ご相談の内容
大学4年生で、いまのバイト先で年に150万円ほどの収入があり、親の健康保険の扶養に入っています。卒業後はすぐ大学院に進まず、1年あけてから入学する予定で、その間も同じバイト先で働くつもりです。
その1年間は扶養を外れて社会保険に入り、収入を増やしたほうが得なのか。大学院に入ったら、また親の扶養に戻れるのか。社会保険にはいつ加入・脱退し、扶養に戻る手続きはどうするのか、というご相談です。
- 卒業後は学生納付特例が使えず、扶養内でも国民年金保険料の自己負担が生じるため、勤務先の社会保険に入るデメリットは学生時代より小さくなる
- 大学院入学後、収入見込みが基準内であれば再び親の扶養に入れる
- 社会保険は勤務先の加入要件を満たしたときに加入、満たさなくなったときに脱退。扶養の手続きは親の勤務先を通じて行う
回答
卒業後の1年間、扶養内と社会保険加入のどちらが得か
損得は勤務条件によりますが、判断のポイントは「学生でなくなる」ことです。
健康保険の扶養の基準
健康保険の扶養(被扶養者)は、原則として「年収130万円未満」が基準です(健康保険法第3条第7項)。19歳以上23歳未満は令和7年10月から150万円未満に緩和されましたが、年齢はその年の12月31日時点で判定します。卒業後の1年間に23歳になる場合は緩和の対象外となる可能性が高く、いまと同じ150万円程度の収入では扶養から外れることになります。
国民年金保険料の負担
卒業後は学生納付特例(在学中の国民年金保険料の納付を猶予する制度)が使えません。扶養内であっても、国民年金保険料を自分で負担することになります。
一方、勤務先で社会保険に加入すれば、国民年金が厚生年金に切り替わり、将来の年金も増えます。そのため、加入のデメリットは学生時代より小さくなります。
いちばん負担が重くなるケース
注意が必要なのは、扶養を外れても、勤務先の社会保険の加入要件を満たさない場合です。
| 主な加入要件(短時間労働者) | 内容 |
|---|---|
| 労働時間 | 週20時間以上 |
| 賃金 | 月額8.8万円以上 |
| 企業規模 | 従業員51人以上の企業等(2027年以降、段階的に縮小し撤廃予定) |
この要件を満たさないと、国民健康保険と国民年金に自分で加入することになり、負担が最も重くなります。社会保険に加入するなら、保険料を差し引いた手取りが、いまの年収150万円程度のときの手取りを上回るくらいまで収入を増やせるかが目安です。
なお、税金上の扶養(親が受ける扶養控除など)は、健康保険とは別の基準で判定します。2025年以降に改正されています(タックスアンサーNo.1180)。
大学院入学後、親の扶養に戻れるか
入学後、今後1年間の収入見込みが130万円未満などの要件を満たせば、再び扶養に入れます。令和8年4月以降は、過去の収入実績ではなく、雇用契約上の賃金で判定する取扱いとなっています。
加入・脱退のタイミングと手続き
- 加入:大学卒業後、勤務先の加入要件を満たせば、勤務先が資格取得の手続きを行います
- 脱退:大学院に入学すると、学生は短時間労働者の加入対象から外れます(同法第3条第1項第9号。社会人大学院など一部の場合は対象になるケースがあります)。そのため、入学や勤務時間の短縮によって資格を喪失します
- 扶養の手続き:扶養から外れるとき・戻るときは、親が勤務先を通じて「被扶養者(異動)届」を提出します。戻るときは、資格喪失証明書、雇用契約書、在学証明書などを求められることが多いです
注意したいポイント
- 保険の空白期間をつくらない:社会保険の資格喪失日と、扶養に戻る日の間があくと、その間は国民健康保険への加入が必要になります。日付が途切れないよう、勤務先と親の勤務先の手続きを早めに進めましょう
- 「150万円」は年齢で外れることがある:在学中かどうかではなく、12月31日時点の年齢で判定します。卒業のタイミングと誕生日の関係を確認しておきましょう
- 税金の扶養とは別に考える:健康保険の扶養と、親の所得税・住民税の扶養控除は基準が異なります。学生のバイト代と扶養の関係は、大学生のバイト代と交通費、扶養の判定や大学生の家庭教師収入と親の扶養も参考にしてください
まとめ
- 卒業後は学生納付特例が使えず、扶養内でも国民年金保険料を自分で負担する。社会保険に入れば厚生年金になり、加入のデメリットは学生時代より小さい
- 23歳になる年は扶養の基準が130万円未満になる可能性が高い。社会保険の加入要件を満たさないまま扶養を外れると負担が最も重くなる
- 大学院入学後は、収入見込みが基準内なら再び扶養に入れる。手続きは親の勤務先を通じて行い、保険の空白期間をつくらない
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
