「会社設立の費用はいくらかかるのか」「何から手をつければいいのか」。起業のご相談で最初に聞かれるのが、この2つです。
結論から言うと、法定費用は株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜(電子定款の場合)。お金の面では、それほど大きな負担ではありません。むしろ気をつけたいのは、設立の手続きの中で決める「資本金」「決算期」「役員報酬」などが、あとから変えにくいことです。ここを何となく決めてしまうと、消費税や創業融資、銀行との付き合い方にまで影響が出ます。
この記事では、会社設立の費用の内訳と流れを整理したうえで、税理士として「設立前に決めておいてほしいこと」をお伝えします。
- 会社設立の法定費用は、電子定款なら株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜。紙の定款だと収入印紙4万円が加わる
- 流れは「基本事項の決定 → 定款作成・認証 → 資本金の払込み → 登記申請 → 設立後の届出」。基本事項が決まっていれば登記申請まで1〜2週間が目安
- 資本金・決算期・役員報酬は設立後に変えにくい。消費税の免税や創業融資から逆算して決める
- 設立後すぐに税務署・都道府県・市区町村・年金事務所への届出がある。青色申告の申請期限を逃さない
会社設立にかかる費用の内訳
会社設立の費用は、国や公証役場に払う法定費用と、それ以外の実費・専門家報酬に分かれます。法定費用は次のとおりです(2026年10月時点)。
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料(公証役場) | 1万5,000円〜5万円(資本金の額などによる) | 不要 |
| 定款の収入印紙 | 4万円(電子定款なら不要) | 4万円(電子定款なら不要) |
| 登録免許税(法務局) | 資本金×0.7%(最低15万円) | 資本金×0.7%(最低6万円) |
| 法定費用の目安(電子定款) | 約20万円〜 | 約6万円〜 |
株式会社の定款認証手数料
株式会社は、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。手数料は資本金の額によって変わり、100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以上は5万円です。
さらに、資本金100万円未満で、発起人が全員個人で3人以下、発起人が設立時の株式をすべて引き受け、取締役会を置かないといった要件をすべて満たすと、1万5,000円に下がります。
登録免許税は「資本金×0.7%」
登記の際に納める登録免許税は、資本金の0.7%です。ただし最低額があり、株式会社は15万円、合同会社は6万円です。資本金が約2,143万円を超えるまでは、株式会社は最低額の15万円になります。
法定費用以外にかかるもの
- 登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書の取得費用
- 会社の印鑑(実印・銀行印など)の作成費用
- 司法書士や設立代行サービスに依頼する場合の報酬
- 電子定款を自分で作る場合の、電子署名の環境を整える手間
電子定款の作成には電子署名の環境が必要なため、自分で用意するよりも、電子定款に対応した専門家に任せたほうが、印紙代4万円の節約分で報酬がまかなえることもあります。自分で手続きするか専門家に頼むかは、会社設立は自分でやるか専門家に頼むかで比較しています。
株式会社と合同会社のどちらを選ぶかは、費用の差よりも将来どこからお金を集めるかで決めるべきです。詳しくは株式会社と合同会社の違いをご覧ください。
会社設立の流れ|5つのステップ
株式会社を例に、会社設立の流れを整理します。合同会社は、定款認証が不要な点を除けばほぼ同じです。
| ステップ | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 1. 基本事項の決定 | 商号、本店所在地、事業目的、資本金、決算期、役員、株主構成 | 設立の1か月前〜 |
| 2. 定款の作成・認証 | 定款を作り、公証役場で認証を受ける(実質的支配者の申告も行う) | 数日〜1週間 |
| 3. 資本金の払込み | 発起人の個人口座に資本金を振り込み、払込みを証明する書類を作る | 1日 |
| 4. 登記申請 | 法務局に設立登記を申請。申請日が会社の設立日になる | 申請後、法務局の処理期間 |
| 5. 設立後の手続き | 法人口座の開設、税務署・自治体・年金事務所への届出 | 設立後すぐ〜2か月以内 |
ステップ1がいちばん大事
手続きそのものは、書類がそろえば淡々と進みます。時間をかけるべきは、ステップ1の基本事項の決定です。特に事業目的は、許認可が必要な事業や、将来やりたい事業を入れておかないと、あとで定款変更と登記のやり直しが必要になります。
設立日は「登記を申請した日」
設立日は、登記が完了した日ではなく、法務局に登記を申請した日です。「切りのいい日を設立日にしたい」場合は、その日に申請できるよう逆算します。なお、法務局が閉庁している土日祝日を設立日にすることはできません。
設立前に決めておくべき「あとから変えにくい」3つのこと
会社設立の手続きの中で、私がいちばん時間をかけてお客さまと話すのが、次の3つです。
1. 資本金|消費税と融資の両方から決める
資本金は、会社法上は1円でも構いません。ただし、次の2つの視点で決めるのがおすすめです。
- 消費税:資本金1,000万円以上で設立すると、1期目から消費税の課税事業者になります。免税のメリットを使うなら1,000万円未満にします(詳しくは法人設立前に知るべき消費税)
- 融資と信用:資本金は、銀行や取引先が最初に目にする「会社の体力」です。極端に少ないと、創業融資の審査で自己資金の少なさとして見られたり、法人口座の開設で事業の実態を詳しく確認されたりすることがあります
日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金がどれだけあるか、どう貯めてきたかが重視されます。資本金は、創業融資の自己資金と一体で考えるのが基本です(日本政策金融公庫の創業融資)。
2. 決算期|1期目の長さと繁忙期で決める
決算期は自由に決められます。設立月の前月を決算月にすれば、1期目をほぼ12か月と長く取れます。一方、消費税の免税期間を有利にするために1期目をあえて短くする設計もあります。繁忙期と決算作業が重ならないかも大事な視点です。詳しくは法人の決算期の決め方で解説しています。
3. 役員報酬|設立から3か月以内に決める
役員報酬は、原則として事業年度の開始から3か月以内に金額を決め、その後は毎月同額にする必要があります(定期同額給与)。設立後に「思ったより利益が出たから上げよう」は原則できません。設立前から、売上の見込みと個人の生活費、社会保険料のバランスを考えておきます(役員報酬の決め方)。
設立後すぐにやる届出と期限
登記が終わったら、各役所への届出が続きます。期限が短いものもあるので、設立前にスケジュールに入れておきましょう。
| 提出先 | 主な届出 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書 | 設立の日から2か月以内 |
| 税務署 | 青色申告の承認申請書 | 設立から3か月を経過した日と、1期目の終了日のいずれか早い日の前日まで |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設から1か月以内 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 任意(提出の翌月分から適用) |
| 都道府県・市区町村 | 法人設立届 | 自治体ごとに定める期限 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 事実発生から5日以内 |
特に注意したいのが青色申告の承認申請です。出し忘れると1期目が白色申告になり、赤字の繰越控除などが使えません。創業期は赤字になりやすいため、ここを逃す影響は小さくありません。届出の全体像は法人設立の税務署への届出一覧にまとめています。
また、法人は役員1人だけでも社会保険への加入が必要です。役員報酬を決めると、そこから社会保険料が決まります。
銀行目線で見た「設立のときにやっておくこと」
会社設立は、銀行から見れば「この会社の信用の記録が始まる日」です。設立の段階で意識しておくと、あとの融資が楽になることがあります。
法人口座は早めに、事業の実態がわかる資料を添えて
法人口座の開設は、以前より審査が慎重になっています。ホームページ、事業計画、オフィスの契約書、取引先との契約書など、事業の実態がわかる資料をそろえて申し込むと話が早く進みます(法人口座の開設と審査)。
個人のお金と会社のお金を最初から分ける
設立直後によくあるのが、個人のカードで会社の経費を払い、会社の口座から個人の支払いをする、という混在です。帳簿上は「役員貸付金」「役員借入金」として残り、特に役員貸付金は銀行の評価で資産から差し引いて見られやすい科目です。1期目の決算書は、次の融資の審査資料になります。最初の1か月から分けておくだけで、1期目の決算書の見え方が変わります。
1期目の決算書を「最初の通知表」と考える
私は監査法人と税務の仕事を経て、シリコンバレーへの駐在、そして自分自身の起業も経験しました。起業した当初は、目の前の売上をつくることで頭がいっぱいで、決算書がどう読まれるかまで考える余裕はありませんでした。いまお客さまに必ずお伝えしているのは、1期目の決算書が、銀行にとっての最初の通知表になるということです。
創業融資を受けた会社が次に民間の銀行から借りようとすると、まず1期目・2期目の決算書を見られます。設立時の資本金、役員報酬、経費の使い方。この一つひとつが、そのまま決算書に表れます。
まとめ
- 会社設立の法定費用は、電子定款なら株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜
- 流れは「基本事項の決定 → 定款作成・認証 → 資本金の払込み → 登記申請 → 設立後の届出」。設立日は登記を申請した日
- 資本金・決算期・役員報酬は、消費税と創業融資から逆算して設立前に決める
- 青色申告の承認申請など、設立後の届出の期限を逃さない
- 個人と会社のお金を最初から分け、1期目の決算書を「最初の通知表」として意識する
会社設立は、手続きよりも設計が大切です。クレフティでは、設立前の段階から資本金・決算期・役員報酬・創業融資までまとめてご相談いただけます。スタートアップ・起業の支援内容はスタートアップ支援をご覧ください。
