ご相談の内容
初めて年末調整の事務を担当する方からのご相談です。年の途中に入社した従業員が1人だけで、年末調整の計算をしたところ、その年に源泉徴収した所得税が全額還付になりました。源泉徴収簿の12月欄をどう書けばよいのか、また納期の特例を使っているため、1月に納付する分をどう処理すればよいのかを知りたいという内容です。
ここでは、2月入社・月給15万円で、毎月の源泉徴収税額が2,420円、年税額が0円になった例で説明します。
- 12月欄の差引徴収税額は「0」ではなく、マイナスの金額(例では△24,200円)を記入する
- 納期の特例の1月納付は、超過税額欄に過納額を記入し、本税0円の納付書も提出する
- 控除しきれない分は翌年7月納付分(1月〜6月分)から差し引く。差し引ききれなければ還付請求もできる
回答
源泉徴収簿の記入
12月分の算出税額も、年間の徴収税額に含めたうえで年末調整を行います。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 2月〜12月の徴収税額(11か月分) | 26,620円 |
| 年税額 | 0円 |
| 過納額(納めすぎの額) | 26,620円 |
12月欄は次のように記入します。
- 算出税額:2,420円
- 年末調整による過不足税額:26,620円(還付)
- 差引徴収税額:2,420円 − 26,620円 = △24,200円
実際には、12月の給与から2,420円を差し引かず、さらに24,200円を本人に支払うことで、合計26,620円を還付したことになります。
納期の特例の納付
納期の特例とは、従業員が少ない事業所が、源泉所得税を半年分まとめて納付できる制度です。
この例では、7月〜12月分の徴収税額は、7月〜11月分12,100円と12月分2,420円の合計14,520円です。1月に提出する納付書(所得税徴収高計算書)には、この14,520円とともに「年末調整による超過税額」欄に26,620円を記入します。差引の本税は0円になりますが、0円の納付書でも提出が必要です。
控除しきれない分の精算
2月〜6月分の12,100円はすでに納付済みのため、超過税額26,620円のうち12,100円が控除しきれずに残ります。この分は、翌年以降に徴収する源泉所得税から順次差し引いて精算できます(所得税法第191条、所得税法施行令第312条)。
具体的には、翌年1月〜6月分の徴収税額を7月10日までに納付する際、納付書の超過税額欄に12,100円を記入して差し引きます。翌年の徴収予定額が少ないなど差し引ききれない場合は、税務署へ「年末調整過納額還付請求書」を提出して還付を受ける方法もあります(所得税法施行令第313条)。
注意したいポイント
- 12月分の算出税額も年間の徴収税額に含めます。 12月分を除いて計算すると、過納額と差引徴収税額がずれます。
- 本税0円でも納付書は提出します。 超過税額を翌期に繰り越す根拠にもなります。
- 令和8年分は計算が変わっています。 令和8年分は基礎控除などの改正により年税額の計算が変わっています。年税額0円となる計算や、源泉徴収簿・納付書の様式(記入欄の名称)は、国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」で念のため確認してください。
従業員側から見た年末調整の論点は育休中の年末調整、自分名義の生命保険料控除は夫婦どちらで申告する?や子どもの国民健康保険料を親が払ったら年末調整で控除できる?でも解説しています。
まとめ
- 全額還付のときは、12月欄の差引徴収税額を「算出税額 − 過納額」のマイナスで記入する
- 納期の特例の1月納付は、超過税額欄に過納額を書き、本税0円の納付書を提出する
- 控除しきれない過納額は翌年7月納付分から差し引き、それでも残れば年末調整過納額還付請求書で還付を受けられる
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
