法人税・会社の経理

会社負担の予防接種代、個人名の領収書・登録番号なしで経費精算してよい?

ご相談の内容

会社でインフルエンザの予防接種を勧めており、接種した従業員の費用は福利厚生費として会社が全額負担しています。従業員が各自で接種して支払い、あとで会社に経費精算する流れです。領収書の宛名が個人名でも問題ないか、また、領収書に登録番号(T番号)がない場合でも、予防接種は健康保険の対象外で消費税がかかるのだから10%で処理してよいか、というご相談です。

結論
  • 個人名宛ての領収書でも、立替精算の記録とあわせて保存すれば問題ない
  • 予防接種は10%の課税仕入れという区分は正しい
  • ただし、T番号のない領収書では仕入税額控除が全額は認められない場合がある

回答

領収書の宛名が個人名の場合

法人税では、宛名よりも、会社の業務のために負担した費用かどうかが重視されます。

消費税のインボイス制度では、従業員が立て替えた場合、従業員宛ての適格請求書(インボイス)に加え、会社の負担であることがわかる立替金精算書などを保存すれば、会社の仕入税額控除に使えるとされています(国税庁「インボイス制度に関するQ&A」の立替金の問)。従業員ごとの精算書や経費精算の記録を、領収書と一緒に保存しておくとよいでしょう。

なお、全従業員を対象に一律の基準で会社が負担する予防接種代は、通常、福利厚生費として扱われ、従業員の給与として課税されることはないと考えられます。

T番号のない領収書の場合

インフルエンザの予防接種は公的医療保険の対象外のため、消費税法別表第二第6号の非課税となる医療には当たりません。したがって、税率10%の課税取引という区分は正しい認識です。

ただし、令和5年10月以降は、仕入税額控除(支払った消費税を納める税額から差し引くこと)を受けるには、原則としてインボイスの保存が必要です(消費税法第30条第7項)。T番号がない場合の取扱いは次のとおりです。

状況取扱い
医療機関が登録事業者記載漏れの可能性があるため、修正した領収書の交付を依頼できる
医療機関が登録事業者でない経過措置により一定割合を控除(令和8年9月までは80%、令和8年10月からは70%。その後も段階的に引き下げ。平成28年改正法附則第52条)
基準期間の課税売上高が1億円以下などの要件を満たす税込1万円未満の仕入れは、帳簿の保存だけで全額控除できる少額特例あり(同附則第53条の2、令和11年9月まで)
簡易課税制度や2割特例を選択インボイスの有無は控除額に影響しない

注意したいポイント

  • 「10%の課税仕入れ」と「全額控除できる」は別の話:区分が正しくても、インボイスがなければ控除額が減る場合があります。
  • 会計ソフトの区分を選び分ける:「課税仕入10%」のうち「適格請求書なし(経過措置)」などの区分を選ぶと、経過措置が正しく反映されます。
  • 精算書類は領収書と一緒に保存する:立替金精算書や経費精算の記録がないと、会社の負担であることを示しにくくなります。

経過措置の割合の推移は免税事業者からの仕入れの経過措置、書類の保存期間は領収書・帳簿の保存期間は何年?で解説しています。

まとめ

  • 個人名宛ての領収書でも、立替金精算書などとあわせて保存すれば会社の経費・仕入税額控除に使える
  • 予防接種は公的医療保険の対象外で、10%の課税仕入れになる
  • T番号がなければ、経過措置・少額特例・簡易課税などの状況に応じて控除額が変わる

この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。

よくある質問

従業員が立て替えた予防接種代の領収書が個人名宛てでも、会社の経費にできますか?
できます。法人税では宛名よりも会社の業務のために負担した費用かどうかが重視されます。消費税では、従業員宛てのインボイスに加え、会社の負担であることがわかる立替金精算書などを保存すれば、会社の仕入税額控除に使えるとされています。
予防接種代は健康保険の対象外なので、T番号がなくても10%で全額控除できますか?
10%の課税仕入れという区分は正しいですが、仕入税額控除には原則としてインボイスの保存が必要です。医療機関が登録事業者でなければ経過措置による一定割合の控除となり、少額特例や簡易課税・2割特例に当たる場合は扱いが異なります。

※本記事は2026年10月16日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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