ご相談の内容
取得時に仕入税額控除が認められなかった居住用賃貸建物を、調整期間内に他の者へ売った法人からのご相談です。法人税では確定した消費税額との差額を益金にするだけ、消費税では付表2-3の「居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した(譲渡した)場合の加算額」欄に記載するだけ、という理解で正しいか。また、消費税申告書に何か添付資料が必要か、を知りたいという内容でした。
- 消費税は、付表2-3の加算額欄に記載し、譲渡した課税期間の仕入控除税額に加算する
- この加算のために法令で求められる添付書類は、付表以外には特にない
- 法人税は、税抜経理なら差額を雑収入(益金)に計上するだけ。税込経理なら別途の益金計上は不要
回答
消費税:消費税法第35条の2第2項の調整
仕入税額控除が認められなかった居住用賃貸建物(消費税法第30条第10項)を、調整期間(課税仕入れの日から第3年度の課税期間の末日までの期間)に他の者へ譲渡した場合は、消費税法第35条の2第2項の調整を行います。加算額は次の算式で求め、譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算します。
「課税賃貸用」とは、住宅以外の用途での貸付けを指します。加算額は、付表2-3の「居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した(譲渡した)場合の加算額」欄(現行様式では㉕欄)に記載します。
あわせて、建物の譲渡対価そのものは課税売上げとなり、課税標準額と課税売上割合の計算にも含まれます。
添付書類
この加算のために法令で必須とされる添付書類は、付表以外にはありません。ただし、次のものは作成・保存しておくことをおすすめします。
- 算式に使った貸付対価・譲渡対価の内訳
- 調整期間内の譲渡であることの判定根拠をまとめた計算明細
- 取得時の帳簿・請求書等(同法第30条第7項)。この調整の前提になると考えられるため、保存状況を確認しておく
法人税:経理方式で処理が変わる
| 経理方式 | 処理 |
|---|---|
| 税抜経理 | 加算額の分だけ納付税額が減り、仮受消費税等と仮払消費税等の差額との間にずれが出る。このずれを雑収入として益金に計上するだけ |
| 税込経理 | 申告した納付税額をそのまま租税公課として損金に算入。加算額は納付税額の減少として自動的に反映されるため、別途の益金計上は不要 |
税抜経理の場合も、取得時に計上した控除対象外消費税額等(建物の取得価額に含めた分や繰延消費税額等)を、さかのぼって修正する必要はありません。
注意したいポイント
- この調整は一般課税(原則課税)の場合に行うものです。簡易課税や2割特例を適用する課税期間では行いません。
- 調整期間を過ぎてから売った場合は、この調整の対象になりません。取得日と第3年度の課税期間の末日を必ず確認してください。
- 分母・分子には調整期間中の貸付対価を使います。住宅部分と住宅以外の部分の家賃を区分して集計しておく必要があります。
居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限そのものは居住用賃貸建物の消費税、建物を売ったときの消費税全般は建物を売ったときの消費税、経理方式の違いは税込経理と税抜経理、不動産会社に向く方式は?で解説しています。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見るまとめ
- 調整期間内に売ったら、付表2-3の加算額欄に記載して仕入控除税額に加算する
- 必須の添付書類は付表以外にないが、計算明細と取得時の帳簿・請求書等を保存しておく
- 法人税は、税抜経理なら差額を雑収入に計上するだけ、税込経理なら追加の処理は不要
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
