法人税・会社の経理

宗教法人が収益事業の土地・建物を売却したときの仕訳は?10年以上保有なら課税されない?

ご相談の内容

宗教法人で、不動産貸付(収益事業)に使っていた建物と、その敷地の土地をまとめて売却しました。収益事業の貸借対照表には建物だけが計上され、土地は載っていません。売却時の仕訳はどう切ればよいのか、また土地を10年以上持っていた場合は課税の対象から外せるのか、というご相談です。

結論
  • 土地は収益事業以外(一般会計など)の資産として扱い、収益事業の帳簿では代金を預り金とする処理で差し支えない
  • 建物の売却益は、帳簿価額から当期の減価償却費を差し引いた額と売却代金との差額。借方・貸方の合計が一致するかを必ず確認する
  • おおむね10年以上保有した土地・建物の売却損益や、収益事業を廃止して処分した場合の損益は、収益事業の益金・損金に算入しないことができる(法人税基本通達15-2-10)

回答

基本の考え方

宗教法人では、収益事業とそれ以外を分けて経理する区分経理が求められます(法人税法施行令6条)。土地部分を収益事業の損益に含めず、建物部分の譲渡損益だけを収益事業で計上する、という考え方は妥当です。

なお、固定資産税がかかっているかどうかは、収益事業の資産かどうかの判定には影響しません。固定資産税の課税と、法人税の収益事業の範囲は別の問題です。

仕訳の例

実際のご相談では、書かれた仕訳の借方合計と貸方合計が一致していませんでした。現預金の金額の誤記が原因と考えられます。ここでは、次の数字を例に、合計が一致する仕訳を示します(消費税は省略しています)。

  • 期首の建物の帳簿価額:500万円
  • 売却までの当期の減価償却費:20万円(売却時の帳簿価額は480万円)
  • 売却代金:建物700万円、土地3,000万円(入金は合計3,700万円)
借方金額貸方金額
現預金37,000,000建物5,000,000
減価償却費200,000建物売却益2,200,000
預り金(一般会計へ引渡し)30,000,000
合計37,200,000合計37,200,000

建物売却益は、売却代金700万円 −(帳簿価額500万円 − 当期の減価償却費20万円)= 220万円です。

土地は収益事業の貸借対照表に計上されていないため、一般会計などの資産として扱い、収益事業の帳簿では代金を預り金とします。「預り金(一般会計)」のように、一般会計へ引き渡す資金だと分かる科目名にしておくと、区分経理の説明がしやすくなります。

10年以上保有した場合の扱い(法人税基本通達15-2-10)

収益事業に属する固定資産を処分したときの損益は、原則として収益事業の損益になります。ただし通達では、次の場合の損益は益金・損金に算入しないことができるとされています。

  1. 相当期間(おおむね10年以上)保有していた土地・建物・構築物を処分した場合
  2. 収益事業を廃止し、その事業に属していた固定資産を処分した場合

今回、土地はすでに収益事業以外の資産として処理しているので、検討が必要なのは建物です。

建物の状況建物売却益の扱い
おおむね10年以上保有していた収益事業の所得から除外できる
今回の売却で貸付事業を廃止した収益事業の所得から除外できる
保有10年未満で、貸付事業も続ける収益事業の所得になる

消費税

消費税の課税事業者であれば、収益事業かどうかを問わず、建物の売却代金は課税売上、土地の売却代金は非課税売上になります。土地の代金は課税売上割合(売上全体に占める課税売上の割合)の分母に入るため、割合が下がり、仕入れにかかった消費税を差し引ける額に影響します。

注意したいポイント

  • 法人税と消費税で範囲が違う:法人税では土地を収益事業から外していても、消費税では土地の譲渡も非課税売上として集計の対象になります
  • 「10年以上」は建物ごとに確認する:取得時期が分かる契約書や登記の資料で、保有期間を確認しておきましょう
  • 事業を廃止したかどうかを明確に:売却に伴って貸付事業をやめた場合は、その事実が分かる資料を残しておくと説明しやすくなります
  • 預り金は一般会計へ引き渡す:預り金のまま収益事業の帳簿に残し続けると、区分経理があいまいになります

宗教法人の会計処理については決算書に載せていなかった預金口座を計上するときの仕訳、土地の売却が消費税に与える影響は土地を売ると課税売上割合が下がる仕組みでも解説しています。

まとめ

  • 収益事業の帳簿に載っていない土地の代金は、一般会計へ引き渡す預り金として処理できる
  • 建物売却益は「売却代金 −(帳簿価額 − 当期の減価償却費)」。仕訳の借方・貸方の合計を必ず確認する
  • おおむね10年以上保有した建物や、事業を廃止して処分した建物の売却損益は、収益事業の益金・損金に算入しないことができる

この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。

よくある質問

収益事業の帳簿に載っていない土地を売った代金は、どう処理すればよいですか?
土地は収益事業以外(一般会計など)の資産として扱い、収益事業の帳簿では代金を預り金とする処理で差し支えありません。一般会計へ引き渡す資金だと分かる科目名にしておくと、区分経理の説明がしやすくなります。
収益事業の建物をおおむね10年以上持っていれば、売却益に法人税はかかりませんか?
相当期間(おおむね10年以上)保有した土地・建物・構築物の処分損益は、収益事業の益金・損金に算入しないことができます(法人税基本通達15-2-10)。収益事業を廃止してその事業の固定資産を処分した場合も同様です。10年未満で事業も続けるなら、売却益は収益事業の所得になります。

※本記事は2026年10月22日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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