株式の集中化

株式併合・特別支配株主の売渡請求(スクイーズアウト)|中小企業で使うときの手続き・価格・税金

話し合いでも、相続時の売渡請求でも集めきれない株式が残ることがあります。M&Aで買い手から100%の取得を求められたときや、どうしても連絡のつかない株主、合意に応じない株主がいるときに検討するのが、スクイーズアウト(少数株主を金銭を対価に退出させる手続き)です。

会社法には、そのための方法として株式併合と特別支配株主の株式売渡請求が用意されています。上場企業の非公開化で使われることが多い手続きですが、中小企業でも使えます。この記事では、2つの方法の違い、手続きと期限、少数株主の救済手段、最高裁判例に見る価格の考え方、税金、そして銀行への影響を整理します。

この記事の結論
  • 議決権90%以上なら特別支配株主の売渡請求(株主総会不要)、90%未満なら株式併合(特別決議)
  • どちらも、少数株主に通知・情報開示をし、価格決定の申立ての機会を保障する。差止めや無効の訴えのリスクもある
  • 価格は「公正な価格」。公正な手続きで決めた価格は尊重される(最高裁平成28年7月1日決定)が、非上場では独立した株価算定が前提になる
  • 売り手の税金は、売渡請求も、端数代金・買取請求の代金も譲渡所得が原則
  • 会社が端数や買取請求の代金を払えば純資産が減る。財源と銀行の見え方を事前に確認する

2つの方法の比較

項目株式併合特別支配株主の株式売渡請求
使える条件株主総会の特別決議が成立すること一人の株主(その完全子法人などを含む)が総株主の議決権の90%以上(定款で引上げ可)を持つこと
決定機関株主総会(180条2項、309条2項4号)対象会社の承認。取締役会設置会社は取締役会決議(179条の3)
少数株主の株式の行方1株未満の端数になり、会社が競売・売却して代金を交付(235条)特別支配株主が取得日に全部取得(179条の9)
代金を払う人会社(または端数株式の買受人)特別支配株主
少数株主への通知効力発生日の20日前まで(182条の4第3項)取得日の20日前まで(179条の4)
少数株主の救済反対株主の買取請求と価格決定の申立て(182条の4・182条の5)、差止め(182条の3)、決議取消しの訴え売買価格の決定の申立て(179条の8)、差止め(179条の7)、取得の無効の訴え(846条の2)

なお、全部取得条項付種類株式を使う方法(171条)もありますが、現在は上の2つが使われるのが一般的です。

90%というラインは、株式の保有比率ごとの権利でも触れたとおり、集中化の大きな目標になります。

株式併合の手続き

株式併合は、たとえば「1,000株を1株にする」というように、複数の株式をまとめて1株にする手続きです。大株主以外の株主の持株が1株に満たない端数になるよう併合割合を決めれば、少数株主は株主でなくなり、端数に応じた代金を受け取ります。

  1. 事前開示:株主総会の2週間前の日などから、併合割合、効力発生日、端数処理の見込みなどを記載した書面を本店に備え置く(182条の2)
  2. 株主総会の特別決議:併合の割合、効力発生日、効力発生日の発行可能株式総数を定める(180条2項)。取締役は、併合が必要な理由を説明しなければならない(同条4項)
  3. 株主への通知・公告:効力発生日の20日前までに通知する(181条、182条の4第3項)
  4. 反対株主の買取請求:反対株主は、効力発生日の20日前から前日までに、端数となる株式の全部を公正な価格で買い取るよう請求できる(182条の4)
  5. 効力発生と端数処理:端数の合計数を競売し、または裁判所の許可を得て競売以外の方法で売却し、代金を株主に交付する。会社がその株式を買い取ることもできる(235条、234条)

非公開会社では、併合後の発行可能株式総数を発行済株式総数の4倍以内とする制限はありません(180条3項ただし書)。

反対株主の買取請求と価格の決定

買取請求があった場合、価格は株主と会社の協議で決めます。効力発生日から30日以内に協議が調わなければ、株主または会社は、その後30日以内に裁判所へ価格の決定を申し立てられます(182条の5第2項)。会社は、裁判所が決めた価格に、法定利率による利息も支払わなければなりません(同条4項)。それまでの間、会社が公正と考える額を先に支払うこともできます(同条5項)。

会社が買取請求に応じて支払った額が分配可能額を超えると、職務を行った取締役などは、超過額を会社に支払う義務を負います(464条)。

特別支配株主の株式売渡請求の手続き

90%以上を持つ特別支配株主は、ほかの株主全員に対して、株式の全部を自分に売り渡すよう請求できます(179条1項)。株主総会が不要なため、手続きが比較的早く進みます。

  1. 請求内容の決定:対価の額(または算定方法)、その割当て、取得日などを定める(179条の2)
  2. 対象会社の承認:特別支配株主が対象会社に通知し、承認を受ける。取締役会設置会社は取締役会決議(179条の3)
  3. 売渡株主への通知:対象会社が、取得日の20日前までに売渡株主に通知する。通知をすると、売渡請求がされたものとみなされる(179条の4)
  4. 事前開示:対象会社が、請求内容などを記載した書面を本店に備え置く。非公開会社では取得日後1年まで(179条の5)
  5. 取得日:特別支配株主が売渡株式の全部を取得する。譲渡制限株式でも、譲渡承認があったものとみなされる(179条の9)
  6. 事後開示:対象会社が取得に関する書面を作成し、非公開会社では取得日から1年間備え置く(179条の10)

売渡株主は、取得日の20日前の日から取得日の前日までに、裁判所へ売買価格の決定を申し立てられます(179条の8)。また、対価が対象会社の財産の状況などに照らして著しく不当な場合などで、不利益を受けるおそれがあるときは、取得の差止めを請求できます(179条の7)。取得の無効は、非公開会社では取得日から1年以内に、訴えによってのみ主張できます(846条の2)。

対象会社の取締役会は、承認するかどうかを判断する立場にあります。特別支配株主がオーナー本人で、取締役も身内という中小企業では、対価の相当性を判断した根拠(株価算定書など)を残しておくことが、のちの紛争に備えるうえで重要です。

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価格はどう判断されるか:最高裁判例

スクイーズアウトの価格は、少数株主にとって「公正な価格」である必要があります。最高裁は、上場会社の二段階買収の事案で、次のように判断しています。

最高裁平成28年7月1日第一小法廷決定(平成28年(許)第4号、民集70巻6号1445頁)

株式の相当数を持つ株主が公開買付けを行い、その後に全部取得条項付種類株式を使って残りの株式を取得した事案です。最高裁は、独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど、利益相反による恣意的な意思決定を排除する措置がとられ、公開買付けに応じなかった株主の株式も同じ価格で取得することが明示されているなど、一般に公正と認められる手続で公開買付けが行われ、その後に同じ価格で取得した場合には、特段の事情がない限り、取得価格は公開買付けの価格と同額とするのが相当だとしました。(裁判所ウェブサイト)

この判断は、上場会社の公開買付けを前提にしています。中小企業のスクイーズアウトには公開買付けがないため、そのまま当てはめることはできません。ただし、「価格を決めるプロセスが公正であれば、裁判所もその価格を尊重しやすい」という考え方は参考になります。中小企業で実務的に意識したいのは次の点です。

  • オーナー側と利害関係のない専門家による株価算定書を取得する
  • 算定方法(DCF法、純資産法、類似会社比較など)と前提条件を、少数株主に説明できるようにする
  • 可能であれば、スクイーズアウトの前に、同じ価格で任意の買取りを提案しておく

非上場株式の価格決定で、非流動性ディスカウントが認められるかどうかは、手続きによって判断が分かれています。反対株主の買取請求について減価を否定した最高裁平成27年3月26日決定と、譲渡制限株式の売買価格決定について減価を認めた最高裁令和5年5月24日決定は、株式の買取価格が裁判で争われた事例で詳しく紹介します。

税金:売り手と会社

売り手(個人株主)

場面個人株主の課税
特別支配株主の売渡請求に応じた特別支配株主への譲渡として、譲渡所得(20.315%の分離課税)
株式併合の端数代金を受け取った譲渡所得。端数の買取りは、みなし配当の対象から除かれている(所得税法施行令61条1項9号)
株式併合の反対株主として、会社に買い取ってもらった同上(会社法182条の4の買取りは、みなし配当の対象外)

会社が株主から自己株式を買うと、通常はみなし配当が生じます(会社による自己株式の取得)。しかし、株式併合の端数処理や反対株主の買取請求による買取りは、政令でみなし配当の対象から除かれています。このため、スクイーズアウトで手放した個人株主の課税は、原則として譲渡所得になります。

会社(対象会社)

平成29年度の税制改正で、株式併合や株式売渡請求などにより、最大株主などとの間に完全支配関係が生じる取引は、法人税法上「株式交換等」として組織再編税制の対象に含められました(法人税法2条12号の16)。適格要件を満たさない非適格の株式交換等に当たると、対象会社が持つ一定の資産について時価評価が問題になることがあります。最大株主とのあいだにもともと支配関係がある場合などは、従業者の引継ぎや事業の継続などの要件を満たせば適格となる道もあります。

中小企業では、対象会社が不動産などの含み益を抱えていることも多いため、手続きを始める前に、税理士と適格・非適格の判定を確認しておきましょう。

銀行・従業員・取引先への影響

株式併合では、端数の買取りや反対株主の買取請求の代金を、会社が支払うことがあります。会社の現預金と純資産が減り、自己資本比率が下がります。代表の相亰の著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算し、10年以内を健全の目安としています。支払い後の数字を、融資を受けている銀行への説明とあわせて試算しておきます。

売渡請求では、代金を払うのは特別支配株主です。オーナー個人が払うなら個人の資金、持株会社が払うなら持株会社の資金や借入が必要です。持株会社が借入で払う場合は、事業会社からの配当で返済する計画を立て、グループ全体で銀行に説明します。持株会社の使い方は持株会社をつくって株主構成を整理するで解説します。

スクイーズアウトは少数株主にとって強制的な手続きなので、元役員や親族が対象になると、社内や取引先に話が伝わることがあります。M&Aの準備として行う場合は、M&Aの情報管理とあわせて、説明の順番を決めておきましょう。

まとめ

  • 90%以上なら特別支配株主の売渡請求(株主総会不要)、90%未満なら株式併合(特別決議)
  • どちらも通知・開示・価格決定の申立てなど、少数株主の手続保障が組み込まれている。差止めや無効の訴えにも備える
  • 価格は「公正な価格」。公正なプロセスで決めた価格は尊重されやすいが、中小企業では独立した株価算定と説明が欠かせない
  • 売り手の課税は、売渡請求も端数代金・買取請求の代金も譲渡所得が原則。会社側は「株式交換等」として適格・非適格の判定が必要
  • 会社や特別支配株主の資金と財源、銀行の見え方を事前に確認する

スクイーズアウトは、話し合いによる買取りを尽くしたうえでの最終手段です。方法の全体像は分散した株式を集中させる方法の全体像で整理しています。クレフティの事業承継・M&A支援では、株価の算定、税務上の判定、資金計画と銀行への説明までご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。

よくある質問

株式併合と特別支配株主の売渡請求は、どう使い分けますか?
一人の株主(その完全子会社などを含む)が議決権の90%以上を持っていれば、株主総会を開かずに、対象会社の取締役会(取締役会設置会社の場合)の承認で進められる特別支配株主の株式売渡請求が使えます。90%に届かない場合は、株主総会の特別決議(出席株主の議決権の3分の2以上)で行う株式併合を使います。株式併合は会社が端数を処理し、売渡請求は特別支配株主が自ら代金を支払う点も違います。
スクイーズアウトされる少数株主は、何ができますか?
株式併合では、反対株主として会社に株式買取請求をし、価格がまとまらなければ裁判所に価格の決定を申し立てられます。法令・定款違反で不利益を受けるおそれがあれば差止めも請求できます。売渡請求では、取得日の20日前から前日までに裁判所へ売買価格の決定を申し立てられ、対価が著しく不当な場合などには取得の差止めを請求できます。取得の無効の訴えもあり、非公開会社では取得日から1年以内です。
スクイーズアウトで株式を手放した個人株主の税金はどうなりますか?
特別支配株主の売渡請求に応じた場合は、特別支配株主への株式の譲渡として譲渡所得(20.315%の分離課税)になります。株式併合で生じた端数の代金や、反対株主の買取請求に基づく会社からの支払いは、所得税法施行令によりみなし配当の対象から除かれており、譲渡所得として扱われます。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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