ご相談の内容
フリーランスで作品を制作している方からのご相談です。展示・販売イベントへの出展料を事前に支払い、前払金として記帳していましたが、出展をキャンセルすることにしました。規約上、キャンセルしても返金はありません。支払日・キャンセル日・イベント当日がそれぞれ別の日にある場合に、どのように仕訳すればよいかを知りたいという内容です。
- 返金のないキャンセルが確定した日に、前払金を経費へ振り替える
- 出展できなくても事業のための支出なので必要経費になる
- 消費税の課税事業者なら、その支払いが課税仕入れになるかの確認が必要
回答
仕訳の流れ
出展料3万円を事業用以外のお金で支払い、前払金として記帳していた場合の例です。
| 日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
|---|---|---|---|
| 支払日 | 前払金 30,000円 | 事業主借 30,000円 | 出展料の前払い |
| キャンセル日 | 広告宣伝費 30,000円 | 前払金 30,000円 | イベント出展キャンセル(返金なし) |
| イベント当日 | 仕訳なし | — | — |
1. 経費にできる理由
イベント出展は、作品の宣伝や販売のための支出です。キャンセルにより返金がない場合も、事業の必要経費(所得税法第37条)になります。サービスを受けられなかったからといって、経費にできなくなるわけではありません。
2. 計上する日
前払金は「これから受けるサービスの代金を先に払ったもの」という資産です。キャンセルにより出展の機会がなくなり、返金もないことが確定した時点で、資産としての価値がなくなります。そのため、イベント当日ではなくキャンセル日に費用へ振り替えます。
3. 勘定科目
「広告宣伝費」のほか、ふだん出展料に使っている科目(例:出展料)や「雑費」でも差し支えありません。毎年同じ科目を使い続けることが大切です。キャンセルであることが分かるよう、摘要に「○○イベント出展キャンセル(返金なし)」と書いておくとよいでしょう。
4. 消費税の扱い(課税事業者の場合)
消費税の課税事業者(消費税を納める義務がある方)であれば、この支払いが課税仕入れ(仕入税額控除の対象)になるかの確認が必要です。国税庁タックスアンサーNo.6257「キャンセル料」では、キャンセルに伴う損害賠償的な性格の支払いは不課税(消費税の対象外)、事務手数料的な性格の支払いは課税とされています。主催者の規約や請求書・インボイスの記載内容で判断が分かれるため、キャンセル時の領収書等で確認してください。
免税事業者であれば、税込の金額のまま上記の仕訳で問題ありません。
注意したいポイント
- 年をまたぐかどうかで影響が変わります。 支払い・キャンセル・イベントがすべて同じ年の中であれば、計上日の違いはその年の所得金額に影響しません。キャンセルとイベントが年をまたぐ場合は、キャンセル日の属する年の経費になります。
- 科目は毎年そろえる。 出展料をどの科目で処理するかは自由度がありますが、年ごとに変えると比較しにくくなります。
- 規約や領収書を保存しておく。 返金なしであることや、キャンセル料の性格を示す資料になります。
前払いした費用が返金されることになった場合の処理は、前払いした研修費が翌年に返金されることに。前払金と未収入金どちらで処理する?で解説しています。
まとめ
- 返金のないキャンセルが確定した日に、前払金を広告宣伝費などの経費へ振り替える
- 出展できなくても事業のための支出なので、必要経費にできる
- 課税事業者は、キャンセル料が損害賠償的(不課税)か事務手数料的(課税)かを規約や領収書で確認する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
