ご相談の内容
勘定科目の定義を決めた法律はあるのか、というご質問です。もしそうした法律がないのであれば、たとえば「売掛金」という科目に「買掛金」の取引を計上しても問題にならないのか、を知りたいという内容でした。帳簿を自分で付け始めた方が、一度は疑問に思うテーマです。
- 個々の勘定科目の定義を網羅的に定めた法律はない。科目名はある程度自由に付けてよい
- ただし、取引の性質と違う科目での記帳は問題になる(売掛金に買掛金を計上するなど)
- 単発の誤りなら、気付いた時点で振替仕訳をすれば足りる
回答
科目名は会計慣行に従って使われている
勘定科目の名称は、法令で一つずつ決められているわけではありません。実務では、企業会計原則などの会計慣行に従って使われています。関係する主な規定は次のとおりです。
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| 会社法第431条 | 株式会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」(広く認められた会計ルール)に従う |
| 会社計算規則第74条・第75条 | 貸借対照表の資産・負債の区分を定め、売掛金や買掛金などの項目を例示 |
| 法人税法第22条第4項 | 所得の計算は、公正妥当な会計処理の基準に従う |
そのため、科目名をある程度自由に付けることは差し支えありません。たとえば補助科目(内訳用の細かい科目)を自社で設けることは可能です。
売掛金に買掛金を計上するのは問題
一方、売掛金は「代金を受け取る権利」(資産)、買掛金は「代金を支払う義務」(負債)で、性質が正反対です。仕入代金の未払分を売掛金で処理すると、次のような影響が生じます。
- 資産と負債がともに実態と違って表示され、決算書が正しい財政状態を示さなくなる。金融機関などに提出する決算書の信頼性にも関わる
- 会社法第432条第1項は、適時に正確な会計帳簿を作ることを求めている
- 売掛金の残高をもとに計算する項目(貸倒引当金など)にも影響が出るおそれがある
青色申告の要件との関係
法人で青色申告をしている場合、法人税法施行規則第53条により、帳簿は複式簿記の原則に従い「整然と、かつ、明りょうに」記録することが求められます。これに従っていないと、法人税法第127条第1項第1号の青色申告の承認取消事由に当たる可能性があります。個人事業主で青色申告をしている場合も、所得税法施行規則第57条と所得税法第150条に同様の定めがあります。
注意したいポイント
- 単発の誤りであれば、慌てる必要はありません。気付いた時点で振替仕訳(科目を付け替える修正の記帳)を行えば足ります。
- 問題になるのは、性質の違う科目で記帳することが習慣になっている場合です。決算書の数字が実態とずれ、帳簿の要件の面でも説明がつかなくなります。
- 「科目名の付け方は柔軟でよい」ことと、「取引の中身に合った科目で記帳する」ことは別の話です。
銀行に決算書を出す前の確認ポイントは、決算書を銀行に出す前にやるべき3つのチェックで解説しています。
まとめ
- 勘定科目の定義を網羅的に定めた法律はなく、科目名は会計慣行の範囲で自由に付けてよい
- 売掛金(資産)と買掛金(負債)のように性質の違う科目での記帳は問題になる
- 単発の誤りは振替仕訳で直せばよく、取引の中身に合った科目で記帳することが大切
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
