ご相談の内容
退職所得控除が2,000万円ある一方、退職一時金とDB(確定給付企業年金)の一時金の合計は1,600万円で、控除が400万円ほど残る見込みです。この残りをDC(確定拠出年金)の一時金に充てたいのですが、手続きの都合でDCは退職した翌年の受取になります。翌年のDC一時金にも退職所得控除を使って非課税にできるのか、受取時期がずれることの注意点を知りたい、というご相談です。
- 今年使い切れなかった退職所得控除の残りを、翌年のDC一時金に充てることはできません。控除は年ごとに計算され、繰越しはありません
- 翌年のDC一時金は、前年の退職金と期間が重なる部分を除いて控除額を計算し直すため、控除がほとんど残らず課税となる可能性が高いです
- 課税される場合も退職所得として、控除後の金額の2分の1に分離課税されます
回答
同じ年に受け取れば1つの控除でまとめて計算
退職一時金、DB一時金、DCの老齢給付金の一時金は、いずれも退職所得として扱われます(DB・DCは「みなし退職手当等」。所得税法31条)。同じ年に受け取れば合算し、勤続年数に基づく1つの控除額(ご相談の例では2,000万円)を差し引きます(所得税法30条)。
年をまたぐと「重複期間」の調整が入る
年をまたいで受け取る場合は、後の年の受取分について重複期間の調整が行われます。DC一時金を受け取る年の前年以前19年内に他の退職金を受け取っていれば、次のように計算します(所得税法30条、所得税法施行令70条)。
- DCの加入期間をもとに控除額を計算する
- そこから、前の退職金の勤続期間と重なる期間に相当する控除額を差し引く
ここで差し引くのは「実際に使った控除額」ではなく、「重なる期間に対応する控除額」です。
| DCの加入期間 | 翌年のDC一時金の控除 |
|---|---|
| すべて今回の勤務期間に含まれる | 0円またはごくわずか |
| 今回の勤務期間と重ならない期間がある | 重ならない部分について控除が認められる |
重ならない期間の例としては、転職前の勤務先での企業型DCや、退職後のiDeCo(個人型DC)の加入期間があります。前年に控除が400万円余っていても、その分が翌年に回るわけではない点がポイントです。
注意したいポイント
- 課税されても退職所得として扱われる:控除後の金額の2分の1に分離課税(他の所得と合算しない課税)されます
- 申告書の提出を忘れない:DCの支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しないと、20.42%で源泉徴収されます(国税庁タックスアンサーNo.1420、No.2732)
- 年金形式での受取も比較する:DCは一時金ではなく年金形式で受け取る選択肢もあります。その場合は公的年金等控除の対象(雑所得)となるため、税負担を比べて検討するとよいでしょう
- 受取時期を決める前に試算する:同じ年に受け取れるかどうかで税額が大きく変わることがあります
退職金と他の収入の税率の違いについては、退職金と株式売却の税率の違いでも解説しています。
まとめ
- 退職所得控除の使い残しは翌年に繰り越せない
- 翌年のDC一時金は、前年の退職金と重なる期間に対応する控除額を差し引くため、控除がほとんど残らない可能性が高い
- 受給に関する申告書の提出と、年金形式での受取との比較を忘れずに
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
