ご相談の内容
これから個人事業主として開業する予定で、従業員は少人数だが、社会保険(健康保険・厚生年金)は完備したい、というご相談です。任意適用について調べると「事業の実態がないと届出できない」とあり、開業後に申請するということなのか、その場合は開業初日から従業員を社会保険に入れるのは難しいのか、を知りたいという内容でした。
- 任意適用の申請は開業後に行うのが原則
- 任意適用は認可を受けた日からの適用で、さかのぼれないため、開業初日からの加入は実務上難しい
- 認可までの間、従業員は国民健康保険・国民年金に加入する。事前準備で空白期間を短くする
回答
任意適用とは
任意適用とは、加入義務のない事業所が、厚生労働大臣(窓口は年金事務所)の認可を受けて、健康保険・厚生年金保険に加入する制度です(健康保険法第31条、厚生年金保険法第6条第3項)。申請には、適用対象となる従業員の2分の1以上の同意が必要です。
開業前に申請できない理由
申請の際は、事業所が実在することを確認するため、次のような書類の提出を求められるのが一般的です。
- 開業届の控え
- 事業所の賃貸借契約書
- 雇用契約書
このため開業前の申請は受け付けられず、開業後に書類がそろってから申請することになります。そして任意適用は認可を受けた日から適用され、さかのぼることはできません。結果として、開業初日から従業員を社会保険に加入させることは、実務上難しいと考えられます。
空白期間を短くする準備
認可が下りるまでの間、従業員は国民健康保険と国民年金に加入することになります。空白期間を短くするには、次の準備が考えられます。
- 事前に管轄の年金事務所へ、必要書類や審査期間を確認しておく
- 従業員の同意書を準備しておく
- 開業後すぐに申請する
税務上の扱い
| 保険料 | 扱い |
|---|---|
| 従業員の社会保険料のうち事業主負担分 | 「法定福利費」として必要経費(所得税法第37条) |
| 事業主本人の国民健康保険料・国民年金保険料 | 経費ではなく、確定申告で社会保険料控除の対象(所得税法第74条、国税庁タックスアンサーNo.1130) |
注意したいポイント
- 個人事業主本人は被保険者になれません。任意適用後も、ご自身は国民健康保険・国民年金のままです。
- 常時5人以上の従業員がいて、製造業・小売業・士業など法定の業種に当たる場合は、任意ではなく強制適用(加入義務あり)となり、該当した日から加入が必要です。「5人以下」がちょうど5人を含むかどうかで結論が変わるため、人数は正確に確認してください。
- 個人事業所の適用範囲を広げる法改正が2029年10月に予定されており、業種の要件がなくなり、常時5人以上を雇用すれば業種を問わず強制適用となる方向です。対象となる事業所の範囲などは、今後の厚生労働省・日本年金機構の案内を確認してください。
- 手続きの詳細は、管轄の年金事務所へ確認するのが確実です。
法人の場合の社会保険の扱いは起業したら社会保険はどうなる?法人の加入義務・手続き・保険料の目安を解説、法人化の判断は個人事業主の法人化のタイミングと目安で解説しています。
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スタートアップ・ベンチャー支援を見るまとめ
- 任意適用は開業後に申請し、認可日から適用。開業初日からの加入は実務上難しい
- 年金事務所への事前確認と従業員の同意書の準備で、空白期間を短くする
- 事業主負担分は法定福利費で経費、本人の保険料は社会保険料控除
この記事は、実際に寄せられたご相談をもとに、個人が特定されないよう内容を一般化して作成しています。個別の状況によって結論が変わることがありますので、詳しくは税理士にご相談ください。
