親族内承継

オーナー家の資産管理会社と事業会社の関係|株式・不動産の持ち方、配当の税金、株価評価と銀行の見方

オーナー家には、事業を行う事業会社のほかに、株式や不動産を持つ資産管理会社があることがよくあります。資産管理会社が事業会社の株主になっている、社屋の土地建物を資産管理会社が持って事業会社に貸している、といった形です。

この関係は、作ったときの目的(株価対策、不動産の管理、所得の分散など)とは別に、事業承継のときに大きな影響を与えます。この記事では、オーナー家の資産管理会社と事業会社の関係を、会社法・税務・株価評価・銀行の4つの面から整理し、関連する判例と公的資料を紹介します。

この記事の結論
  • 資産管理会社と事業会社の関係は、「株式を持つ(持株会社)」「不動産を持って貸す」「その両方」の3つの型に分けて考える
  • 持株会社型では、事業会社からの配当は受取配当等の益金不算入の対象。ただし保有割合で不算入割合が変わる
  • 資産管理会社の株価は、総資産に占める株式等が50%以上なら株式等保有特定会社として原則純資産価額方式。この基準は東京高裁判決を受けて25%から改正された
  • グループ内の賃料・借入・組織再編は、経済的合理性を欠けば同族会社の行為計算否認の対象になりうる。最高裁令和4年4月21日判決は判断基準を示した
  • 銀行はグループを一体で見る。資産管理会社への資金の吸い上げは、事業会社の格付けを下げる

資産管理会社と事業会社の3つの型

型典型的な形主な目的承継のときの論点
持株会社型オーナー家が資産管理会社の株式を持ち、資産管理会社が事業会社の株式を持つ株主の集約、株価の上昇を資産管理会社の中に留める資産管理会社の株価、事業承継税制の適用可否
不動産保有型資産管理会社が社屋・工場の土地建物を持ち、事業会社に貸す不動産の管理、賃料による所得の分散賃料の水準、事業会社と不動産の所有者が別になること
複合型資産管理会社が株式と不動産の両方を持つ上記の両方評価、賃料、グループの借入と保証が複雑になる

どの型でも、オーナー家から見た「財産」は資産管理会社の株式に置き換わります。誰が資産管理会社の株式を持つのかが、そのまま事業会社を誰が支配するのかにつながります。

会社法から見た支配の仕組み

持株会社型では、事業会社の株主総会で議決権を行使するのは、資産管理会社の代表者です。資産管理会社の取締役を選ぶのは、資産管理会社の株主(オーナー家)です。つまり、資産管理会社の株式の過半数を持つ人が、グループ全体の意思決定者になります。

後継者に事業会社の代表権を渡しても、資産管理会社の株式を先代や別の親族が持っていれば、最終的な決定権は後継者にありません。所有と経営を分ける承継の考え方は所有と経営を分ける承継で解説しています。

配当・賃料の税金

事業会社から資産管理会社への配当

法人が受け取る配当には、二重課税を調整するため受取配当等の益金不算入の制度があります。国税庁の法人税基本通達・申告書記載要領で確認できる区分は次のとおりです。

区分保有割合益金不算入割合
完全子法人株式等100%(完全支配関係)100%
関連法人株式等3分の1超100%(関連する負債利子を控除)
その他の株式等5%超3分の1以下50%
非支配目的株式等5%以下20%

事業会社の株式を100%持つ持株会社なら、配当は原則として全額が益金に算入されません。事業会社で稼いだ利益を、税負担を抑えて資産管理会社に集め、次の投資に回せるのが持株会社型の特徴です。ただし、資産管理会社から個人に配当すれば、そこで個人に配当課税がかかります。資産管理会社からの受け取り方は資産管理法人からの受取り方で比較しています。

事業会社から資産管理会社への賃料

不動産保有型では、事業会社が資産管理会社に賃料を払います。賃料は事業会社の損金、資産管理会社の益金になります。問題は水準です。相場より高い賃料で事業会社の利益を資産管理会社に移せば、グループ内の取引でも、法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)の対象になりえます。適正な賃料の考え方は同族会社との賃料の適正水準、関連当事者取引の注意点は関連当事者との取引をご覧ください。

株価評価:資産管理会社の株はいくらか

資産管理会社の株式は非上場株式なので、相続・贈与では財産評価基本通達で評価します。ここで注意したいのが、特定の評価会社の判定です。

株式等保有特定会社の判定と東京高裁判決

総資産(相続税評価額ベース)に占める株式等の割合が高い会社は、株式等保有特定会社として、原則として純資産価額方式で評価されます(評価通達189・189-3)。現在の判定基準は、会社規模にかかわらず50%以上です。

この基準には経緯があります。かつて大会社の基準は「25%以上」でしたが、国税庁の資料によれば、東京高裁平成25年2月28日判決が、平成9年の独占禁止法改正などで会社の株式保有の状況が大きく変わったことから、25%という数値はもはや資産構成が著しく株式等に偏っているとまではいえないと判断しました。これを受けて国税庁は、上場会社の株式保有割合を確認したうえで、大会社の基準を50%以上に改正しています(平成25年5月27日以後の相続等から適用)。

また通達は、課税時期前に合理的な理由もなく資産構成を変え、株式等保有特定会社の判定を免れたと認められる場合は、その変動がなかったものとして判定するとしています。相続の直前に株式の割合を下げるための資産の入れ替えは、効果が否定されるおそれがあります。

持株会社型の資産管理会社は、資産の大部分が事業会社株式になりやすく、株式等保有特定会社に当たる可能性が高いことを前提に設計してください。土地の割合が高い場合の土地保有特定会社を含め、判定の詳細は土地保有特定会社・株式等保有特定会社の株価評価で解説しています。

事業承継税制は使えるか

法人版事業承継税制には、資産管理会社(資産保有型会社・資産運用型会社)に当たる会社は原則として対象外、という要件があります。国税庁の手引きによれば、資産保有型会社は特定資産の保有割合が総資産の帳簿価額の70%以上の会社などをいい、一定の事業実態(3年以上の事業継続、後継者と生計を一にする親族以外の常時使用従業員5人以上など)があれば、資産管理会社に当たらないとされています。

持株会社を後継者に承継させる場合、事業会社株式は特定資産に当たるため、要件を満たすかどうかの確認が欠かせません。制度の概要は事業承継税制の解説をご覧ください。

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グループ内取引と行為計算否認:最高裁の判断基準

資産管理会社と事業会社の間では、賃料のほか、資金の貸し借り、株式の売買、合併などの組織再編が行われます。これらが法人税の負担を不当に減らすと認められれば、法人税法132条1項によって否認されることがあります。その判断基準を示した最高裁判決があります。

裁判所・日付事案判断
最高裁第一小法廷 令和4年4月21日判決(令和2年(行ヒ)第303号)外資系の企業グループが、日本の関連会社を1社の傘下にまとめる組織再編の中で、グループ会社から約866億円を借り入れて関連会社株式を買収し、その支払利息を損金に算入した。税務署長は132条1項で否認した132条1項の「不当」かどうかは、行為・計算が経済的かつ実質的な見地から不自然・不合理か(経済的合理性を欠くか)で判断する。グループ内の組織再編に伴う借入れについては、再編の目的や借入れの条件などを踏まえて検討する。本件では経済的合理性を欠くとはいえないとして、国の上告を棄却した

出典:裁判所 最高裁令和4年4月21日判決(判決全文PDF)

この事件は大規模な国際グループの事案ですが、示された考え方は中小企業のグループにもあてはまります。ポイントは、取引に税金以外の目的と、それに見合った条件があるかです。資産管理会社を使った取引では、次の資料を残しておくことをおすすめします。

  • 取引の目的(不動産の管理の一元化、株主の集約など)を書いた社内資料や議事録
  • 賃料・金利・株価などの条件を決めた根拠(相場、評価書、金融機関の金利など)
  • 条件を見直したときの理由

銀行はグループをどう見ているか

金融機関は、資産管理会社と事業会社をひとつのグループとして見ます。特に次の点は、融資の審査で確認されます。

確認されること銀行の見方
事業会社から資産管理会社への配当・賃料事業会社の返済原資が外に流れていないか
資産管理会社の借入と、事業会社による保証・担保提供グループ全体の借入はいくらか。事業会社が他社の借入を背負っていないか
グループ内の貸付金・借入金回収できない貸付金が資産に計上されていないか
オーナー家と会社の間の貸し借り法人と個人の資産が分離されているか

事業会社から資産管理会社に利益を移しすぎると、事業会社の純資産が積み上がらず、事業会社単体の格付けが上がりません。著書のモデルでは、プロパー融資の目安を「正常先+純資産1億円」としています。資金をどこに置くかは、税金だけでなく、どの会社で融資を受けるかから逆算して決めるのが現実的です。グループの見え方はグループ全体で見た銀行の評価、資産管理会社そのものの長所・短所は資産管理法人のメリット・デメリットで解説しています。

承継の前に整理しておくこと

資産管理会社がある場合、事業承継の準備は次の順番で進めると整理しやすくなります。

  1. グループの資本関係図を作る:誰がどの会社の株式を何%持っているか。名義株はないか
  2. 両方の会社の株価を試算する:資産管理会社の判定(株式等保有特定会社・土地保有特定会社)を含めて
  3. グループ内取引の条件を点検する:賃料・金利・管理料が説明できる水準か
  4. 誰に資産管理会社の株式を渡すかを決める:後継者に集めるのか、ほかの家族にも持たせるのか。持たせるなら議決権の扱い
  5. 銀行への説明を準備する:グループの借入と保証、資金の流れを一覧にする

持株会社をつくって株主構成を整理する方法は持株会社をつくって株主構成を整理する、株式交換・株式移転の税務は株式交換・株式移転で持株会社をつくる税務をご覧ください。

まとめ

  • 資産管理会社と事業会社の関係は、持株会社型・不動産保有型・複合型に分けて考える
  • 持株会社型の配当は受取配当等の益金不算入の対象。ただし個人に配当すれば配当課税がかかる
  • 資産管理会社は、株式等が総資産の50%以上なら株式等保有特定会社。この基準は東京高裁平成25年2月28日判決を受けて改正された
  • グループ内取引は、経済的合理性を欠けば行為計算否認の対象。目的と条件の根拠を記録に残す
  • 銀行はグループを一体で見る。資金の置き場所は、どの会社で融資を受けるかから逆算する

クレフティは、事務所としてオーナー企業のホールディングス化や資産管理会社の整理を支援してきました。資本関係の整理、両社の株価試算、グループ内取引の点検、銀行への説明資料づくりまで、事業承継・M&A支援としてお手伝いしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、公認会計士・税理士が具体的な進め方をご案内します。

よくある質問

資産管理会社が事業会社の株式を持つと、株価は下がりますか?
必ず下がるわけではありません。資産管理会社の株価は、持っている事業会社株式の評価額に左右されます。総資産に占める株式等の割合が50%以上になると株式等保有特定会社に当たり、原則として純資産価額方式で評価されるため、かえって高くなることもあります。設立前に、資産管理会社と事業会社の両方の株価を試算することが大切です。
事業会社から資産管理会社に配当すると、税金はかかりますか?
法人が受け取る配当には受取配当等の益金不算入の制度があり、事業会社の株式を100%持つ完全子法人株式等なら全額、3分の1超を持つ関連法人株式等なら負債利子を控除したうえで全額が益金に算入されません。保有割合が低いと不算入割合は50%や20%に下がります。ただし、資産管理会社からさらに個人に配当すれば、個人には配当課税がかかります。
事業会社が資産管理会社に払う家賃は、いくらにすればよいですか?
近隣の相場など、第三者間でも成り立つ水準にするのが原則です。グループ内の取引でも、経済的な合理性を欠き法人税の負担を不当に減らすと認められる場合は、同族会社の行為計算否認の対象になりえます。賃料の根拠となる資料を残し、金額を見直したときは理由を記録しておきましょう。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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