ご相談の内容
作家としてデビューが決まり、1年後くらいを目安に本が出る予定です。今年は執筆による収入はなく、来年以降に印税などの収入が入ってくる見込みで、その後も続けて作品を出せそうです。税金のことがまったく分からないので、開業届や青色申告は出したほうがよいのか、デビューの準備で買った印鑑・名刺・授賞式用の服は経費になるのか、ほかに知っておくべきことは何か、というご相談です。
- 継続して出版の見込みがあるなら、今年のうちに開業届と青色申告承認申請書を出しておくのがおすすめ
- 印鑑・名刺は経費になるが、授賞式などで着る服は原則として経費にならない
- 印税は源泉徴収されて支払われ、確定申告で精算する。税理士への依頼は、収入が増えてから検討すれば十分
回答
1.開業届と青色申告
開業届は、事業を始めたことを税務署に知らせる書類で、開業から1か月以内に提出します(所得税法229条)。
青色申告は、帳簿をきちんとつける代わりに税金の優遇を受けられる制度です。青色申告の承認申請書は、開業日から2か月以内に提出します(所得税法144条)。
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 最大65万円の青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2。65万円は電子申告などの要件あり)/赤字を3年間繰り越せる(所得税法70条) |
| デメリット | 複式簿記(取引を「原因」と「結果」の二面から記録する方法)で帳簿をつける手間。会計ソフトを使えばかなり軽くなる |
なお、会社勤めなどのかたわらで執筆していて収入が少額の場合は、事業所得ではなく雑所得とされ、青色申告の対象外となることがあります(所得税基本通達35-2)。執筆を継続的な仕事として続けていく見込みかどうかが一つの目安になります。
2.印鑑・名刺・服は経費になるか
- 印鑑・名刺:執筆の仕事のための支出であれば経費になります。開業前に支払ったものは「開業費」(事業を始める準備のためにかかった費用)として計上できます(所得税法施行令7条)。
- 授賞式などで着る服:普段も着られるため、原則として私的な支出(家事費、所得税法45条)となり、経費にはなりません。
経費として計上するものも、そうでないものも、領収書は保管しておいてください。
3.そのほかに知っておきたいこと
印税の源泉徴収
印税は、原則として10.21%(1回の支払いが100万円を超える部分は20.42%)の所得税が差し引かれて支払われます(所得税法204条)。差し引かれた税金は、確定申告で精算します。経費が多い年などは、還付を受けられることもあります。
平均課税
原稿料や著作権の使用料のように、年によって金額が大きく変わる所得(変動所得)については、一定の要件のもとで平均課税(所得税法90条)を使えます。収入が多い年の税負担をならして計算する仕組みで、ヒット作が出て急に収入が増えた年などに役立つことがあります。
インボイス
出版社からインボイス(適格請求書)の登録について尋ねられることがあります。登録するかどうかは任意ですが、経過措置も含めて確認しておくとよいでしょう。
税理士への依頼
税理士への依頼は必須ではありません。収入が増えた段階で検討すれば十分です。
注意したいポイント
- 期限を過ぎると青色申告は翌年から:青色申告承認申請書の期限を過ぎると、その年は白色申告になります。出版の見通しが立った段階で準備しておくと安心です。
- 「経費になる」は仕事のための支出に限られる:仕事にもプライベートにも使えるものは、原則として家事費になります。迷うものは、何のために買ったかをメモしておきましょう。
- 今すぐできること:事業用の口座で入出金を分け、領収書を保管することから始めてください。帳簿づけが格段に楽になります。
青色申告の65万円控除の要件は青色申告のメリットと65万円控除の要件(不動産所得の例ですが、控除の仕組みは共通です)、税理士を探すタイミングはスタートアップ・創業期の税理士の選び方もあわせてご覧ください。
まとめ
- 継続して出版するなら、開業届(開業から1か月以内)と青色申告承認申請書(開業日から2か月以内)を早めに出す
- 印鑑・名刺は経費(開業前なら開業費)になるが、授賞式などの服は原則として経費にならない
- 印税は10.21%(100万円超の部分は20.42%)が源泉徴収され、確定申告で精算する。収入が大きく変動する年は平均課税も検討できる
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
