ご相談の内容
消費税の申告書を作っていたところ、軽減税率(6.24%)の部分で、仕入れの税額が売上の税額を上回り、控除不足(マイナス)になりました。このマイナスが標準税率(7.8%)部分の差引税額から差し引かれる計算になっていますが、8%と10%で区分が分かれているのに、なぜ通算できるのか疑問です、というご相談です。
- 税率ごとに控除不足が出ても、他の税率の差引税額と通算して納付税額を計算する扱いで問題ありません
- 消費税は税率が二つあっても一つの税で、仕入税額控除は課税期間全体の消費税額からまとめて行う仕組みです
- 地方消費税はどちらの税率でも国税の22/78なので、通算後に計算しても結果は同じです
回答
税率が分かれるのは「税額を計算する段階」だけ
消費税法30条1項は、仕入税額控除(仕入れにかかった消費税を差し引くこと)を「その課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除する」と定めています。標準税率分・軽減税率分と分けて控除する定めにはなっていません。
税率が分かれるのは、売上や仕入れにかかる税額を正しく計算する段階だけです。税率の根拠は次のとおりです。
- 標準税率7.8%:消費税法29条
- 軽減税率6.24%:平成28年改正法附則34条
申告書でも合計で差し引く
確定申告の税額も、消費税法45条1項により、課税標準額に対する消費税額の合計から、控除税額の合計を差し引いて求めます。控除しきれない金額があれば、同法52条により還付されます。
このため、付表(税率別消費税額計算表)では税率ごとの金額を計算しますが、最後は合計欄で通算し、申告書第一表には合計額を記載します。付表の具体的な行番号や記載方法は、お使いの様式の記載要領で確認してください。
6.24%部分がマイナスになっても、7.8%部分の差引税額から差し引かれるのは、こうした仕組みのためです。
数字で見る通算のイメージ
分かりやすい数字で、国税部分の流れを示します(端数処理や中間納付は考慮していない、説明用の例です)。
| 区分 | 売上にかかる税額 | 仕入れにかかる税額 | 差引 |
|---|---|---|---|
| 標準税率 7.8% | 156万円 | 39万円 | 117万円 |
| 軽減税率 6.24% | 39万円 | 78万円 | △39万円 |
| 合計 | 195万円 | 117万円 | 78万円 |
軽減税率部分は39万円の控除不足ですが、標準税率部分の117万円と通算し、国税の差引税額は78万円になります。軽減税率部分の39万円が単独で還付されるわけではありません。
地方消費税も通算と矛盾しない
8%は国税6.24%と地方消費税1.76%、10%は国税7.8%と地方消費税2.2%の内訳です。地方消費税は、どちらの税率でも国税の消費税額の22/78と定められています(地方税法72条の83)。
上の例で確かめると、次のとおり同じ結果になります。
- 通算後に計算:78万円 × 22/78 = 22万円
- 税率ごとに計算:117万円 × 22/78 = 33万円、△39万円 × 22/78 = △11万円 → 合計22万円
国税部分を通算した後の差引税額に22/78を掛ければ、税率ごとに計算した場合と同じになります。
注意したいポイント
- 税率の区分は「正しく計算するため」のもの:売上・仕入れを税率ごとに正しく分けることは引き続き大切です。区分を誤ると、通算前の税額そのものがずれてしまいます
- 還付は課税期間全体で判断:還付になるかどうかは、全税率を通算した後に控除しきれない金額が残るかで決まります
- 様式の記載要領を確認する:付表の行番号や転記の流れは、一般課税・簡易課税などの方式や様式の版によって異なるため、使う様式の記載要領で確認しましょう
消費税の計算方法の違いは税込経理と税抜経理の違い、還付の仕組みは消費税還付の仕組みもご覧ください。
まとめ
- 軽減税率部分の控除不足は、標準税率部分の差引税額と通算して納付税額を計算する
- 仕入税額控除は課税期間全体の消費税額からまとめて行う仕組みで、税率の区分は税額を正しく計算するためのもの
- 地方消費税はどちらの税率でも国税の22/78なので、通算後に計算しても結果は同じ
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
