「会社を設立するけれど、決算期は何月にすればいいのか」「なんとなく3月決算にしようと思っている」。設立前のご相談で、必ず話題になるテーマです。
法人の決算期は、設立時に自由に決められます。個人事業主は1月〜12月と決まっていますが、法人は何月を決算月にしても構いません。ただし、この決め方によって、1期目の長さ、消費税の免税期間、役員報酬を見直す時期、銀行に決算書を出すタイミングが変わります。
この記事では、決算期の決め方を4つの視点から整理し、よくある失敗と、決算期を変更する手続きまで解説します。
- 決算期は繁忙期・消費税・役員報酬・融資の4つの視点で決める
- 設立月の前月を決算月にすると、1期目をほぼ12か月にできる。一方、消費税の免税期間を有利にするため1期目をあえて短くする設計もある
- 役員報酬は期首から3か月以内にしか原則変えられない。決算期は役員報酬の見直しサイクルも決める
- 銀行は決算書で会社を見る。融資を申し込みたい時期に、良い決算書がそろうかも考えて決める
決算期を決めると、何が決まるのか
決算期(事業年度の終わり)を決めると、会社の年間のスケジュールが決まります。
| 決まること | 内容 |
|---|---|
| 1期目の長さ | 設立日から最初の決算日までの期間。最長1年 |
| 申告・納付の期限 | 原則として決算日の翌日から2か月以内 |
| 消費税の免税期間 | 1期目・2期目の長さと、特定期間の判定に影響する |
| 役員報酬の改定時期 | 原則として期首から3か月以内に決め、その期は毎月同額 |
| 決算書が出る時期 | 銀行に新しい決算書を提出できるタイミング |
| 中間申告の時期 | 前期の法人税額などが一定額を超えると、期の途中で中間申告・納付が必要 |
株式会社の場合、事業年度は定款に記載するのが一般的です。税法上の事業年度は1年を超えられません。
設立月と決算月の組み合わせの例
設立月と決算月の組み合わせで、1期目の長さは次のように変わります。
| 設立日 | 決算月 | 1期目の期間 | 1期目の長さ |
|---|---|---|---|
| 10月1日 | 9月 | 10月1日〜翌年9月30日 | 12か月 |
| 10月1日 | 3月 | 10月1日〜翌年3月31日 | 6か月 |
| 10月1日 | 12月 | 10月1日〜12月31日 | 3か月 |
| 10月15日 | 10月 | 10月15日〜10月31日 | 半月あまり |
1期目が12か月なら、1年分の実績がそろった決算書を銀行に見せられます。6か月や3か月にすると、決算と申告の回数が早く訪れる代わりに、消費税の判定などで有利になる場合があります。どちらを取るかは、事業の立ち上がり方次第です。
申告期限と中間申告
法人税の申告と納付の期限は、原則として決算日の翌日から2か月以内です。申告期限の延長の特例を受けている会社でも、延長した期間の分は利子税がかかります。
また、2期目以降は、前期の法人税額が一定額を超えると、期の途中で中間申告と納付が必要になります。決算月を決めることは、1年のうちいつ大きな納税があるかを決めることでもあります。賞与の支給月や、仕入れが集中する時期と納税の時期が重ならないかも確認しておくと、資金繰りが安定します。
決算期の決め方|4つの視点
視点1:繁忙期と決算作業を重ねない
決算日の後には、棚卸し、帳簿の締め、申告書の作成が続きます。売上の繁忙期と決算作業が重なると、社長も経理担当者も手が回らなくなります。
- 年末商戦がある小売業:12月・1月を避ける
- 年度末に工事や納品が集中する事業:3月を避ける
- 夏が繁忙期の観光・レジャー業:7月・8月を避ける
また、3月決算は日本で最も多い決算期です。税理士事務所も金融機関も、5月前後は決算と申告が集中します。特別な理由がなければ、あえて3月を避けると、決算の相談や銀行との面談の時間を取りやすくなるという面もあります。
視点2:1期目の長さと消費税の免税期間
設立した月の前月を決算月にすると、1期目をほぼ12か月にできます。たとえば10月に設立するなら、9月決算です。1期目が長いほど、設立時の免税期間を長く使え、1期目の決算書も1年分の実績として見せられます。
一方で、1期目をあえて短くする設計もあります。1期目が7か月以下などの短い事業年度だと、2期目の消費税の免税を判定する「特定期間」の判定がなくなるためです。ただし、3期目の判定では1期目の売上を12か月分に年換算するなど注意点があり、売上の立ち上がり方によって有利・不利が変わります。詳しくは法人設立前に知るべき消費税で解説しています。
また、1期目が短いと、設立費用などの経費が短い期間に集中し、1期目が赤字の決算書になりやすい点も考えておく必要があります。
視点3:役員報酬を見直すサイクル
役員報酬は、原則として事業年度の開始から3か月以内に金額を決め、その期の間は毎月同額にする必要があります(定期同額給与)。期の途中で業績がよくなっても、原則として報酬は上げられません。
つまり、決算期は役員報酬を見直すタイミングでもあります。売上の季節変動が大きい事業では、繁忙期を過ぎて1年の業績の見通しが立つ時期を期首にすると、報酬を決めやすくなります。役員報酬の考え方は役員報酬の決め方をご覧ください。
視点4:融資を申し込みたい時期に、良い決算書がそろうか
ここが、一般的な解説ではあまり語られない視点です。
銀行は、融資の審査で直近の決算書を見ます。決算期を決めることは、銀行に新しい決算書を出せる時期を決めることでもあります。
- 設備投資や出店で大きな借入れを予定している時期がある場合、その直前に決算を迎え、実績を反映した決算書を出せるようにする
- 売上の繁忙期の直後に決算を迎えると、売掛金や在庫が少なく、現預金が多い状態の貸借対照表を見せやすい
- 逆に、繁忙期に向けて在庫を積み増す時期に決算を迎えると、借入金と在庫が膨らんだ貸借対照表になりやすい
私は不動産投資を2014年に始め、法人で物件を買い続けてきましたが、物件の取得時期と決算期の関係は常に意識してきました。決算の直前に大きな物件を取得すると、取得にかかった費用で利益が圧縮され、借入金だけが増えた決算書になります。同じ事業でも、決算期との位置関係で決算書の見え方は変わるのです。
決算期の途中でも、銀行には試算表を出して業績を説明できますが、格付けの基本になるのはあくまで決算書です。決算書を銀行に出す前の確認ポイントは決算書を銀行に出す前にやるべき3つのチェックで整理しています。
よくある失敗
「なんとなく3月決算」で、繁忙期と重なった
「会社は3月決算が普通だと思っていた」という理由で3月決算にした結果、年度末の繁忙期と決算作業が重なり、決算の数字を確認する余裕がないまま申告期限を迎える、というケースです。
設立月を決算月にして、1期目が1か月になった
たとえば4月10日に設立し、決算月を4月にすると、1期目は4月10日〜4月30日のわずか20日あまりになります。決算と申告の手間が1回増えるだけで、ほとんどメリットがありません。意図した設計でない限り、避けるべきパターンです。
決算直前の大きな支出で、1期目が赤字に
設立直後は、設備や広告などの支出が集中しがちです。1期目が短いとその影響が大きく出て、赤字の決算書になります。創業融資の後に民間の銀行から借りるとき、1期目・2期目の決算書が最初に見られます。支出の時期と決算期の関係も考えておきましょう。
法人成りの年に、個人の確定申告と決算が重なった
個人事業から法人成りした場合、法人化した年の個人事業の分は、翌年3月15日までの確定申告で精算します。法人の決算月を12月や1月にすると、法人の決算・申告と個人の確定申告が2月〜3月に重なり、作業が集中します。
さらに、法人化した年は、個人事業の売掛金や在庫、事業用の資産を法人に引き継ぐ処理も発生します。個人の最後の申告と法人の最初の決算が近いと、どちらに計上すべき取引かの整理が追いつかず、誤りの原因になります。法人成りの方は、個人の確定申告の時期から少し離れた月を決算月にすると、落ち着いて両方の数字を確認できます。法人化の判断そのものは個人事業主の法人化のタイミングと目安で解説しています。
決算期を変更するには
決算期は、設立後に変更することもできます。株式会社の場合の一般的な流れは次のとおりです。
- 株主総会の特別決議で定款を変更する(事業年度が定款に定められている場合)
- 株主総会の議事録を作成する
- 税務署、都道府県、市区町村に異動届出書を提出する(定款や議事録の写しを求められることもある)
事業年度は登記事項ではないため、変更の登記は不要です。
ただし、決算期を変更すると、変更した年は事業年度が短くなり、決算と申告の手間が増えます。消費税の課税期間や、役員報酬の改定時期、中間申告にも影響します。銀行にとっても、事業年度の長さが違う決算書が混ざると前期との比較がしにくくなるため、変更する場合は理由を説明できるようにしておくことが大切です。
まとめ
- 決算期は繁忙期・消費税・役員報酬・融資の4つの視点で決める
- 設立月の前月を決算月にすると1期目をほぼ12か月にできる。消費税の免税を意識して1期目を短くする設計もあるが、注意点が多い
- 決算期は役員報酬の見直しサイクルも決める
- 決算期を決めることは、銀行に決算書を出す時期を決めること。借入れの予定や繁忙期との位置関係を考える
- 決算期は変更できるが、手間と影響があるため、設立時にしっかり決めておく
決算期は、資本金や役員報酬と並んで、設立前に決めておきたい項目です。設立の全体の流れは会社設立の費用と流れをご覧ください。クレフティでは、設立前の段階から決算期・消費税・役員報酬・創業融資までまとめてご相談いただけます。詳しくはスタートアップ支援をご覧ください。
