ご相談の内容
妻に毎年生前贈与をしていく予定の方からのご相談です。夫婦それぞれ別の印鑑を銀行の届出印にしていますが、苗字だけの印鑑よりも、妻の下の名前やフルネームの印鑑にしたほうが、名義預金と判断されるリスクを減らせるのか。また、贈与契約書に押す実印も、フルネームのものにしたほうがよいのかを知りたいという内容です。
- 届出印や実印をフルネームに変えても、それだけで名義預金のリスクが大きく下がるわけではない
- 名義預金かどうかは、印鑑の種類ではなく、預金を実際に誰が管理・支配しているかという実態で判断される
- 印鑑よりも、毎回の契約書・自筆の署名・振込の記録と、妻自身による管理が大切
回答
名義預金とは
名義預金とは、名義は妻でも、実質的には夫の財産とみなされる預金のことです。名義預金と判断されると、夫の相続のときに夫の財産として相続税の対象になります。税務調査では、主に次の点が確認されます。
- 通帳、キャッシュカード、届出印を妻自身が保管しているか
- 入出金や使い道を妻が自分の判断で決めているか
- 贈与のたびに、あげる側ともらう側の双方に「あげた・もらった」という認識があったか
印鑑の種類より「誰が管理しているか」
| 状況 | 名義預金と判断されるリスク |
|---|---|
| フルネームの印鑑だが、夫が妻の印鑑・通帳を預かって管理 | 判断される可能性がある |
| 苗字だけの印鑑だが、妻が自分で保管・使用 | 問題になりにくい |
夫婦で別々の印鑑を使っていること自体は、妻が自分で管理していることを示す材料の一つにはなります。ただし、決め手になるのはあくまで管理の実態です。
贈与契約書の実印も同じ考え方
印鑑登録されていれば、苗字だけの印鑑でも実印として有効で、フルネームにする必要はありません。それよりも、次の点が大切です。
- 贈与の都度、日付を入れた契約書を作成する
- 夫婦それぞれが自筆で署名する
- 現金の手渡しではなく、夫の口座から妻の口座へ振り込んで記録を残す
贈与は、あげる側ともらう側の双方の合意で成立します(民法第549条)。契約書と振込記録は、その合意があったことを示す証拠になります。
注意したいポイント
- 110万円を超えたら妻が申告します。 年間110万円の基礎控除を超える贈与を受けた場合は、受け取った妻が贈与税の申告をします(国税庁タックスアンサーNo.4402)。
- 毎年同額・同時期の約束に注意。 最初から毎年同じ金額を同じ時期に贈与すると約束していると、全体で一括の贈与(定期金の贈与)とみなされるおそれがあります(相続税法基本通達24-1)。金額や時期を年ごとに決めて契約すると安心です。
- 生前贈与加算があります。 妻は法定相続人なので、相続開始前の一定期間内に受けた贈与は相続財産に加算されます(相続税法第19条)。この加算期間は、2024年1月1日以後の贈与から、3年から7年へ段階的に延長されています。贈与の効果は長い目で考える必要があります。
夫婦間の贈与で毎年110万円を渡すときの注意点は妻のNISA資金に毎年110万円を渡すのは贈与税がかからない?、7年加算の仕組みは生前贈与と相続の新ルールでも解説しています。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るまとめ
- 印鑑をフルネームに変えるだけでは、名義預金のリスクはあまり変わらない
- 判断されるのは、通帳・印鑑の保管と、お金の使い道を誰が決めているかという実態
- 毎回の契約書・自筆の署名・振込記録を残し、定期金の贈与と7年の生前贈与加算にも注意する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
