相続・贈与

夫の給与を妻名義の口座に貯めて、連帯債務のローンを繰り上げ返済したら贈与税?

ご相談の内容

共働きの夫婦で、住宅ローンは連帯債務(負担割合は50%ずつ)です。夫の口座からローンを全額返済し、生活費は妻の口座から払っています。夫の口座から生活費分として妻名義の別の貯金口座に毎年入金して、繰り上げ返済用に貯めてきました。贈与のつもりはありませんでしたが、夫婦間でも贈与税がかかると知り、この口座から繰り上げ返済をすると贈与税がかかるのか、今後どうすればよいか、というご相談です。

結論
  • 贈与の合意がなければ、妻名義口座の資金は夫の財産(名義預金)で、これまでの入金自体には贈与税はかからない
  • ただし、その資金で繰り上げ返済すると、妻の負担部分は夫から妻への贈与とみなされる
  • 毎年の返済で夫が妻の負担部分を払っている分と合算して110万円を超えると贈与税がかかる

回答

入金だけなら夫の預金のまま

贈与は双方の合意で成立するため(民法549条)、贈与の認識がない入金は夫の預金のままと扱われます。名義は妻でも実質は夫のお金である、いわゆる名義預金です。

なお、夫婦間の生活費の非課税(相続税法21条の3第1項2号)は、実際に生活費に充てた分に限られます。預金に回した分は対象外です(相続税法基本通達21の3-5)。

連帯債務の「負担部分」を超えて返すと贈与

連帯債務者が自分の負担部分を超えて返済し、相手に求償(立替分の請求)しない場合は、贈与とみなされます(相続税法8条、同基本通達8-3)。

例として、次の数字で考えてみます(ほかに贈与がない場合)。

項目金額妻への贈与とみなされる額
繰り上げ返済(夫の資金で300万円、負担割合50%)300万円150万円
毎年の返済(夫が全額160万円を返済)160万円80万円
同じ年の合計230万円

毎年の返済のうち妻の負担分(80万円)だけなら、基礎控除110万円以内です。しかし、繰り上げ返済の150万円と同じ年に合算すると230万円となり、(230万円-110万円)×10%=12万円の贈与税が見込まれます。

また、妻名義口座への入金を毎年の妻への贈与と扱う場合は、各年の入金額(例えば100万円)と返済の妻負担分(80万円)を合わせると110万円を超え、過去の年分に贈与税が生じる可能性があります。

今後の対策

  • 繰り上げ返済の妻負担分は、妻自身の預金から支出する
  • 夫が立て替える場合は、妻が返済する約束を書面にし、実際に返済する
  • 今後は生活費を本来どおり妻の生活費口座へ移して実際に生活費に使い、その分浮いた妻の給与で妻負担分のローンを返済する

いずれも、資金の出どころと負担割合を一致させるのが基本です。

注意したいポイント

  • 生活費の非課税は「使った分」だけ:生活費として渡したお金でも、貯金に回した分は非課税になりません。
  • 相殺は当然には認められない:妻が生活費を多く負担している分を、夫のローン立替と相殺できるかは事実関係次第です。税務上当然に認められるものではありません。
  • 口座の動きは記録が残る:資金の流れは通帳で確認されるため、目的と負担割合がわかる形で管理しましょう。

連帯債務と持分の関係は夫婦の共有名義と借入、口座の動きの説明は通帳の動きと税務調査で詳しく解説しています。

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まとめ

  • 贈与の合意がない妻名義口座への入金は夫の名義預金で、入金自体には贈与税はかからない
  • その資金で連帯債務のローンを返すと妻の負担部分が贈与とみなされ、毎年の返済分と合算して110万円を超えると課税される
  • 妻負担分は妻の資金から払う、立替なら書面と返済実績を残すなど、資金の出どころと負担割合を一致させる

この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。

よくある質問

夫の給与口座から妻名義の口座へお金を移しているだけで、贈与税はかかりますか?
夫婦間で贈与の合意がなければ、妻名義の口座の資金は夫の財産(名義預金)と考えられ、入金自体には贈与税はかからないと考えます。夫婦間の生活費の非課税は実際に生活費に充てた分に限られ、預金に回した分は対象外です。
連帯債務の住宅ローンを、夫の資金で繰り上げ返済するとどうなりますか?
返済額のうち妻の負担部分は、夫から妻への贈与とみなされます(相続税法8条)。毎年の返済で夫が妻の負担部分も払っている場合はその分も贈与に当たり得るため、同じ年に合算して110万円を超えると贈与税がかかります。

※本記事は2026年10月15日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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