ご相談の内容
不動産賃貸業の会社を経営しており、数年後に不動産の評価について大きな改正があると聞きました。改正後に相続などで自社株を評価するとき、何年も前に買った賃貸物件まで帳簿価額で計算されてしまうのでしょうか、というご相談です。
- 見直し案の対象は、課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産。それより前に取得した物件は従来どおりの評価の見込み
- 「帳簿価額」という話は、自社株評価の現行の3年以内ルールとの混同が考えられる
- 改正は法律ではなく財産評価基本通達の改正で行われ、細部は公表を待って確認が必要
回答
「昔買った物件まで帳簿価額」という改正ではない
「3年以上前に取得した貸付用不動産が帳簿価額で評価される」という改正ではありません。公表されている見直し案(令和8年度税制改正大綱)では、対象は課税時期(相続開始時など)前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産とされています。それより前に取得したものは、従来どおり路線価や固定資産税評価額を基に評価する見込みです。
現行の「3年以内ルール」との違い
「帳簿価額」というお話は、現行のルールと混同されている可能性があります。
現行でも、自社株を純資産価額方式(会社の資産から負債を差し引いて株価を出す方法)で評価する場合、会社が課税時期前3年以内に取得・新築した土地・建物は、「通常の取引価額」(時価)で評価します。このとき、帳簿価額が時価に相当すると認められれば、帳簿価額によることもできます(財産評価基本通達185)。
| 現行ルール | 見直し案 | |
|---|---|---|
| 対象 | 会社が課税時期前3年以内に取得・新築した土地・建物(純資産価額の計算) | 課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産 |
| 評価 | 通常の取引価額(帳簿価額が時価相当なら帳簿価額も可) | 通常の取引価額。取得価額を基に地価変動等を調整した額の80%での評価も認める |
| 個人が直接保有する場合 | 対象外 | 対象とする |
会社が保有する場合の純資産価額の計算についても、現行の3年以内ルールとの関係を含めて見直される方向とされています。
適用時期
適用時期は、2027年1月1日以後の相続・贈与等と認識しており、耳にされた時期とは異なる可能性があります。また、この見直しは法律ではなく財産評価基本通達の改正で行われます。対象となる不動産の範囲などの細部は、通達改正の公表を待って確認する必要があります。
注意したいポイント
- 株価への影響は会社ごとに違う:純資産価額が株価にどの程度反映されるかは、会社規模の区分、類似業種比準方式(上場会社の株価と比べて評価する方法)との併用割合、土地保有特定会社に該当するかどうかによって変わります(国税庁タックスアンサーNo.4638)。
- 取得時期ごとに整理して試算する:改正後の影響は、保有不動産を取得時期ごとに整理したうえで試算されることをおすすめします。
- 案の段階であることに注意:通達の改正内容が公表されるまでは、細部が変わる可能性があります。
自社株評価の基本は自社株評価の方法をやさしく解説、評価見直しの動きは非上場株式の評価見直しの最新動向もご参照ください。
M&A仲介役員・FAS出身の公認会計士の経験をもとに、株主構成の整理、株価算定、親族内承継、外部への売却とデューデリジェンスまで支援します。初回のご相談は無料です。
事業承継・M&A支援を見るまとめ
- 見直し案の対象は課税時期前5年以内に取得・新築した一定の貸付用不動産で、古い物件は従来どおりの評価の見込み
- 現行でも、会社が3年以内に取得した土地・建物は自社株評価で時価(条件により帳簿価額)になる
- 適用時期や細部は通達改正の公表を待って確認し、取得時期ごとに株価への影響を試算する
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
