制度と最新動向

事業承継税制に政府税調で厳しい意見、「過度な優遇」「資産管理会社の要件が緩い」|2027年末の期限後はどうなる?不動産賃貸業のオーナーが今考えること

税のしるべ(2026年10月19日号)が、政府税制調査会の専門家会合で事業承継税制、特にその特例措置が議論され、委員から「過度な優遇」といった厳しい意見が相次いだと報じました。法人版事業承継税制の特例は2027年末で期限を迎え、その後のあり方は今年末の与党税制調査会で議論される予定です。

非上場株式の評価方法の見直し(自民党から異論、「凍結」論も)とあわせ、オーナー経営者の事業承継の税負担を大きく左右する議論です。この記事では、報道で示された内容を引用しながら、論点と、特に不動産賃貸業の会社のオーナーが今考えておくことを整理します。

この記事の結論
  • 政府税調の専門家会合で、事業承継税制の特例措置に「課税の公平の観点から行き過ぎ」「富裕層の資産承継のための税制であってはならない」などの厳しい意見が出た(税のしるべ)
  • 財務省は、不動産賃貸業では従業員が少ないのに猶予税額が大きく、他の業種と比べて差が際立っていると指摘。資産管理会社の要件が緩いとの意見も複数あった
  • 一方、中小企業庁は、適用した会社のほうが売上成長率や労働生産性の向上率が高い傾向にあるとのデータを示した
  • 特例は2027年12月31日の贈与・相続まで。期限後のあり方は今年末の与党税制調査会で議論される。不動産賃貸業の会社で特例を検討しているオーナーは、見直しの可能性を前提に計画を立てたい

報道で示された内容

項目報道で示された内容
会合政府税制調査会が10月9日に、税制のEBPM(証拠に基づく政策立案)に関する専門家会合を開催。令和9年度税制改正の焦点の一つとして事業承継税制の特例措置を議論
財務省の説明平成30年の特例の創設以降、適用件数が増加。特例を適用すると納付税額はおおむね5割前後に減少し、仮に一般措置を適用しても納付税額の上昇幅は1割程度にとどまる。業種別では、不動産賃貸業で従業員数が少ないにもかかわらず猶予税額が大きく、他の業種と比べて差が際立っている
中小企業庁の説明事業承継税制の適用者の方が、非適用者よりも売上成長率や労働生産性の平均向上率が高い傾向
委員の意見非上場株式の相続に幅広く100%の納税猶予を与える特例は課税の公平の観点から行き過ぎ。事業承継の優遇で新規に起業する人が不利にならないか。富裕層が相続税・贈与税の負担を回避するための資産承継税制であってはならない
資産管理会社親族以外の常時使用従業員が5人以上など一定の要件を満たす資産管理会社は適用できる点について、要件が緩いとの意見が複数
今後法人版の特例は2027年末で期限切れ。令和8年度与党税制改正大綱は「9年度税制改正において結論を得る」とし、今年末の与党税制調査会で制度設計が行われる予定

出典:税のしるべ「政府税調のEBPM専門家会合で事業承継税制を議論、過度な優遇などと厳しい意見も」(2026年10月19日号1面)。

事業承継税制の特例のおさらい

法人版事業承継税制の特例措置は、後継者が非上場株式を贈与や相続で取得した場合に、一定の要件のもとで贈与税・相続税の納税を猶予し、最終的に免除する制度です。

項目特例措置一般措置
対象株式発行済株式等の全部発行済株式等の3分の2まで
相続税の猶予割合100%80%
計画の提出特例承継計画の提出が必要(2027年9月30日まで)不要
適用期限2027年12月31日までの贈与・相続期限なし

報道で財務省が示した「仮に一般措置を適用しても納付税額の上昇幅は1割程度」という分析は、特例がなくなっても一般措置で一定の効果は残る、という見方につながるものです。要件の詳細は事業承継税制の要件、期限については事業承継税制の特例の期限と今やるべきことで解説しています。

不動産賃貸業の会社が注目される理由

ここからは、公認会計士・税理士として、また自らも不動産事業を営む立場からの考えです。

不動産賃貸業の会社は、建物や土地などの資産が大きい一方、従業員は少ないことが多い業種です。事業承継税制では、資産のほとんどが不動産や有価証券などの会社(資産管理会社)は原則として対象外ですが、親族以外の常時使用従業員が5人以上いることなど一定の要件を満たせば、適用できます。

財務省の分析と委員の意見は、まさにこの点に向けられています。

論点指摘されたこと考えられる見直しの方向(推測)
不動産賃貸業の猶予税額従業員が少ないのに猶予税額が大きい業種や資産の内容に応じた制限
資産管理会社の要件常時使用従業員5人以上などの要件が緩い従業員数や事業実態の要件の厳格化
100%の納税猶予課税の公平の観点から行き過ぎ猶予割合の縮小、一般措置への一本化

なお、見直しの方向は報道からの推測で、具体的な制度設計はこれから議論されます。

オーナー経営者が今考えておくこと

  1. 特例を使うかどうかを早めに判断する:特例承継計画の提出期限は2027年9月30日です。使う可能性があるなら、期限に間に合うよう準備を進めます
  2. 要件を継続して満たせるかを確認する:事業承継税制は「猶予」の制度です。後継者が代表を続けること、株式を持ち続けることなどの要件を外れると、猶予された税額と利子税を納める必要があります
  3. 不動産賃貸業の会社は、見直しの可能性を前提にする:資産管理会社の例外要件で特例を使う計画は、要件の厳格化があれば使えなくなる可能性があります。特例に頼らない承継の方法(生前の計画的な贈与、持株会社の活用、株価の把握と対策など)も並行して検討しておきます(オーナー家の資産管理会社と事業会社の関係)
  4. 株式の評価方法の見直しとあわせて考える:評価額が上がる会社は、事業承継税制が使えるかどうかで税負担が大きく変わります。両方の議論の行方を合わせて見ていく必要があります
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今後も注意して見ていきたいこと

  • 今年末の与党税制改正大綱:特例の延長・見直し・終了のどれになるか。猶予割合や対象、資産管理会社の要件がどう変わるか
  • 非上場株式の評価方法の見直し:事業承継税制と一体で「白紙」から検討される可能性も報じられています
  • 経過措置:見直しが行われる場合、すでに特例承継計画を出している会社や、適用中の会社の扱いがどうなるか

事業承継税制は、使えれば税負担を大きく減らせる一方、長期にわたって要件を守り続ける必要がある制度です。期限が近いからと急いで使うのではなく、会社の将来の計画(誰が継ぐか、株式をどう持つか、将来売る可能性はあるか)と合わせて判断することが大切です。

まとめ

  • 政府税調の専門家会合で、事業承継税制の特例措置に「過度な優遇」「課税の公平の観点から行き過ぎ」といった厳しい意見が出た
  • 財務省は、不動産賃貸業で従業員が少ないのに猶予税額が大きいことを指摘し、資産管理会社の要件が緩いとの意見も複数あった
  • 特例は2027年12月31日までの贈与・相続が対象。期限後のあり方は今年末の与党税制調査会で議論される
  • 不動産賃貸業の会社で特例を検討しているオーナーは、要件の厳格化の可能性を前提に、特例に頼らない方法も並行して検討しておきたい

事業承継税制を使うべきか、使う場合の計画をどう立てるかを一度確認したい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

事業承継税制の特例は、2027年末で終わるのですか?
法人版事業承継税制の特例措置は、2027年12月31日までの贈与・相続が適用期限です(特例承継計画の提出期限は2027年9月30日)。期限後のあり方は、令和8年度の与党税制改正大綱で「令和9年度税制改正において結論を得る」とされ、今年末の与党税制調査会で議論される予定です。延長されるか、見直されるか、終わるかはまだ決まっていません。
不動産賃貸業の会社でも事業承継税制は使えますか?
資産管理会社(資産保有型会社・資産運用型会社)に当たる会社は原則として対象外ですが、親族以外の常時使用従業員が5人以上いることなど一定の要件を満たせば適用できます。ただし、報道によれば政府税調の会合でこの要件が緩いという意見が複数出ており、財務省も不動産賃貸業の猶予税額が他の業種と比べて大きいことを指摘しています。今後の見直しの対象になる可能性がある点に注意が必要です。
期限が近いので、とりあえず特例承継計画を出しておくべきですか?
特例承継計画は、提出しておかないと特例を使う選択肢がなくなるため、使う可能性がある場合は期限(2027年9月30日)までの提出を検討する価値があります。一方で、事業承継税制は納税を猶予する制度で、後継者が代表を続けることや株式を保有し続けることなどの要件があり、要件を外れると猶予税額と利子税を納める必要があります。会社の将来の計画と合わせて判断してください。

※本記事は2026年10月23日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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