ご相談の内容
中古住宅を買うにあたり、親から1,000万円を無利息で借りる予定です。銀行の住宅ローンも使うため、最初の10年間は銀行への返済を優先して親への返済は年10万円にとどめ、11年目以降に年150万円ずつ返して16年で完済する計画です。契約書を作って毎年振込で返済するつもりですが、当初の返済額が少ないと贈与とみなされないか、というご相談です。
- 契約書を作り、無理のない返済計画を立て、実際に契約どおり返済していれば、元本が贈与とされる可能性は低いと考えられます
- 当初の返済額が少ないことだけで直ちに贈与にはなりませんが、説明を求められる場面は増えるため、計画の根拠を残すことが大切です
- 無利息の点は利息相当額の問題で、ほかの贈与と合わせて年110万円以下なら贈与税はかからないと考えられます
回答
贈与とされるのは「実質的に返済されない」場合
国税庁タックスアンサーNo.4420「親から金銭を借りた場合」では、返済能力や返済状況からみて実質的に返済されない場合(「ある時払いの催促なし」など)は、借りた金額が贈与として扱われるとされています。
当初の返済額が少ない計画について
ご相談の計画では、最初の10年間の返済累計は100万円で、元本の1割にとどまります。そのため、11年目以降に年150万円を返済できると説明できるかがポイントです。
- 銀行ローンの完済時期と、返済額を増やす時期が重なっていること
- その時点の収入見込み
こうした根拠を整理して残しておくとよいでしょう。
無利息であることについて
無利息の点は、元本ではなく利息相当額の利益の問題です。相続税法第9条のみなし贈与(実質的に贈与と同じ利益を受けたとみなす規定)に当たり得ますが、相続税法基本通達9-10により、少額または課税上弊害がない場合は課税しない取扱いです。
計算の基準となる利率は、民法の法定利率(年3%)が一般的です。この例では1,000万円×3%=年30万円が利息相当額として贈与とみなされる可能性がありますが、ほかに贈与を受けていなければ110万円以下となり、贈与税が課されることはないと考えられます。
契約・返済で注意すること
- 返済は契約どおり振込で行い、記録を残す
- 返済を免除してもらうと、免除額が贈与になる(相続税法第8条)
- 親が完済前に亡くなった場合、残高が貸付金として親の相続財産になる
返済額の少ない期間が長い計画では、最後の点の影響が特に大きくなり得ます。
贈与と判断された事例では、契約書が後から作られている、返済実績がない・途中で途絶えた、借りた人の収入では完済が困難、返済資金を貸主が別に渡している、といった事情が判断のポイントとされています。
注意したいポイント
- 親族からの借入は住宅ローン控除の対象外です
- 住宅取得等資金の贈与税非課税特例(租税特別措置法第70条の2)の活用も選択肢です。令和6年1月1日から令和8年12月31日までの父母や祖父母など直系尊属からの贈与が対象で、中古住宅の場合は、昭和57年1月1日以後に建築されたもの、または地震に対する安全性の基準に適合することが一定の書類で証明されたものであることなど、さまざまな要件があります。購入予定の住宅が要件に当てはまるか、事前の確認が必要です
- 特例を使う場合は、贈与を受ける人の要件も満たす必要があります
生前贈与のルール全体は、生前贈与と相続の新ルールで解説しています。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るまとめ
- 契約書・無理のない返済計画・契約どおりの返済がそろえば、元本が贈与とされる可能性は低い
- 当初の返済額が少ない計画は、後半の返済の根拠(ローン完済時期や収入見込み)を残しておく
- 無利息の利息相当額は、ほかの贈与と合わせて年110万円以下なら贈与税はかからないと考えられる
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
