ご相談の内容
個人でフリーランスのクリエイターをしている方からのご相談です。売上が年々伸びて、今年は1,000万円を超えるかどうかという水準になりました。1,000万円を超えたら、すぐにインボイスの課税事業者として手続きが必要なのか。また、手続きをしたのに翌年以降1,000万円を超えなかった場合、つまり今年だけたまたま超えた場合でも、インボイスの手続きは必要なのかを知りたい、という内容でした。
- 売上が1,000万円を超えても、インボイス登録は義務ではない
- 消費税の納税義務は、超えた年の2年後の年分から生じ、そのための届出が必要
- いったんインボイス登録をすると、売上が1,000万円以下に戻っても取消しをしない限り課税事業者のまま
回答
納税義務は「2年前の売上」で決まる
個人事業者が消費税を納める義務があるかどうかは、その年の売上ではなく、2年前の年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します(消費税法第9条第1項、国税庁タックスアンサーNo.6501)。
| 1,000万円を超えた年 | 課税事業者になる年分 |
|---|---|
| 令和7年 | 令和9年分(令和8年分は原則として免税のまま) |
| 令和8年 | 令和10年分 |
ただし、前年1〜6月(特定期間)の売上と給与支払額がともに1,000万円を超える場合は、翌年から課税になります(同法第9条の2)。従業員がいなければ、通常は該当しません。
課税事業者になる場合は、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を速やかに提出します(同法第57条第1項第1号)。
インボイス登録は別の手続き
インボイス登録(適格請求書発行事業者の登録)は、課税事業者になるかどうかとは別の手続きで、取引先の要望などを踏まえて任意に選ぶものです。課税事業者になっても、登録しなければインボイスは発行できません。
たまたま1年だけ超えた場合
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| インボイス登録をしていない | 基準期間の売上が1,000万円以下となる年分は免税事業者に戻る。「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出(同法第57条第1項第2号) |
| インボイス登録をしている | 売上にかかわらず課税事業者のまま。免税に戻るには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を、免税としたい年の初日から起算して15日前の日までに提出 |
注意したいポイント
- 課税事業者になる年の前年末までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出せば、簡易課税(売上にかかる税額から概算で仕入分を差し引く方法)を選べます(同法第37条)。イラスト制作などのサービス業はみなし仕入率50%で計算でき、事務負担を抑えられます。
- 基準期間の売上が1,000万円を超えたことで課税になる年分には、いわゆる2割特例は使えないと考えられます。
- 登録の有無で「1,000万円以下に戻ったとき」の扱いが大きく変わります。登録するかどうかは、取引先の構成を踏まえて判断しましょう。
法人を設立した場合の消費税の考え方は、法人設立前に知るべき消費税|免税期間の条件・インボイス登録・事業年度の決め方で解説しています。
まとめ
- 1,000万円を超えてもインボイス登録は義務ではなく、納税義務は2年後の年分から
- 課税になるときは課税事業者届出書、免税に戻るときは納税義務者でなくなった旨の届出書を出す
- 登録済みなら取消しの届出をしない限り課税事業者のまま。簡易課税の届出期限にも注意
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
