住宅の家賃には消費税がかからない、というのは賃貸経営の基本です。ところが、マンスリー・短期賃貸の消費税は、契約期間や運営の仕方によって課税になることがあります。
空室対策としてマンスリー契約を受け入れる、運営会社に一括で貸す、ウィークリー運営に切り替える、といった判断をする前に、課税・非課税の線引きを押さえておく必要があります。この記事では、消費税法施行令と通達、国税庁の質疑応答事例、公表裁決をもとに整理します。
- 住宅の貸付けでも、貸付期間が1か月未満の場合と旅館業に係る施設の貸付けは非課税から除かれ、課税になる(消費税法施行令16条の2)
- 旅館業に当たるウィークリーマンションなどは、利用期間が1か月以上でも課税(国税庁)
- 期間の判定は契約で定めた貸付期間が基本(土地の貸付けについて通達6-1-4)。ただし実態が宿泊の提供なら旅館業の問題になる
- 運営会社への一括貸しは、住宅として転貸することが契約上明らかなら非課税。短期運営前提なら課税になり得る
- 課税売上げが増えると、課税売上割合や納税義務の判定が変わる。居住用賃貸建物の調整にも関係する
住宅の貸付けが非課税になる要件と、除外される場合
非課税の要件
消費税法別表第二第13号は、住宅(人の居住の用に供する家屋またはその部分)の貸付けを非課税としています。ただし、次の限定があります。
- 契約において人の居住の用に供することが明らかにされているもの(契約で用途が明らかでない場合は、貸付け等の状況からみて居住用であることが明らかなもの)
- 一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く
非課税から除外される2つの場合
政令で定める場合として、消費税法施行令16条の2は次の2つを挙げています。国税庁のタックスアンサーNo.6226も同じ整理です。
| 除外される場合 | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 貸付期間が1か月未満 | 居住用でも、貸付けに係る期間が1か月に満たない | 課税 |
| 旅館業に係る施設の貸付け | 旅館業法2条1項の旅館業(旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業) | 期間にかかわらず課税 |
消費税法基本通達6-13-4は、ホテル、旅館のほか旅館業法の適用を受けるリゾートマンション、貸別荘などは、利用期間が1か月以上でも非課税にならないとしています。同じ通達の注で、住宅宿泊事業(民泊)も旅館業に該当し、非課税にならないとされています。一方、貸家業や貸間業(学生などに部屋を提供して生活させる、いわゆる「下宿」と呼ばれるものを含む)は旅館業に該当しないとされています。
マンスリー・ウィークリー賃貸の判定
判定の流れ
マンスリー・短期賃貸の消費税は、次の順で考えると整理しやすくなります。
- 旅館業に当たるか:旅館業法の許可を受けて営業している、または実態として宿泊料を受けて人を宿泊させる営業なら、期間にかかわらず課税
- 貸付期間が1か月以上か:賃貸借契約(定期建物賃貸借を含む)で1か月以上の期間を定めて貸しているか
- 居住用であることが明らかか:契約に居住用と明記されているか。明記がない場合でも、個人が住んでいて居住以外に使われていることを貸主が把握していない、などの状況があるか
期間は契約で判定するのが基本
住宅の貸付けの「1か月未満」の判定方法を直接定めた通達は見当たりません。ただ、同じく1か月未満の貸付けを非課税から除いている土地の貸付けについて、消費税法基本通達6-1-4は「契約において定められた貸付期間によって判定する」としています。住宅でも、契約書で定めた期間を基準に検討するのが基本と考えられます。
| ケース | 消費税 |
|---|---|
| 居住用・契約期間2か月の定期建物賃貸借(旅館業ではない) | 非課税 |
| 居住用・契約期間2週間の賃貸借 | 課税(1か月未満) |
| 1か月以上の契約で入居したが、入居者の都合で2週間で解約 | 契約期間で判定する考え方からは非課税と考えられる(実態に注意) |
| 旅館業の許可を受けたウィークリー・マンスリー施設 | 課税(期間を問わない) |
| 住宅宿泊事業の届出物件 | 課税 |
注意したいのは、形式だけ1か月以上の契約にして、実態は短期の宿泊提供というケースです。寝具やリネンの交換、清掃などのサービスを付けて日単位の宿泊として運営していれば、旅館業に当たらないかという問題になります。消費税は契約の形式だけでなく、取引の実態で判断されます。
サービス付きの場合
家具・家電付きでも、それが住宅と一体で貸し付けられているなら住宅の貸付けに含まれます(通達6-13-1)。一方、清掃やリネン交換などの役務を別料金で提供している場合や、1つの契約に住宅の貸付けと役務の提供が混在している場合は、対価を合理的に区分し、役務部分は課税になります(通達6-13-6)。電気・ガス・水道の利用料を家賃と別に受け取る場合も、非課税の家賃には含まれません(タックスアンサーNo.6226)。
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不動産投資家向け税務・融資支援を見る運営会社への一括貸し(転貸)と裁決事例
住宅として転貸することが明らかなら非課税
オーナーがマンスリー運営会社やサブリース会社に部屋をまとめて貸し、その会社が入居者に転貸する形もよくあります。消費税法基本通達6-13-7は、賃借人が自ら使用しない場合でも、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合は、住宅の貸付けに含まれるとしています。国税庁の質疑応答事例「転貸を前提とした住宅の貸付け」も同じ整理です。
逆にいえば、運営会社が1か月未満の短期利用や旅館業として運営することを前提とした契約なら、住宅として転貸することが明らかとはいえず、オーナーの賃料も課税売上げになり得ます。
平成28年9月7日裁決:契約の内容で非課税と判断
国税不服審判所 平成28年9月7日裁決(裁決事例集No.104)は、転貸の場合の判断を示した公表裁決です。
マンションの1室を買った審査請求人が、売主の不動産会社にその部屋を賃貸し(マスターリース)、会社はさらに第三者へ定期建物賃貸借で転貸していました。審査請求人は、会社への賃貸は住宅の貸付けではない課税取引だとして、取得時の消費税の還付を求めましたが、審判所は次の点から、住宅として転貸することが契約書その他において明らかであり、全額が非課税取引だと判断しました。
- 賃貸借契約書に、会社の住宅賃貸事業のブランドの貸室として転貸する旨の定めがあった
- 売買契約書に、居住の目的以外に使わない旨の定めがあり、賃貸借契約書にはそれ以外の用途を認める定めがなかった
- 会社の担当者が、契約時に住宅として転貸すると説明していた
審査請求人は「再転貸や法人の転借人が想定されている」「実際にはオフィス的にも使われ得る立地だ」と主張しましたが、認められませんでした。判断の決め手は、契約書の用途の定めと、契約当事者の説明内容でした。
国税不服審判所 平成28年9月7日裁決 公表裁決事例(kfs.go.jp)
個人と法人、物件取得時の消費税との関係
個人と法人の違い
消費税の課税・非課税の判定は、個人も法人も同じです。違いが出るのは、所得税・法人税の側です。
| 項目 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 消費税の課税・非課税 | 同じ基準 | 同じ基準 |
| 所得区分 | 通常の賃貸借なら不動産所得。旅館業や民泊のようにサービスを伴う宿泊提供は事業所得または雑所得になり得る | 区分なし(すべて益金) |
| 納税義務の判定 | 前々年の課税売上高など | 前々事業年度の課税売上高など |
マンスリー賃貸の賃料が課税になると、住宅家賃中心の大家でも課税売上高が増え、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば課税事業者になります。インボイス登録の要否も含めて確認が必要です。
居住用賃貸建物の制限と調整
税抜1,000万円以上の居住用賃貸建物は、取得時の消費税を原則として控除できません。ただし、第3年度の課税期間の末日までに課税賃貸用(住宅の貸付け以外の貸付け)に供した場合は、控除できなかった税額の一部を加算する調整があります(消費税法35条の2)。国税庁の質疑応答事例は、居住用賃貸建物の一部を民泊に使った場合はこの調整の対象になるとしています。
旅館業として運営するマンスリー・ウィークリー施設や、1か月未満の短期賃貸も、住宅の貸付けではない貸付けに当たります。調整の計算は、居住用賃貸建物の判定実務と居住用賃貸建物の消費税で解説しています。調整を目的に運営形態を変えることを勧めるものではなく、事業上の判断で用途が変わったときに忘れずに計算することが大切です。
会計上の扱いと銀行からの見え方
決算書の表示
マンスリー・短期賃貸の賃料は、賃貸事業の売上高です。消費税の課税・非課税が違っても、表示区分が変わるわけではありません。ただし、税抜経理をしている場合、課税売上げになった部分は仮受消費税を区分して処理します。旅館業として運営する場合は、清掃・リネン・予約サイト手数料などの原価が増えるため、粗利率が普通の賃貸と大きく異なります。
銀行の見方
- 収入の安定性:マンスリー・ウィークリーは稼働率の変動が大きい。月別の稼働実績を示せると説明しやすい
- 消費税の負担:課税売上げになった分は消費税の納付が発生し、資金繰りに影響する。賃料設定が税込か税抜かも確認される
- 用途と融資契約:アパートローンなどで買った物件を旅館業や短期賃貸に転用すると、融資契約の資金使途や用途の定めに触れるおそれがある
著書のモデルでは、銀行格付けの返済能力の配点が大きく、債務償還年数は10年以内を健全の目安としています。消費税の納付で現預金が減れば、この指標にも影響します。課税・非課税の判断を誤ると、後から追徴と加算税が発生し、資金繰りと銀行評価の両方を傷めます。
実務のチェックポイント
- 契約書に居住用と明記しているか。期間は1か月以上で定めているか
- 清掃・リネンなどのサービスを付けていないか。付けているなら別料金・区分経理しているか
- 旅館業の許可や住宅宿泊事業の届出をしている物件は、期間にかかわらず課税として処理しているか
- 運営会社への一括貸しは、住宅として転貸する旨の定めが契約書にあるか
- 課税売上高の増加で、納税義務・インボイス登録・課税売上割合が変わらないか
- 居住用賃貸建物を課税賃貸用に転用した場合、第3年度の調整を計算したか
まとめ
- 住宅の貸付けでも、1か月未満の貸付けと旅館業に係る施設の貸付けは課税
- 旅館業に当たる施設は、利用期間が1か月以上でも課税
- 期間は契約で定めた貸付期間で判定するのが基本だが、実態が宿泊提供なら旅館業として扱われる
- 運営会社への一括貸しは、住宅として転貸することが契約上明らかなら非課税(平成28年9月7日裁決)
- 課税売上げの増加は、納税義務、課税売上割合、居住用賃貸建物の調整にも影響する
空室対策で契約形態を変えるときは、消費税の扱いもあわせて確認してください。クレフティでは不動産投資家向けサポートの中で、運営形態ごとの税務と融資への影響をご相談いただけます。民泊の所得区分は民泊収入の所得区分もご覧ください。
