ご相談の内容
宗教法人で、これまで一部の預金口座を決算書に記載していませんでした。今期から決算書に載せたいと考えていますが、開始残高をどう入れればよいのか、預金の相手科目は何になるのかが分からない、というご相談です。
- 預金の相手科目は当期の収入ではなく、「前期繰越収支差額」または正味財産を修正する科目(過年度修正額など)です
- 開始残高は前期末日時点の通帳残高または残高証明書の金額で計上し、財産目録にも記載します
- 宗教活動専用の口座なら、通常は法人税の問題は生じません。収益事業の口座なら過去の申告への影響を確認します
回答
相手科目は「収入」ではなく正味財産の修正
仕訳は次のような形になります。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 普通預金 | 前期繰越収支差額(または過年度修正額) |
正味財産とは、資産から負債を差し引いた法人の純資産のことです。その預金は前期以前から存在しており、今期に新たに得た収入ではありません。当期の収入に入れると、今期の収支計算書が実態より多く見えてしまうため、正味財産を修正する科目を使います。
作成している書類による違い
収支計算書のみ作成している場合
収支計算書は、現金預金などの「支払資金」の増減を表す書類です。前期繰越収支差額に、前期末時点の預金残高を加えて修正します。前期の数字と一致しなくなるため、「今期から預金口座を計上し、前期繰越額を修正した」旨を注記しておくとよいでしょう。
貸借対照表・正味財産増減計算書も作成している場合
正味財産増減計算書の増加の部に「過年度修正額」などの科目で計上し、正味財産を増やす方法が考えられます。
宗教法人の会計処理の目安として、日本公認会計士協会の「宗教法人会計の指針」があります。過年度分の修正の扱いや科目名は、この指針と所轄庁の取扱いもご確認ください。
開始残高と財産目録
開始残高の金額は、前期末日時点の通帳残高、または金融機関の残高証明書の金額を用いるのが確実です。また、宗教法人法第25条により財産目録の作成が義務付けられていますので、今期の財産目録にもその預金を記載してください。
税務面の影響
宗教法人は、収益事業から生じた所得にだけ法人税が課されます(法人税法第4条第1項、第7条)。
- その口座が宗教活動専用であれば、今回の計上によって法人税の問題は通常生じません
- その口座が収益事業に関するものであれば、過去の法人税申告の内容に影響する可能性があります。その場合は修正申告などの要否を個別に確認する必要があります
注意したいポイント
- 当期の収入に入れない:収支計算書が実態より多く見え、前期以前との比較もできなくなります
- 注記で経緯を残す:前期の決算書と数字がつながらなくなるため、修正の理由を書いておきます
- 今期の利息は当期の収入:今期中に付いた預金利息は、通常どおり当期の収入として計上します
- 口座の用途を確認する:収益事業に関わる口座かどうかで、税務上の対応が変わります
通帳の入出金をどう説明するかは、通帳の動きと税務調査も参考になります。
まとめ
- 計上していなかった預金の相手科目は、当期の収入ではなく前期繰越収支差額や過年度修正額
- 開始残高は前期末の通帳残高や残高証明書の金額で計上し、財産目録にも記載する
- 収益事業の口座であれば、過去の法人税申告への影響を個別に確認する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
