不動産会社や資産管理法人が銀行から借入れをするとき、社長が連帯保証人になることは今も少なくありません。社長は会社の借入れの全額について責任を負う一方で、保証の対価を受け取っていないのが普通です。
そこで、「会社から社長に保証料を払ってもよいか」「払うならいくらが妥当か」という質問をいただきます。この記事では、会社と社長の間で保証料をやりとりする場合の税務、保証債務を実際に履行したときの課税、相続での扱い、そして決算書と銀行の見え方を整理します。経営者保証そのものを外す方法は経営者保証を外す方法で扱っています。
- 社長が実際に保証しており、相当な水準の保証料であれば、会社の損金、社長の雑所得とするのが一般的な整理
- 保証の実態や料率の根拠がないと、役員給与とみられ損金に算入できないおそれがある
- 保証料は「信用の保証」の対価で、消費税は非課税
- 保証債務を履行するために資産を売り、会社に求償できなくなった場合は、所得税法64条2項の特例を検討する
- 銀行は保証料を「会社から社長への資金流出」として見ることがある。まずは保証そのものを外せる財務を目指す
個人保証の現状と、保証料を払う意味
不動産の融資では、会社の借入れに代表者の連帯保証を求められることが多くあります。保証人は、会社が返済できなくなれば、自分の財産で返済する義務を負います。
民法では、事業のための貸金債務を個人が保証する場合、原則として事前に公正証書で保証の意思を確認する必要がありますが(民法465条の6)、会社の取締役などが保証する場合は、この手続きは不要とされています(民法465条の9)。社長は、手続き上も保証をしやすい立場にあるということです。
保証料を払う考え方の背景は、保証というリスクを社長個人が負っていることへの対価です。社長からすると、保証料は会社から個人へ資金を移す一つの方法に見えるかもしれませんが、税務上は「対価として相当か」が問われます。
税務上の扱い:会社側と社長側
| 項目 | 会社(法人) | 社長(個人) |
|---|---|---|
| 扱い | 保証の対価として相当な額なら損金(支払保証料) | 雑所得(総合課税) |
| 注意点 | 保証の実態がない、料率の根拠がない、利益に応じて金額を動かすと、役員給与とみられるおそれ | 給与所得とは別に確定申告が必要。源泉徴収はされない |
| 消費税 | 信用の保証としての役務の提供の対価で非課税 | 同左(課税売上にならない) |
会社側:「保証の対価」として説明できるか
法人税法では、役員に支給する給与のうち、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれにも当たらないものは損金に算入されません。保証料が保証の対価ではなく、実質的に報酬の上乗せとみられると、この役員給与の問題になります。
保証の対価として説明するには、次の点をそろえておく必要があります。
- 社長が実際に、会社のどの借入れを、いくらまで保証しているか(保証契約書の写し)
- 保証料の計算方法(保証している借入残高×料率など)と、料率を決めた根拠
- 会社と社長の間の保証料に関する契約書(取締役会設置会社では、取締役と会社の取引として承認手続きが要る場合がある)
- 借入残高が減れば保証料も減る、保証が外れれば保証料もなくなる、という連動
料率については、法令で決まった水準はありません。第三者の保証機関に保証を依頼した場合の保証料率などを参考に、会社が外部に保証を頼んだらいくらかかるかという観点から説明できるようにしておくのが基本です。会社の利益が多い年に保証料を増やすような決め方は、対価としての説明がつきません。
社長側:雑所得として申告する
保証料は、社長が保証という役務を提供した対価です。公表裁決事例要旨には、会社の代表取締役が個人保証を継続することを前提に、取引先の外国法人から付与された株式購入選択権の行使益について、役務の提供の対価としての性質をもつとして、一時所得ではなく雑所得とした事例があります(平成15年6月6日裁決、裁決事例集No.65 238頁)。保証料も、給与所得とは別に雑所得として申告するのが原則です。
銀行に払う保証料との違い
会社が信用保証協会などに払う保証料は、保証期間に応じて期間按分する前払費用の問題です。こちらは銀行に払う費用(融資手数料・保証料・抵当権設定費用・印紙)の処理で整理しています。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る保証債務を履行したときの課税
社長が資産を売って保証債務を履行した場合
会社が返済できなくなり、社長が自分の不動産などを売って保証債務を履行し、会社に求償しても回収できなくなった場合には、所得税法64条2項の特例があります。国税庁のタックスアンサー(No.3220)によれば、次の要件をすべて満たすと、回収できなくなった金額などの範囲で、譲渡所得がなかったものとされます。
- 本来の債務者がすでに債務を弁済できない状態のときに保証したものではないこと
- 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること
- 履行した債務の全部または一部が、本来の債務者から回収できなくなったこと
本来の債務者に弁済能力があるのに回収しない場合は、特例を受けられません。法人の代表者が会社の債務を保証して履行した場合の求償権の行使不能の判定については、国税庁が中小企業庁の照会に回答した通知(平成14年12月25日「保証債務の特例における求償権の行使不能に係る税務上の取扱いについて」)もあり、会社が解散していなくても判定できる場合が示されています。
会社が社長の保証債務を引き受けた場合
公表裁決事例要旨には、法人の代表者が法人の業務に関連してした保証債務を、法人が無償で引き受けた場合の負担額は、引受けの時ではなく、現実に履行した時の損金になるとした事例があります(裁決事例集No.30 113頁)。
確認先:国税不服審判所 公表裁決事例要旨「保証債務の履行損失」
相続での扱い
保証債務は、相続人に引き継がれます。相続税の計算では、保証債務は原則として債務控除の対象になりませんが、主たる債務者が弁済不能の状態にあって保証人が履行しなければならず、求償しても返還を受ける見込みがない場合は、その弁済不能の部分を債務として控除できます(相続税法基本通達14-3)。
| 場面 | 社長側の課税 | 会社側の処理 |
|---|---|---|
| 保証料を受け取る | 雑所得 | 支払保証料(相当額なら損金) |
| 資産を売って保証債務を履行し、求償不能 | 所得税法64条2項の特例を検討 | 社長からの求償債務(社長が放棄すれば会社に債務免除益) |
| 会社が社長の保証債務を引き受ける | 求償権の放棄の扱いを整理 | 現実に履行した時に損金 |
| 社長の相続 | 保証債務は原則として債務控除不可(弁済不能部分は例外) | 新たな保証人の手配を銀行から求められることがある |
会計上の扱いと決算書の表示
会社が社長に払う保証料は、借入れに関連する費用として、決算書では営業外費用(支払保証料など)に表示するのが一般的です。どの区分に表示するかは、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って取引の実態で判断し、税務上の損金算入の可否とは別に検討します。
社長への保証料は、関係者との取引です。銀行に決算書を出すときは、勘定科目内訳書などで支払先が社長であることが分かるようにしておき、聞かれたら金額の根拠を説明できるようにしておきましょう。
銀行からの見え方:保証料より、保証を外せる財務
銀行は、会社から社長への支払いを、役員報酬・保証料・賃料・利息などを合わせて見ています。
- 社外流出として見られる:保証料は会社の現預金を減らし、経常利益も減らす。社長が受け取った保証料は、銀行から見れば会社の外に出たお金である
- 保証人の立場との関係:保証人は「いざというときに会社を支える人」。その保証人が会社から対価を受け取っていることを、銀行が好意的に見るとは限らない
- 経営者保証ガイドライン:経営者保証を外すには、法人と個人の資産・経理の分離、財務基盤の強化、適時適切な情報開示が求められる。会社と社長の間の資金のやりとりが多いと、「分離」の説明が難しくなる
著書のモデルでは、プロパー融資の目安を「正常先+純資産1億円」としています。保証料で社長に資金を移すより、利益を会社に残して純資産を厚くし、保証を求められない財務に近づけるほうが、長い目で見て社長個人のリスクも小さくなります。純資産の積み上げ方は不動産事業者が純資産1億円を目指す道筋を参照してください。
実務のチェックポイント
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 保証の範囲 | 社長がどの借入れを、いくらまで保証しているか一覧にしているか |
| 保証料の契約 | 会社と社長の間で契約書を作り、計算方法を定めているか |
| 料率の根拠 | 第三者の保証機関の料率など、客観的な水準と比べたか |
| 連動 | 借入残高の減少や保証の解除に応じて保証料が変わる仕組みか |
| 社長の申告 | 受け取った保証料を雑所得として申告しているか |
| 銀行への説明 | 支払先・金額・根拠を説明できるか。保証解除の相談とあわせて検討したか |
| 相続の備え | 保証債務が相続人に引き継がれることを家族と共有し、保証の範囲を整理しているか |
まとめ
- 社長が実際に保証し、相当な水準の保証料であれば、会社の損金・社長の雑所得とするのが一般的な整理
- 根拠のない保証料は役員給与とみられるおそれがある。契約書と料率の根拠をそろえる
- 保証料の消費税は非課税。保証債務を履行したときは所得税法64条2項の特例を検討する
- 保証債務は相続人に引き継がれ、相続税では原則として債務控除できない
- 銀行目線では、保証料より保証を外せる財務を目指すほうが効果が大きい
保証料の設計は、会社と社長の資金の流れ全体の中で考える必要があります。クレフティでは、不動産投資家向けサポートの中で、社長と会社の取引の整理や、経営者保証の解除に向けた銀行との相談までお手伝いしています。
