ご相談の内容
税務署から税務調査の連絡がありました。ところが、これまで帳簿をつけておらず、領収書もほとんど残していません。このまま調査を受けて大丈夫なのか、今から何をすればよいのか、というご相談です。
- 帳簿や領収書がなくても税務調査には応じる必要があります。日時は事前通知の際に変更を相談できます
- 調査までに、通帳・カード明細などで売上と経費をできるだけ再現しておきましょう
- 証拠のない経費は否認や推計課税の可能性があります。後から領収書を作る・記録を書き換えるのは絶対に避けてください
回答
1. 調査には応じる。日程は相談できる
帳簿や領収書がないことは、調査を受けなくてよい理由にはなりません。一方で、調査の日時は、税務署からの事前通知の際に事情を伝えれば、変更を相談できます(国税通則法74条の9)。
資料を集める時間を確保するためにも、連絡を無視したり放置したりせず、まずは電話などで対応してください。
2. 手元の資料で売上と経費を再現する
調査までに、手元にある資料や取り寄せられる資料をもとに、売上と経費をできるだけ再現しておくことをおすすめします。使える資料の例は次のとおりです。
| 資料 | 分かること |
|---|---|
| 預金通帳・ネットバンキングの入出金明細 | 売上の入金、経費の引き落とし |
| クレジットカードの利用明細 | カードで支払った経費 |
| 取引先からの支払調書・請求書の控え | 売上の金額や取引先 |
| ネット販売の売上履歴 | 販売サイト経由の売上 |
取引先に請求書や領収書の再発行を頼める場合もあります。これらの資料をもとに、月ごとの売上・経費の一覧を作っておくと、調査の場で説明がしやすくなります。
3. 帳簿がないと起こり得ること
- 証拠のない経費は否認される可能性:支払いの事実を示せない経費は、経費として認められないことがあります
- 推計課税:帳簿が不十分な場合、税務署が預金の動きや同業者の水準などから所得を推し量って課税することがあります(所得税法156条、法人税法131条)
4. 前提によっては、さらに次の影響も
- 青色申告の場合:帳簿書類を保存していないことを理由に、青色申告の承認が取り消されることがあります(所得税法150条1項1号、法人税法127条1項1号)
- 消費税の課税事業者の場合:帳簿と請求書等を保存していない仕入れは、原則として仕入税額控除(仕入れにかかった消費税を差し引く仕組み)が認められません(消費税法30条7項)
- 加算税の加重:2024年1月1日以後に法定申告期限が来る分については、帳簿を保存していない場合などに加算税が重くなる制度があります(国税通則法65条4項等)
注意したいポイント
- 後から領収書を作ったり、記録を書き換えたりしない:事実を偽る行為は、重加算税(仮装・隠蔽に対する重いペナルティ、国税通則法68条)の対象となり得ます。「資料を再現する」ことと「資料を作り上げる」ことはまったく別物です
- 分からないことは正直に伝える:記憶があいまいな点を推測で断定するより、分からないと伝えるほうが安全です
- 今後は記帳と書類保存を習慣にする:今回の調査を区切りに、日々の記帳と、領収書・請求書の保存を続けていくことが大切です
調査の流れや当日の準備は個人大家の税務調査の流れと準備、領収書がない支出の扱いは領収書がない支出は経費になる?、加算税の種類は過少申告加算税・重加算税・延滞税とはもご覧ください。
まとめ
- 帳簿や領収書がなくても税務調査には応じる必要があり、日時は事前通知の際に相談できる
- 通帳・カード明細・請求書の控えなどで、月ごとの売上と経費をできるだけ再現しておく
- 証拠のない経費は否認や推計課税の可能性がある。後から記録を作る・書き換えるのは重加算税の対象になり得るので避ける
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
