014年に不動産投資を始め、総投資額82億円・45プロジェクトまで積み上げてきましたが、金利が低い時期ほど「借りられるだけ借りる」誘惑は強くなります。一度その結果として融資が止まった経験があるからこそ、今は金利が上がっても回る借り方かどうかを、買う前に必ず確かめています。

著書のモデルでは、格付けの配点で最も大きいのは「返済能力」(129点中55点)です。金利上昇はまさにこの返済能力を削ります。だからこそ、利益を出して納税し、純資産と現預金を厚くしておくことが、金利上昇への最大の備えになります。「払った税金の2倍、会社は強くなる」という考え方は、金利が上がる時代ほど効いてきます。

まとめ

  • 2026年9月に政策金利は1.25%程度へ。変動金利の借入は返済額の見直しに備える
  • 1億円・30年なら、金利1%の上昇で年約60万円の返済増。手残りが半分以下になる物件もある
  • 影響はICR・債務償還年数を通じて銀行格付けに及び、次の融資の条件を左右する
  • 対策は試算、現預金の積み増し、固定と変動の組み合わせ、借り換え・交渉、弱い物件の整理

金利の動きは誰にも正確には読めません。だからこそ、上がっても耐えられる財務をつくっておくことが大切です。保有物件の金利シミュレーションや銀行との交渉方針を一緒に整理したい方は、不動産投資家向けサービスからお気軽にご相談ください。

よくある質問

金利が上がったら、すぐに物件を売るべきですか?
金利上昇だけを理由に慌てて売る必要はありません。まず金利が1〜2%上がった場合のキャッシュフローを試算し、赤字にならないか、手元資金で何年耐えられるかを確認します。耐えられない物件、もともと収益力の弱い物件から優先して、売却や借り換えを検討するのが順番です。
アパートローンにも住宅ローンの「5年ルール」「125%ルール」はありますか?
住宅ローンで見られる、返済額を5年間据え置く仕組みや、見直し時の上昇幅を125%までに抑える仕組みは、アパートローンや法人向けの事業性融資では設けられていないことが多いです。金利の見直しがそのまま返済額に反映される契約もあるため、手元の金銭消費貸借契約書で必ず確認してください。
固定金利に切り替えれば安心ですか?
返済額が読めるという意味では安心感がありますが、切り替え時点の固定金利は変動金利より高いことが一般的で、毎月の返済額はその時点で増えます。期間中の繰り上げ返済や借り換えに違約金がかかる契約もあります。全部を固定にするのではなく、物件ごと・借入ごとに分けて考えるのが現実的です。

※本記事は2026年10月17日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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